case?:ハロウィンの花嫁
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3年前の11月1日、捜査一課に異動してきた松田陣平の教育係になったのは佐藤さんだった。
ほんの1週間で亡くなった兄がその名刺を渡せた期間は限られている。その間に今回の被害者との接点が何かあったのではないかと、佐藤さんはその間の事件ファイルを確認している。コナン君もなんか入り込んでいたけど、見ないふりをしておこう。
「ねぇ、瑠衣ちゃん。松田くんの同期の、フルヤって男知ってる?」
「え?どうしたんですか突然…」
「3年前11月6日の日に、松田くん萩原さんのお墓参りに行ってたのよ。命日の7日は本庁詰めで、時間がなかったから。他に3人一緒だったって住職さんが言っていたんだけど、そこにフルヤって人がいたはずなのよ」
「…3年前の11月6日、」
萩さんのお墓参り?命日の前日?
その日は確か…
「わたし、その日に、お墓参りに行った後のお兄ちゃんに会ってます」
「ええ!?」
「どういうこと!?」
「実は…」
「この事件の捜査はそこまでにしていただきたい。この件は公安が担当することになった」
そこにいたのは顔に大きなガーゼを貼った風見さんだった。
佐藤さんは冷静だと言いながら、上に抗議しに行くと言ってしまう。
どうしようかと高木くんと顔を見合わせていると、白鳥さんが現れた。
佐藤さんはお兄ちゃんが関わってるって知って、内心穏やかじゃないんだろう。高木くんも、それがわかっているからもやもやしているみたい。
白鳥さんはそれを、高木くんがお兄ちゃんに嫉妬しているせいだって言ってるけど…。というか、元々白鳥さんは佐藤さんが好きなのかと思ってたけど今はコナン君たちの先生と付き合ってるっていうし…。よくわからないなと思いながら、二人のやりとりを聞いていた。
でも今はそんなことより風見さんを追いかけないと。
「風見さん!待ってください!」
「…私ですか」
風見さんが立ち止まる、とともに後方の二人がなんだ、なんだと見ているのがわかった。
「彼女、ああいう男がタイプなのかい?」
「違うと思いますよ…」
風見さんを引っ張って、二人に聞こえない距離で声をかける。
「引き止めてしまってすみません、その怪我大丈夫ですか?それって、警視庁の前で起きた爆発事件と関係あります?」
「…大したことはありません。先程も言いましたが、この件は公安が預かります。あなたも巻き込まれたんでしょう?これ以上首を突っ込まない方がいいですよ」
「でも、この事件には警視庁の元刑事が関わっています。捜査から手を引くなんてできないです。佐藤さんだってそう言ってました」
「松田陣平刑事ですか…。貴女のお兄さんである」
「やっぱり、そこまで把握してますよね。なら」
「だからこそ、妹である貴女はこれ以上関わってはいけない」
「!?」
「これは、私からの忠告だけではない。降谷さんからの伝言でもあります」
「やっぱり…あなたがそれだけ怪我をしてるってことは、彼にも何かあったんですね。降谷さんは…大丈夫なんですか?」
「今のところ、生きてはいます。ただ、状況は逼迫している。危険なことに変わりはない」
「どういうことですか!?」
「…これ以上は…。降谷さんは貴女の身を案じていますよ。私に、貴女の様子を見てくるように言いましたから」
「…どうして…あの人は、わたしには心配もさせてくれないんですか…」
「ねえ、コナン君、安室さんと連絡とってたりしないよね?」
「え?どうしたの?瑠衣さん」
「今回の事件、公安の風見さんから捜査一課は手を引けって言われたの。公安が預かるからって。でも安室さんに連絡つかなくて…。お兄ちゃんが関わってるなら、直接話したいんだけど…」
「…安室さんとはさっき会ったよ」
「え!?」
コナンくんは言葉を選びながらわたしに伝えようとしている。
「今は首に爆弾をはめられてて、公安の地下シェルターから身動きが取れない」
「どういうこと…?」
お兄ちゃんと萩さんを殺した爆弾魔を刑務所から脱走させ、降谷さんを誘き出した…。
降谷さんの首についた爆弾は、3年前の雑居ビルでの事件の時にお兄ちゃんが解体した爆弾と同種のものである様子。あの時屋上で見た犯人が、今回の事件にも関わっているんじゃないか。そして、その時助けたロシア人が、今回警視庁の前で焼死したと思われる、と。
コナンくんは簡潔に話してくれた。
だからわたしはあの外国人の男に見覚えがあったのかと納得した。
「そうだったんだね…だから松田陣平の妹は関わるな、か」
「…安室さんのこと心配だよね」
「…わたしに出来ることってないのかな」
「安室さんは瑠衣さんのことが大事なんだよ。3年前に顔を見られてるし、もしかして犯人が瑠衣さんのことを松田刑事の妹だと認識してたら、同じように危ない目に合うかもしれないって」
「安室さんのこと、信じてあげて」
信じてるよ。お兄ちゃんがいなくなったいま、本当に信じられるのは、もう1人しかいない。
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