依頼


ジリリリリリリと鳴り出した目覚まし時計を止める。針は6時30分を指している。いつも通りの朝、顔を洗い、パンをトースターにセットする。その間にミルクを注ぎ、準備をする。化粧は薄化粧だ。いつも下地だけ。少しは化粧しないのかと言われるが、いつもしていたら見慣れるでしょ?いざという時のために化粧はしてないんです。最終手段だから、化粧は。と実際は面倒くさいだけだが、そう言い訳をしている。チンっとなったトースターからパンを取り出し、ミルクを飲みながらむしゃむしゃ食べる。あー今日は忙しくなかったらいいなー沖田さん来るかなーと思いながらパンを食べ終わり、支度をして部屋を出る。おっと忘れるとこだった私の毛!急いで部屋に戻り、この金色の髪を隠して黒髪のウィッグを装着する。よし、いつもの私だ。


「おはよーございまーす!…ん?」

「なまえちゃんおはよう!」

お店に着くと、店主と沖田さんと同じ服を着た人が居た。こちらに気付くとニコッと笑ったその人は人柄が良さそうに見えた。これは猫かぶりでもなんでもなくて、素の姿なんだなとも、思った。

「キミがなまえちゃんか!総悟にはよく君の話を聞いているよ!」

「総悟…?あ、沖田さんですか?」

「そうそう!団子屋に色気皆無の年頃の娘が居るってね!ガッハハハッ」

初対面の人の顔面を今思いっきりぶん殴ってやりたくなった。いや、言ったのは沖田さんであってこの人ではない。例えゴリラの口から出たとしてもだ。

「ははは、なまえちゃん、この人は真選組局長の近藤勲さんだよ。今日はなまえちゃんに用があるみたいだよ。」

「…わたしに?」

少し警戒してしたが、平然とした態度を取る。何事もバレないためだ、こんなのほほんとした笑顔をしたゴリラでも油断禁物だ。

「実はね、最近うちで働いている女中さんが親御さんの介護に一人、寿退社で二人辞めてしまってねえ…それで幹部で話し合っていたら総悟から提案があってね!」

「それでわたしを?」

「そうそう!それで、頼めないかなあ、と…あ、もちろんお給料はでるから!それに週4でいいから!毎日じゃないから!」

「でも此処が、」

「なまえちゃん、俺からも頼むよ。本当はこの人一週間此処にお願いに来てるんだ。俺も大事な看板娘が居なくなるのは困るからねえ、でもここまでお願いしにくるから、週4くらいならと言うことで話がまとまったんだよ。」

「あれ?もう決定事項?え、吉川さん勝手に決めたの?女将さんは?」

「ああ、あいつなら嫁入り道具用意しなきゃ!って言ってたなあ、たぶん、沖田くんとくっつくと思ってるんじゃないかなあ〜」

優しい笑顔でそう言うと、「せっかちだからなあ、あいつ」とアッハッハと近藤さんと笑っていた。

「じゃあ、なまえちゃん!今日からよろしく!」

「ハイ…え?今日から?」

そして私は近藤さんに連れられて真選組屯所へと向かった。ちなみに週4連続であり、住み込みオッケーらしい。家具はもうあるし、今月でアパートも契約終了していて、あとは衣服などを移動するだけだと言うことも今聞いた。あれ、本当に強制じゃないか。だからあの時パトカーで送ったのか沖田このやろう。