03.ホグワーツへ
ハーマイオニーとネビル、レイラとジニーの二手に別れてホグワーツ特急の中を捜索することになった。レイラはドラコに見つかるとコンパートメントへ連れ戻されるだろうと予想出来たので、ジニー達が来た方へ引き返しながら探す。
黒髪と赤毛を探してコンパートメント内を覗き込むが、なかなかお目当ての二人の姿は見つからない。廊下を歩きながらレイラはジニーと色々な話をした。ジニーははっきりとものを言う子で、どちらかと言えばロンやパーシーより双子に似ている気がした。

「レイラはさっきのハンサムな人と付き合ってるの?」
「ハンサムって……セドリックのこと?」

レイラが「まさか」と首を振って笑うのをジニーは疑わしそうな目で「本当に?」と見つめる。

「セドリックは大切なお友達なの。すごく優しくて頭がいいのよ。そうだ!今年はジニーも一緒に勉強教えてもらう?」
「……私は遠慮しておく」
「セドリック、教え方上手いよ?」
「そうじゃなくて。私がお邪魔したら、きっとあの人がっかりするもの」
「がっかり?──あ、パーバティとパドマだ」

学友の姿を見つけて呑気に手を振るレイラをジニーは呆れたように見た。先程の彼女に触れるセドリックの表情。あんなに分かりやすい顔で見つめられたらすぐに気付くだろうに。

「だってあの人、レイラのこと好きだと思うわ」
「うん、好きって言ってくれたよ? 私も大好きなの。だからお友達なのよ?」

あまりにもな返答に呆れてものも言えない。
レイラはあんぐりと口を開けるジニーを不思議そうに見つめ、首を傾げる。ジニーはその姿を見て「……何でもないわ」と首を振った。これが相手ではきっと大変だろう。ジニーはご愁傷様、と心の中であのハンサムな上級生に手を合わせた。



結局どれだけ探してもホグワーツ特急の中にハリーとロンの姿は見つからなかった。

「どうしましょう!あの人達乗り遅れたんだわ!」
「ハリーとロン、今年は学校に来れないの……?」
「ハーマイオニーもネビルも落ち着いて。きっと大丈夫よ」
「そうそう。汽車に乗れなくても先生達が迎えに行ってくれるんじゃないかな?」

四人はハーマイオニー達がいたコンパートメントに戻った。不安げに瞳を揺らすハーマイオニーを慰めるが効果は薄いようだ。ネビルはハーマイオニーの不安が伝染したように青白い顔をしているが、レイラとジニーは気楽な様子で車内販売で購入したお菓子に手を伸ばした。

「ホグワーツ特急以外だとどうやって行くと思う?付き添い姿現しかな?それとも煙突かな?」
「箒に乗って行くのかもしれないわ」
「二人とも!ハリーとロンが心配じゃないの!?」

ハーマイオニーの雷が落ち、レイラは唇を尖らせながらかぼちゃジュースの蓋を開けた。

「あんまり。だって汽車に乗り遅れたからって退学になるわけじゃないし、先生達が何とかしてくださるわ」
「そうだけど、でも」
「私達が心配したってどうにもならないもん。だからほら、ハーマイオニーもお菓子食べよ?」
「…………はぁ。あなたって人は本当に、もう」

ハーマイオニーは毒気を抜かれたように肩を落とし、レイラが差し出した蛙チョコの箱を受け取って笑った。


レイラは着替えの為にドラコ達のいるコンパートメントに戻ったが、ホグワーツのローブに着替え終わると再びハーマイオニー達の所へ向かった。ドラコ達は相変わらずクィディッチの話で盛り上がっていたからだ。レイラからすると何をそんなに長時間話していられるのか不思議だが、レイラとパンジーが雑誌を手に盛り上がっている時のドラコも同じような事を言っていたから、お互い様なのかもしれない。

