その手の感触を知っている

「おいで」

淫靡な時間の始まる合図をするのは私の部屋が殆どで、こんな風に帰宅途中にするのは珍しかった。

周助が微笑みながら差し出してきた手の平を、何の抵抗もなく握る。ざらついた親指が愛撫するように、繋いだ私の手を撫でた。ぞわぞわする。腕を引っ張り私の体を自分の体の近くに寄せた周助は、そんな反応を面白そうにクスリと笑う。いつだって王子様は余裕だ。
周助は勝手知ったるように我が家の玄関を開け、真っ直ぐに私の部屋へと向かう。両親がいることの少ない私の家は、すっかり性の匂いが染みついている。たまに行為を思い出しては恥ずかしくなっていることを、彼は知っているのだろうか。

周助は立ったまま私の体を優しく抱きしめた。すん、と頭頂で音がする。においを嗅がれているのだと気付いて、恥ずかしくなった。夏の始まりの熱気がこもる部屋はむっとする暑さだ。

「ね、今くさいから、それは、だめ」
甘えたような私の声音に、周助はぎゅっと私を抱きしめる力を強くした。
「ん?それはこっちもだめ」
嗅がせて。優しく囁くと、鼻先を私の頭頂部や耳裏、首回りに押し付ける。たまにちゅ、と甘やかな音を立てて皮膚にキスをする。恥ずかしいのに、お腹の中は既に熱を持ちぽうっとしていた。

「ボクの方が部活帰りだしくさいでしょ、ごめんね」
「周助は、いつもいいにおいだよ…」
「…名前の気にいるにおいに生まれてよかったよ」

ふふ、と周助は機嫌良さそうに笑うと、私の顎先にもキスを落としてかわいいな、と呟いた。私を抱きしめる腕をそのままに、ベッドに背をつき一緒にカーペットに座り込む。ぴ、と冷房をつける音がした。
喉仏のあたりに動物のように舌を這わされ、かぷりと噛みつかれる。小動物は肉食獣に首から噛まれて絶命すると言う。しかし彼に抵抗しようと思ったことはない。私は供物なのだ。王子様に捧げられた供物。
セーラー服と下のキャミソールを脱がすと、慣れた手つきでぱちんとブラのホックが外される。両腕を揃えて上に持ち上げるように指示された。両手を合わせたまま万歳をする体勢だ。

「…ん、…」
「ふふ、恥ずかしい?」
「…うん、…」

普段は隠れた貧相な胸と、脇が丸見えになる。寒さと期待でふるり、と体が震えた。周助の視線が、ざらざらとした手が上半身を嬲る。指先が丁寧に、手の甲から前腕、二の腕を辿る。観察するように。たまに優しく一箇所を集中的に撫でられると、感じる箇所ではないはずのところでも気持ちよくなって嬌声をあげてしまう。はあっと興奮した熱い息を吐き出すと、周助はゆっくりと笑った。

「辛そうだから、ベッドに移動しようか」

ベッドの上の柵に捕まっていいよ、と言われたものの、背後に支えがあるだけで同じ体勢なのは変わらない。もぞもぞと愛液に冷たくなってきたお尻を動かすと、やはり見透かしたように笑われた。
覆いかぶさってきた影に、次は腕をやさしく噛まれる。次第に私の体は周助の唾液の匂いになる。自分の体が作り変えられた気分になるのは、嫌いではなかった。

「ほんと、いじらしいな」
「……ふ、はあっ」
「従順」

脇の皮膚が薄いところを舌先で集中して舐められる。

「ひゃあ‥‥‥、ん!もっわき、‥‥やだってば‥あっ」
「全然嫌そうに見えないから、だめ」

いっきに乳首まで舐められて、興奮しきって訳も分からなくなり涙が出る。彼の手は気味が悪くなるほど丁寧にゆっくり、左胸の皮膚を撫でて、さする。時折爪で引っ掻く。優しすぎて焦らされすぎて、頭が沸騰する。

「まだ達ったらだめだよ?まだボク、ここ舐めてないんだから」
「やあっんっ!」
「あーもう…ぐちゃぐちゃ」

スカートを捲り上げ濡れたパンツの上から秘裂に触れられる。線の上をなぞるように辿られ、ぷっくりと膨れた芯を摘まれ達しそうになると、またまだだめ、と言われる。

「もっやっ!もっむりっや」
「無理じゃないでしょ?我慢して、がまん」

大きな手がさらりと宥めるように私の頭を撫でる。我儘を言う子供にするように。
真っ赤になった私を満足げに見つめると、パンツをするすると脱がして四つん這いの姿勢にさせられた。

「ほんと、エッチだなあ…」

膨れ上がっているであろう秘裂を見つめながら周助がそこに向かって囁き、ふうっと息を吹きかけた。ぶる、と体が震える。枕に顔を埋め、シーツをぎゅっと握りしめると、クリトリスを剥かれた。つるりと彼の舌先が、剥き出しになったそこを舐める。

「ひゃああ、ん!」
「弱すぎて…ほかの男にも舐められてないか、心配…。こんな姿、誰にも見せてないよね」
「や、そこで、しゃべっちゃ、」
「んー?そんなお願いはきかないよ」

ちゅう、と優しくクリトリスを吸われたり、噛まれたり。秘裂全体を丹念に調べるように、広げてから舐められる。舐めたことのないところがないように、執拗に。穴の中までも。

「ふふ、味、濃くなってきた」
「ふ、あ、はあっ」
「ん、そろそろ達かせてあげるから、ほら」

ぐいっと腕を引かれて、後ろを振り向く。肉食獣のような目で、それでも優しく彼は笑う。

「ほら、言って?」
「は、あっ……周助、達かせて、ください」
「よくできました」

いいこ。そう言って周助はじゅうと秘裂に噛みつくようなキスをして、クリトリスをカリカリと削るように引っ掻いた。

「ひゃ、あ!周助、しゅう、すけ」
「ん、かわいい」

ぴりぴりと快楽が走ったあとで、じゅわ、と大量の愛液が出たのを感じた。力尽きて荒い息を枕に押し付ける。出てきた愛液も、周助は丹念に舐めとった。お尻を支えられたまま、ティッシュで拭われているのをぼうっとした頭で認識する。

「だっこしてあげるから」
隣に横になった周助は、いつものように私をタオルケットでくるんで、抱きしめる。かわいい、いいこだね。そう言いながら頭を撫でる。

prev next