case?:ハロウィンの花嫁



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「あれ?みなさんどうしたんですか?」
お昼の休憩時間、ちょっと近くのコンビニまで行こうと思って本庁のエントランスを出たとき、毛利探偵一家と、少年探偵団の子どもたちがちょうど前方を歩いており、声をかける。
「あ、瑠衣さん」
「瑠衣お姉さんだー!」


「ああ、瑠衣ちゃんか…。今からこいつらの昼飯奢ってやんなきゃいけなくなってよー、ったく」
「あはは…そうなんですね。ご苦労さまです」

ぼやく毛利探偵に苦笑いを返す。
村中警視正の結婚式警護のために、結婚式セットを使った予行訓練を行っていた。毛利探偵はそのために警視庁に呼び出されていたところだった。
わたしも訓練には参加したが、最後には新郎役の高木くんが撃たれてしまい、作戦失敗。配置案や警護体制の見直し中だ。
高木くんと佐藤さん順調そうだし、そろそろ本当に二人も結婚あるのかなと考える。友人の結婚式には参加したことがあるが、出るたびに不思議な気持ちになる。幸せそうな花嫁を見ると、わたしもあそこに立つ日が来るんだろうか、と。ドレスは着てみたいかも…。
いや、そもそも恋人もいないのに…と思いながら、一人思い浮かぶ顔があった。

昨日ポアロに行ったけど、梓さんに聞いたら急な休みだって言うし、電話かけても出ないし…。こういう時ってまた何か事件に巻き込まれてるんだよな、彼。そう思いながら、前方を歩く毛利さんたちに目をやる。
少し下げると、眼鏡をかけた少年が視界に入った。

コナン君、安室さんと仲良いし…何か知らないかな、と期待薄だが声をかけてみようかと思い足を前に出すと、外国人風の男性とすれ違う。その男はふらふらと警視庁の方に向かって歩みを進めている。ぶらんとした右手には割れたタブレットを握りしめており、その足元にひらひらと一枚のメモが落ちる。
「あ」
灰原哀ちゃんがメモを拾いあげ、その人物に差し出した。お礼を言っているようだが、日本語じゃない。でも、哀ちゃんはその言語を理解しているようだった。


あの男、前にどこかで見たことあるような?なんかこの言葉も聞いたことあるような…。

全然思い出せない…というか刑事になってこういうこと増えたなあ。どこかで聞いたことあるとか、なんか見たことあるとか。デジャビュか?なんて思いながら二人のやり取りを見ていると、男の持つタブレットが光った。


目の前に閃光が走る。爆発音、焦げた匂いはその後。そして全身の痛みに気づいた時に、吹き飛ばされたことを自覚した。

「哀ちゃん!!」
「危ない!!」


痛む身体を何とか起こすと、道路に飛び出す毛利さんが見え、ドンっとぶつかる音。叫ぶコナン君たちを前に、状況を確認しようと、よろよろと立ち上がる。


「何があったんですか!?」

本庁から刑事が走り寄ってくる。支えられながら、燃え盛る現場から離れるよう誘導される。
何が起きたのか、わたしにもわからなかった。



程なくして、目暮警部や高木くん、佐藤さんといった見慣れたメンバーが集まってくる。
コナン君が適切に状況を伝えている。
さすがだ、あの短い間でよく観察してるとしか言えない。
燃えた男と会話をしていた哀ちゃんや、落としたメモを見た蘭ちゃんも事情を聞かれていた。
状況から見てあのタブレットが爆弾のように爆発したため男は焼死したようだ。無差別テロか?何だか引っかかるなと思いながら、ぼうっとしていたが、わたしも刑事なんだから現場検証に加わらないと。花壇の縁に腰かけていたが、立ち上がる。

「瑠衣ちゃん、大丈夫?あなたも病院で手当してもらったほうがいいわ」
「かすり傷です、すみません。わたしも捜査に加わります」

佐藤さんが心配そうに声をかけてくれる。
吹き飛ばされた時は流石にびっくりしてすぐに動けなかったが、チカチカしていた視界が少しずつクリアになる。わたし、全然ダメだな…爆発現場がトラウマになってるみたいだ。
爆発に巻き込まれたとはいえ、擦過傷程度で本当に大事はない。本来なら真っ先に初期消火や救急車の手配等やらないといけなかったのに。
毛利さんはあんなに早く動いて、子供を助けた。元々刑事だったとはいえ、あの反射神経やっぱりすごい。
車と接触して病院に運ばれたみたいだけど、大丈夫かな…。蘭ちゃんもきっと心配だよね…。早く病院に付き添えるようにしないと。



「あれ、ここになにか入ってるよ?」
コナン君が燃え残った男性の鞄から何かを見つける、目暮警部もしゃがみ込んだ。


「こ、これは!」
「松田くんの名刺!?」

「え?」



自分が呼ばれたのかと思ったが、そうではなかった。みんなが覗き込む名刺をわたしも見る。



警視庁捜査一課強行犯三係
松田陣平
 
 


そう記されているものを、わたしも見たのは初めてだったが、それは亡くなった兄の名刺のようだ。





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