着替えてからハーマイオニー達の所へ戻る途中、おかしな噂話を聞いたレイラはくすくす笑いながらコンパートメントのドアを開けた。

「ねえ聞いてよ。面白い話を聞いたの」
「どうしたの?」
「あのね、青い車が空を飛んでて、それを運転してるのはハリーとロンだっていうのよ」

おかしな作り話でしょ?と笑うレイラだったが、ジニーが顔を青ざめさせたのを見て、まさかと表情を強ばらせた。

「……作り話よね?」
「分からない、けど……私の家に空飛ぶ車があるのは本当よ。トルコ石色のやつ。今日その車に乗ってキングズ・クロス駅まで来たの…」

顔を見合わせた四人は同じように絶望的な表情を浮かべていた。



汽車がホグズミード駅に到着してホームに降りると、遠くから一年生を呼ぶハグリッドの声が聞こえた。それを聞いて懐かしい気持ちになりながらジニーと別れる。一年生はボートで、二年生以上はセストラルが引く馬車に乗ってホグワーツへ向かうのだ。

「ホグワーツまでよろしくね」

レイラが体を撫でながらそう言うと、セストラルは濁った白い目を向けて甘えるように頭を寄せた。


組分けの儀式は何事も無く終わり、歓迎会の宴が始まった。闇の魔術に対する防衛術の新任にギルデロイ・ロックハートが紹介された時は大喜びしたレイラだったが、宴が始まってすぐにそれが吹っ飛ぶようなニュースが舞い込んできた。

「なあなあ、ハリーとロンが空飛ぶ車で学校まで来たって本当?」
「その車が墜落して退校処分になったって聞いたけど」
「墜落…!?」

ディーンとシェーマスから尋ねられた言葉にレイラは目を丸くして叫んだ。空飛ぶ車に乗ったという噂は聞いたが、墜落した上に退校処分になったなんて話は初耳だ。

「その話、本当なの?」
「さっきの組分け儀式の時、スネイプがいなかっただろ。しばらくしてマクゴナガルを連れてった後、今度はダンブルドアまで連れてったんだ」

言われて教職員テーブルを見ると、たしかにセブルス、マクゴナガル、ダンブルドアの席が空いている。

「そんなの、馬鹿げてるわ」

ハーマイオニーはそう言ったが、それが彼女の精一杯の強がりだというのがわかり、レイラは眉を下げた。噂話が全て本当だったらどうしよう。二人が退学になってしまったら…それに、車が墜落したなら大怪我をしたかもしれない。
レイラは二人のことが心配でほとんどご馳走に手を付けることができなかった。

歓迎会が終わり、生徒達は自分の寮へ向かうことになったがレイラとハーマイオニーは寮に向かわずにハリー達を探すことにした。城中を探し回ったが見つからない。
諦めて寮に戻ると、太った婦人の前に探し求めていた二人の後ろ姿があった。あちこちにかすり傷は見えるが、大怪我をしている様子はない。

「ハリー!ロン!」
「やっと見つけた!いったいどこに行ってたの?バカバカしい噂が流れてるの!」
「あのね、二人が学校まで空飛ぶ車に乗って来て、それが墜落して退校処分になったって」
「うん、退校処分にはならなかった」

ハリーの言葉に安心して、レイラは「よかったぁ」と笑った。けれどハーマイオニーはそれでは納得しないらしい。

「まさか本当に空を飛んで来たの?」
「お説教はやめろよ。もうマクゴナガル達に散々言われたんだ」
「それより、新しい合言葉教えてくれない?僕達聞いてなくて」
「合言葉は『ミミダレミツスイ』よ。でも、話を逸らさないで──」

ロンとハーマイオニーは互いにイライラしたように言い合っている。レイラとハリーは顔を見合わせて肩を竦め、大人しく二人の後に続いて談話室へ続く穴を登った。
談話室へ入った瞬間、四人は拍手に包まれた。その拍手はハリーとロンに向けられたものだ。

「ハリー、ロン!二人ともやるなぁ!車を飛ばして暴れ柳に突っ込むなんて、何年も語り草になるぜ!」

リーの言葉を皮切りに、皆がハリーとロンの背中を叩いてその突飛な登校方法を褒め称える。なんともグリフィンドール生らしい反応にレイラは笑ってしまった。
けれど全員が全員二人の登校方法を好意的に思っているわけではないらしく、ハーマイオニーとパーシーは不機嫌な顔で二人を睨み付けている。ハリーとロンはその二人から逃げるように男子の寝室へ続く階段を駆け上がっていった。

「まったく!なんて人達なのかしら!」
「無事だったんだからいいじゃない。それに空飛ぶ車って楽しそう。私も乗ってみたいなぁ」
「レイラ!!」

呑気に笑うレイラに本日二度目の雷が落ちた。

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