そんな名前も覚えていなくて…。
興味すらない女子を正直─相手にするのもかなり面倒なのだけれど、何か俺に用事があるような雰囲気だったから聞かないわけにもいかないと思って足を止めた。
「…なんだよ。」
「噂を聞いたの。」
「…は?」
突然の女子の "噂" という言葉の意味が理解できなくて思わず聞き返してしまった。
「…そう。桜木君が最近よく女の子といるのを見掛けるって噂を…ね。」
「……。」
その言葉を聞いて俺はなんとなく理解した。
"噂" という言葉の意味が…。
もしかしなくても──。
俺と一緒にいる女の子なんて
だからと言ってそれがこの女子にどういう関係があるのだろうか。
だけど、その疑問は女子の次の言葉で解決することになるのだった。
「あの子は桜木君とどういう関係なの?もしかして…。彼女とか?」
そんな疑問の言葉を発してやたらと干渉してくる女子に俺は何だか段々イライラしてきていた。
何故ならこの女子には俺が誰と居ようが居まいが関係ないし…。
寧ろ俺が "彼女" を作ろうが…関係ないことだ。
まさか─俺が "彼女を作ったらいけない!"
──とでも言いたいのだろうか。
「…だったら何。お前には関係ねぇだろ。」
俺はそれだけ言い放ち、女子の返事も聞かず鞄を持って
「…ふ〜ん。やっぱり彼女なんだ…。そんなの…
私は絶対に認めないんだからね!」
俺が教室を出て暫しの後に…。
女子がそう呟いて──。
これから何が起こるか…なんて──。
この時の俺はまだ知る由もなかった──。