09.クリスマス休暇
二人が一階へ下りていくとルシウスとナルシッサはひどくご機嫌な様子で子供たちに笑顔を向けた。そんな両親の姿に二人の胸は期待に膨らむ。

「メリークリスマス、ドラコ、レイラ。ふふ、今年のプレゼントは特別なのよ」

ナルシッサは早く見せたいと言うように笑う。

「早く見たいわ!ね、ドラコ!」
「あぁ。父上、母上、」

早く見せてとねだる子供たちに両親はより一層笑みを深め、応接間に続く扉を指さした。

「プレゼントはあの部屋よ」

レイラとドラコは顔を見合わせ、二人で一緒にその扉を開けた。シックな家具で統一された室内に佇む男性の姿を見たレイラは目を輝かせ、勢い良くその男性に抱きついた。ドラコも同じように驚きと嬉しさで目を丸くしながら駆け寄る。

「おじい様!おじい様メリークリスマス!!お久し振りです!!」

抱きついたままぴょんぴょん飛び跳ねる孫娘の姿に、祖父──アブラクサス・マルフォイは目尻を下げて笑った。
長いアッシュブロンドの髪をゆるく三つ編みにし、深緑色のローブに身を包むアブラクサスはもうすぐ七十歳になるが、そうとは思えないほどしゃんとした雰囲気を漂わせている。レイラとドラコの自慢の祖父だ。

昔は頻繁に会いに来てくれていたのにここ数年あまり会えずにいたことを残念がっていた子供たちにとって、祖父との再会はまさに最高のクリスマスプレゼントだった。

「二人ともすっかり大きくなったな。前に会った時はこんなに小さかった」
「そんなに小さくなかったわ!」
「そうだったか?レイラは相変わらず小さいなぁ」

朗らかに笑いながらレイラの頭を撫でるアブラクサスに頬を膨らませてみせるが、どうしても嬉しさで顔がにやけてしまう。

「ドラコは背が伸びたな」
「はい!」
「私も伸びたのよ?──ねぇ、おじい様はいつまでここに居てくださるの?」
「今回はしばらく滞在できる」

祖父の言葉にドラコとレイラはやったぁと声を上げて喜ぶ。そんな三人のやり取りを見守るルシウスとナルシッサの眼差しも温かいものだった。



その日の夜、マルフォイ邸のダイニングは綺麗に飾り付けられていた。テーブルの周りにはルシウスが作り出した魔法の星が輝き、家族で過ごすための空間を彩っている。
休暇の間魔法を使うことを禁止されているドラコとレイラはひとつひとつ自分達の手でツリーに飾りをつけていった。ナルシッサとアブラクサスもそんな二人を見て、同じように魔法を使わずに飾りをぶら下げるのを手伝ってくれる。
手が届かないところはルシウスが杖を振り、完成した立派なツリーを見上げる五人の顔は幸せに満ちていた。

ちなみに、あの贈り主不明の指輪については飾り付けの最中に両親に聞いてみたが、やはり詳しいことは教えてもらえなかった。だが案の定レイラがつけているピアスと揃いの物らしく、「あれはレイラを悪いものから守ってくれる御守りのようなものだから、片時も離さずつけていなさい」と言われた。その時のルシウスの表情があまりにも真剣なものだったから、どうしてと聞くことはできなかった。

指輪には魔法がかけられているらしく、どの指にはめてもぴったりのサイズに変わる。レイラはしばらくいろんな指にはめて遊んでいたが、最終的に指輪は右手の小指につけることにした。夢の中のように左手の薬指につけることはさすがに抵抗感がある。




飾り付けを終えたレイラはナルシッサと共にキッチンに立ち料理に取り掛かった。
普段は屋敷しもべ妖精に任せている料理だが、クリスマスは母娘で腕を振るうことになっている。レイラは特別料理が得意なわけではないが、手際良く料理を進めるナルシッサの手伝いをするのがとても好きだった。

時間を目一杯かけて作った料理を、男性陣は言葉の限りを尽くして褒めてくれた。家族揃って飾り付けたツリーに見守られながらの食事はきっとどんな高級レストランにも劣らない最高の空間だと胸を張って言える。


アブラクサスはレイラがグリフィンドールに組分けされたと聞いても怒ったりせず、自分の学生時代の友人にもグリフィンドールの人間がいたと言ってのけた。

「所属している寮なんて、帽子と本人の気まぐれで決まるものだ。その者の本質にはなんの関係もない」
「そういうもの?」
「寮も血筋も、私はさほど気にしない。高貴な純血の家系の者でも劣った人間はいくらでもいるし、逆もまた然りだ」

アブラクサスのこの言葉にはレイラだけでなく、机を囲む全員が驚きに目を見開いた。まさか祖父が純血主義ではないとは知らなかった。
けれど思い出してみるとレイラがルースから貰ったマグルの童話を読んでいるのを見ても咎められたことはない。それにルースはマグル贔屓でもないが純血主義でもない。そのルースと長い付き合いなのだから当然なのだろうか。

「私が心から尊敬している者の中には混血もいるが、彼らは純血の我らより数倍も優れている」
「父上、あまりそういった発言は……」
「なにも隠すことはないだろう。私は混血の彼らを尊敬していることを恥ずべき事だとは思っていない。勿論それがマグルだろうと同じことだ」

ルシウスとナルシッサは困ったような顔で祖父を見ていたし、ドラコは困惑してそんな三人の顔を見比べていた。
レイラだけがアブラクサスににっこりと笑顔を返していた。

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