case2:喫茶探偵



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「探偵!?おかしいじゃねぇか!初音に雇われた探偵が、何で偶然ウエイターをやってんだよ!?」
「偶然ではありませんよ、僕がアルバイトとして採用されたこの店を、パーティ会場に選んでもらったんです。あなたの動向を監視するためにね」

探偵?アルバイト?彼は警察官のはず…。頭が混乱してきた…。
「初音さんに頼まれたんです、浮気性のあなたに、他に女がいないか調べて見張ってくれと。だからわざとあなたのズボンにケーキの染みをつけたんです。女性に言い寄られないように。
もっとも僕が彼女にそう頼まれていたことを証明しようにも、初音さんは焼死してしまったみたいですけど」

自分の心臓の鼓動が聞こえるぐらい、激しくドクドクしている気がする。まさか他人の空似…?いや、それにしては顔、声、背格好、全てが似すぎている。
でも声は骨格が似てたら似るって言うし、もしかして双子とか…?お兄ちゃんからは全然聞いたことはなかったけど…。
事件のことは頭からすっぽり抜け落ちて、目の前に現れた人物から目が話せない。
わたしが違うことに思考を取られているすきに話はどんどん進み、サングラスの男もまた、伴場さんが初音さんの浮気を疑って雇った探偵であったことがわかった。

事件は進展し、死亡直前に被害者からメールを受け取り、彼女が車で戻ってくる時間がわかっていたことや車内に可燃物があったことを知っていた伴場さんに疑いが集中する。
何より、車のそばに落ちたつけ爪に残ったDNAが伴場さんの毛髪とほぼ一致していることから目暮警部は彼を強く疑っているようだった。


「でも、ピッタリ一致したわけじゃねーんだろ!?」
「ほぼということは、その皮膚が雨や泥などで汚染され、完全なデータが取れなったためだと思いますが。血縁者じゃない限り、ゲノムのほぼ一致はまずあり得ない。そのDNAは同じ人物のDNAと考えたほうが自然ですけどね」
その言葉に、伴場さんはウエイターの彼に殴りかかる。いや、かかろうとしたところをすんでのところでかわされ、地面に体を打ち付けることになった。

「やめてください暴力は…。毛利さん、彼の足を押さえて、また殴りかかって来られたら…」
「んな必要ねーよ。おい伴場、落ち着けって…ちゃんとお前のDNAを取って調べてもらえばいいじゃねーか」



「…」
あの身のこなし、やっぱりただの探偵じゃない気がする…。わたしは、彼らのやり取りを観察するように見ていた。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「おい、松田くん!」

「あ、はい!!」

「何をぼうっとしとるんだね、今から伴場さんのDNA鑑定をするぞ」
目暮警部に声をかけられ、はっとする。邪念を捨てないと…わたしは刑事、わたしは刑事…一旦事件のことを考えよう。頭をブンブン振り、リセット、リセット。

後ろから毛利さんが、「このウエイターがイケメンだからってお前見惚れてんじゃねえのかあ?」とからかうように言う。
「違います!!」
そう言い残し、警部を追いかけた。


その瑠衣を安室透は背後からじっと見ていた。


「何か僕に用ですか?」
「え!?」
「そんなにじっと見られると、照れるんですけど」
わたしの視線に気がついた彼の方から声をかけられた。そうだ、名前をまだ聞いていないんだった。
「あ、すみません改めて、事情聴取をお願いしたいんですけど…お名前、年齢、あとご職業をお願いします。」

「僕は安室透、29歳。さっきも言ったように探偵で、ここには被害者の加門初音さんの依頼で来ました」
警察手帳にメモしていく。安室透…やっぱり名前が違う、でも年齢は一致している。ちらっと安室さんを見るが、私の顔を見ても特に反応はない。



そしてわたしは意を決して、聞きたかった一言を…。
「あの、わたしと前に会ったことありませんか?」

安室透は一瞬意外そうな表情を浮かべる。
「…はじめましてだと思いますよ、松田刑事さん」
「なんで、わたしの名前…」
「さっきあの警部さんに呼ばれてたじゃありませんか」
安室さんは目暮警部を指差す。


「あっ…えっと。あなたみたいな目立つ方、見間違えないかなと思ったんですけど…」
「この世には自分に似た人物があと2人はいるといいますからね。僕の方はあいにくと覚えがなくて」
「そうですか…」

安室という男は笑顔を浮かべて、物腰柔らかだ。でもよそ行きの作り笑いにも感じる。わたしを適当にあしらってやり過ごそうとしてるのか。

次になんと声をかけていいか迷って彼の方を見るが、首を傾け私の言葉を待っている様。こんなに似てるのに、人違いなんてあり得るのか。
結局わたしはそれ以上の言葉を持てず、視線を下にそらした。




「瑠衣さんこの人のこと知ってるの?」


わたしと安室さんの間にいつの間にかコナン君が立っていた。
この子はまた、こんな殺人事件の捜査をしているのか…そう思いながら、前かがみに視線を合わす。


「何だか昔の知り合いに似てるような気がしたんだけど、人違いだったみたい」

「ふーん。そうなんだ…」


コナン君はいまいち納得していない表情だ。しかしそう返す他ない、今は。一旦彼の正体については保留にしよう、事件の重要参考人となればわたしの感情は抜きにして彼のことも考慮しなければならない。他にも安室さんからは、伴場さんと初音さんが同じホテル火災から助け出された過去があったことなどを証言してもらえた。


「それよりなにか事件のことわかった?」
声をかけたときにはコナン君はもうその場にはおらず、現場の車の方へ走って行ってしまった。




安室さんは小学生に事件のことを話すわたしを、不審な目で見ているような気がしたが、見ないようにした。





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