君の嫉妬と優しさ ( 15/ 20 )


部員全員との練習を終えての休憩中だった。

佐々木が突然、俺の側までやって来て──。


「桜木先輩!俺と1 on 1勝負してください!」
「は?」


そんな佐々木の言葉が理解できなくて間抜けな返事をして佐々木を凝視ぎょうしした。


「俺、立川たちかわのこと本気で好きなんです!…だから俺が勝ったら立川たちかわを俺にください!」


放心状態の俺に構わず佐々木は再びそんな言葉をつむいできた。

──要するに沙結さゆを賭けて勝負するってことなのだろう。



「…勝負なんかしねぇよ。」
「なんでですか!」
「…くだらねぇ。"あげる" とか "あげない" とか…。沙結さゆは "モノ" じゃねぇよ!」

俺は呆れたような口調でそう溜め息をついた。


「……怖いんですか?」
「あ?」


俺が "勝負なんかしない。" と断ると次に発せられた佐々木の言葉に怪訝けげな表情で言葉を返した。


「負けて立川たちかわを手放すのが──ですよ!」
「は?ふざけんなっ!俺がお前なんかに負けるわけねぇだろ!」



佐々木の言葉が本当に本当に気に入らなくて…。

気付けば俺はいつもの冷静さを失って─そんな言葉を口走っていた──。



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