初めての恋人 ( 6/ 9 )


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【Side:秋斗あきと


俺は麻子あさこがいるであろう体育館に向かうため部室を出た─のだけれど、次の瞬間──。
扉のすぐ側で静かに立っている人物に驚愕きょうがくして思わず声を荒げてしまった。


「うわっ!!…律!?ビ、ビックリした〜!こんなところで何してるんだよ。」
「…待ってる。」


そこにいたのは…。

冷静沈着つ無口でも有名なバスケ部エースで俺と同学年の桜木 律さくらぎ りつだった。

そして、一応…俺の親友だったりもする。


「…は?待ってるって……誰を?!」
「…沙結さゆ。」


俺は律の誰かを待ってるらしい言葉に "誰" のことかわからなくて問いただすと暫しの間を空けて出てきた人物の名前に我が耳を疑った。


「…え、ぇぇえええ?!沙結さゆちゃん!?お前ら付き合ってたの?え?いつから?!」
「…昼休みに告白された。」
「……まじかよ…! 」


律が前々から沙結さゆちゃんのことを気に入っていたのは知っていた。

だけど、まさか沙結さゆちゃんが律のことを好きだったとは知らなかった。


「…まあでもよかったじゃん!両思いでよ!沙結さゆちゃんのこと大事にしてやれよ?」
「わかってる。」
「…じゃあな!また明日!」
「おう。」


律の返事を聞くと俺はまた歩きだした。



(このことは…後で麻子あさこに伝えとこ。)


そんなことを思考しこうしながら麻子あさこのいる体育館へと再度向かったのだった。



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