団子と親友と


今日は午後から休みを貰っている。何故かと言うと月に一度の差し入れの日である。私の親友とその同業者の人たちに。お団子を店主に15本包んでもらい、私は親友が住む場所へと向かう。歌舞伎町にある、二階建ての二階の部分が私の親友が住んでいる場所だ。

「ごめんくださーい!」

「なまえ!!」

勢いよく扉が開いたかと思うと、赤いものが私の視界いっぱいに広がった。神楽、飛脚力すごいよ。地球人だったら吹っ飛んでるよ。と言っても彼女は私が彼女と変わらない人物だとは知らない。私は見た瞬間から団長がチラつき、妹が居るとなにかの拍子に聞いたことがあったので夜兎だけでなく、団長の妹だと知っていたが、神楽はきっと私が無駄に身体が強い女だと思っているだろう。そりゃあ、夜兎のように身体は白い。だが、陽に強い。だから気付かないのだ。

「いたたたた…神楽、先月ぶり」

「先月ぶりネ! 銀ちゃーん!団子が来たアル!!」

「え?神楽さん?来たのは団子じゃなくてなまえさんだよ?団子も来てるけどね、でもそこは団子じゃなくてなまえさんだよ!」

「おお、団子娘!毎月すまねーな」

「団子娘じゃないです!っていつも言ってるじゃないですか、…銀さん」

団子娘。神楽ちゃんが働く万事屋の店主がこの万年金欠の銀さん限定の私のあだ名である。何回訂正しても、もう団子娘でよくね?ってなるから半分はもう諦めている。

「なにしてんだ、早くあがれよ」

「おじゃましまーす」

奥の部屋へ招かれ、新八くんが居ないようで、銀さんがお茶を入れてくれている。神楽ちゃんは私の隣でニコニコしながら今月あった話を話してくれる。まじまじと見ると、やはり団長だ。笑った顔なんて、団長がこの年頃の時はこんな感じだったのかなーと思う。思わず顔がニヤける。

「…聞いてるアルカ?」

「あっ、ははは、ごめん、なんか神楽ちゃん見てると和むんだよね。なんか疲れがなくなるっていうか」

「!なんか照れるアル」

「はーい女子だけで盛り上がらなーい。ぼっちの男子も仲間に入れてあげてくださーい」

よっこいしょ!っと前のソファーに座った銀さん。おっさんみたいだよ、まだ20代ぽいけど。

「おまえら本当仲良いのな」

「当たり前ネ!私となまえは親友ヨ!」

「ねーっ」

そう言いながら団子の包みを開ける。私と神楽は親友なんだ。神楽はなんでも話してくれたけど、私には神楽に秘密がある。モヤモヤは消えないけれど、いつか言えたらいいなって思う。神楽の兄との関係も、すべて。でも私には今言う勇気がない。この生活がこの関係が壊れてしまいそうで言えない。きっとなんだかんだ受け入れてくれるだろうけど、私には勇気がないんだ。

「はい、食べてください!」

にっこりと笑って団子を差し出す。すると団子に食らいつく二人。ちなみに五本は新八くん用に別にとっておく。きっと夕方くらいには来るだろうから。冷蔵庫にそっと持っていくためにその場を離れた。

「ねえ、神楽、銀さん」

「なにがあっても、親友で居てね」

きっと団子に夢中で聞こえてないだろうけどね。

「なまえ!もうなくなったアル!新八のよこせよ!」

「もうだめー!あっ!銀さん冷蔵庫から団子出さないで!食べたあああああ!!」

結局、新八君のお団子はなくなりました。