case?:ハロウィンの花嫁



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兄とゼロがビルに入ってすぐ、一人の外国人風の男性が階段を降りてきた。何語かわからない言語を話しており、わたしたちが声をかけると、急に走り去ってしまった。
追いかけようとしたところ、もう一台の車が停まる。降りてきたのは、二人の男性だった。兄の警察学校時代の友人である、諸伏さんと伊達さんであった。
私を見るなり、諸伏さんは覚えていたようで伊達さんに松田の妹だと言う。それを聞くなり、伊達さんも目を大きくしてわたしの方を見る。話もそこそこに、兄とゼロが先に中に入っていることを伝えると、伊達さんは駐車場の方から壊れた車のドアをこさえてきたようで、盾のように持ちながら階段を登っていく。わたしは、二人の背に「気をつけてください」と声をかけるしかなかった。



4人が上がっていったビルの隣の建物から大きな爆発音が聞こえた。
煙が登っており、爆弾が爆発した様子だった。
先程から中で銃声やみんなの大声が聞こえてきており、中でとんでもないことが起きていることは明らかだった。

わたしは居ても立っても居られなくなり、同じくただ見守っていることしかできない警官たちに声をかけ、周辺の人たちの避難誘導を指示するとともに、隣のビルを駆け上った。




「君は!何やってるんだ!?」

階段を駆け上がって、屋上を目指していると、後ろから大きな声がかかる。
チラッと後方を振り返ると、諸伏さんがいたがかまわず、そのままわたしも階段を駆け上がる。

「周辺住民の避難誘導は頼みました!わたしも警察官です!行かせてください!」
「何言ってるんだ!?君は丸腰だろ!死にたいのか!」
「死にたくないです!でも、もう下で待ってるなんてできないです!」
足を止めずに駆け上がると、屋上の階段まで着いてしまった。

「…その無鉄砲さ、松田にそっくりだ。まったく、しょうがないな。この先は本当に危険だ、俺の後ろに」


諸伏さんは少々怒っているようだが、わたしを自身の背に隠す。
拳銃を構えながら、屋上のドアを蹴り上ける。


そこには黒煙に包まれながら倒れる金髪が見えた。その前方には黒装束に見を包み、自身はゴーグルに、嘴のようなマスクをはめた出で立ちの人物が彼に銃口を向けていた。


「ゼロ!!」
思わず声を発した。彼の元に走り出す。わたしの大声に引き金に手をかけた犯人の指が、一瞬躊躇した。

その時、一発の銃声が鳴った。
犯人は右腕をおさえ、しゃがみ込む。


「ゼロ!無事か!?」
拳銃を構えた諸伏が言った。


「ヒロ…それに君まで」
ゼロはわたしと諸伏さんを交互に見る。ひどい怪我をしているが意識はある。わたしは彼を抱えて起こす。

「っ待て!」
怪我を追った犯人はそのまま逃走しようとする、駆け寄る諸伏に降谷が声をかける

「やつは手負いだ、負うのはあとだ」



「君はなぜこんな危ないところに入ってきた!?下で待っていろと松田も言っていただろう…」

「…ごめんなさい」

「友人の妹として言ってるんじゃない、警察官として言っているんだよ。無茶をするのが正義じゃない、自分にできる一番最適なことを判断しなくてはいけないんだ。そうでないと、本当に守らなくてはいけないものを守れない。警察学校で習わなかったか?だいたい…」
兄以外の人にこんなに怒られたのはじめてって言うぐらい、怒られている。怒鳴りはしないが、表情は険しく本気で言われていることがわかった。
彼の口撃は止まらない。自分が悪いので俯きながら、彼の言葉を受け止めていると「…そんなボロボロのお前が言っても説得力ないぞ」とヒロが仲裁に入る。
「まあゼロ、落ち着け。一旦松田と班長のところに戻ろう」

ヒロがゼロに肩を貸して立ち上がる。




「お前、何上がってきてんだよ!?…はあ!?バカかお前…。ああ、もう今は時間がない」
事の顛末を話すと、手元は爆弾を解体しながらも兄は本気で怒っていた。
後が怖い…殴られるかも…。お兄ちゃんに殴られたことないけど。
そう思いながら、兄に促されるまま階段を降りる。


「松田、下で待ってるから」
ヒロの声に、「…そりゃ難しいかもしれねぇな、でもバカな妹に説教しなくちゃなんねぇから。あとでな」


外に出て、祈るような気持ちで兄の残ったビルを見上げる。
「少し離れよう、松田ならきっと大丈夫だから」
諸伏さんがわたしの肩に手を置く。



しばらくしても爆発音は聞こえない。
ゆっくりと歩いてくる兄は右手を上げ、笑っていた。爆弾の解除に成功したのだ。
誰より先に兄にかけより、抱きつく。


「お兄ちゃん!!」
「お前こんなとこでひっつくなよ!ったく、俺は怒ってんだからな!」

そう言うと兄はわたしから手を離し、仲間たちとハイタッチをする。


やっぱりわたしの大好きなお兄ちゃんは最強だ。
絶対死ぬわけない、ずっと一緒だと本気でそう思っていたんだ。






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