初めての恋人 ( 3/ 9 )


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あれからSHRを終えて私は美紗と別れ部活の為に体育館にいる。


──そして、今バスケ部は2チームに分かれて練習試合をしている最中だった。


私はまだマネージャー歴が浅いからその様子を傍観ぼうかんしているだけの状態で得点の記録などは2年生の麻子あさこ先輩が取っている。


「……うーん、このままだとやっぱり桜木がいるチームのが圧勝ね!」
「…そうですね…。」


麻子あさこ先輩のその言葉に私はそう短く答えるしかできなかった。

何故なら私は……。
律先輩に釘付けになっていたから。


律先輩のプレーは本当に目が離せないほど、凄くてかっこいい。

それに我が校のバスケ部で1番上手なのは律先輩だと思う。


これは贔屓ひいきとかじゃなく麻子あさこ先輩や他の部員もよく口にしていることで…もちろん他の部員もみんな上手だった。


「……後20秒…。」


まもなく練習試合が終了する。


そして……。


──ピーーッ。


麻子あさこ先輩の持つホイッスルで練習試合は終わった。

勝利は45-10で律先輩のいるチームだった。
得点はほとんど律先輩がかせいでいた。


「はぁー。やっぱりボロ負けだよ!」
「仕方ねぇよ。律と秋斗あきとのコンビにかなう奴なんていねぇだろ。」
「…確かに…。律と秋斗を同じチームにしたの誰だよ!?」
「…秋斗だろ。」
「…キャプテン!ズルイよ!」

敗北してしまったチームの先輩達はそんなことを言い合っているけれど、そんな先輩達の会話にも全く返事をせず律先輩は私が座っている長椅子の隣になん躊躇ためらいもなく腰を下ろして来た。

もちろん私は律先輩が隣にいるせいで一瞬で鼓動が速くなってしまった。


律先輩の彼女になってからまだ数時間程しか経っていないせいか私はいまだにドキドキしっぱなしなのだ。

律先輩のルックスはもちろんふとした仕草にも異常にドキドキする。

それに冷静すぎる先輩がどんな会話で食いついてくるのかもよくわからないから話し掛けることもできなかった。

冷静沈着な律先輩は素敵だけど、できれば律先輩の方から会話をしてほしいと思う。

まああんまり律先輩が人と楽しく会話をしてる姿なんて見たことないから無理かもしれないけれど。



(てゆうか私はこんなんで……律先輩の彼女だなんて……言えるのかな?)


彼氏のはずの律先輩と会話がなさすぎるせいか──ふと私はそんな疑問が頭の中によぎってしまった。



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