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「ユカさんねえ聞いてよ〜聞いて」
「なに」
「昨日ヤッたやつね、中折れしたの」
「中折れって実在すんの?ほんとアンタは地雷ホイホイだな」
「しかも最初に生で突っ込んで来ようとしたんだよ?中折れでもチンコにしか価値ねえんだからチンコにカバーつけて大事にしとけばーかって言い捨ててホテルから逃げたわ」
「中折れチンコにカバー」
「ひひ、パワーワード」
「お前が言ったんだろうがよ」

ユカさんにクダを巻いて絡むのは安定の駅前の居酒屋だ。なんてったって、ここは安くて個室なのが嬉しい。口が悪い種族の人間には、飲み会で個室というのは絶対条件だったりする。オープンな席で女子大生がチンコチンコと小学生ワードを連発していると妙な輩に絡まれたりするのだ。
そういえば飲みすぎて柳に介抱されたこともあったっけなんて、思いかえそうとしてもいなかった記憶を脳内で黒く塗りつぶして、昨日のクソみたいなセックスしかできなかった男の顔を慌てて思い出す。
しかし何の興味も持てないクソ男だったため、顔もろくに覚えていなかった。
つまりは、その男を軽率にセックスに誘ったわたしもクソ女の極みで間違いない。

「苗字、病気にならないようにだけ気をつけなよ。あと妊娠しないでよね。まだ早いよ」
「わかってるよー。害がなさそうな人を選んでるよ一応」
「選んだ結果毎回地雷じゃない?」

ユカさんは手芸サークルの仲間よりは常識人なため、わたしがやっている男遊びの話をすると眉を顰めたり咎めるような言葉を言ったりする。それが心配されていると感じさせてくれて、かつ無理に止めたりもしないあたりにも安心して。その距離感がなんとなく嬉しかったりもするのだ。
わたしはとても面倒な女。自覚はある。

昨日の彼は中折れではあったものの、全然気持ちよくないのにも関わらずいっちゃった?と何度も聞いてくる男や、止めてもゴムを付けようともしない男よりマシであると、どんぐりの背比べのようなことをつらつらと語ってはユカさんをドン引きさせていると、注文していたミックスグリルが届いた。

「おまたせしましたーー‥あ」

そこにいたのは銀髪の男だ。
テニス部の柳の友達、おせっかい野郎。無意識に苦々しく顔がゆがむ。店名を胸元に入れた黒のポロシャツに、この前と変わらず折れそうなほど細い足が収納されたダメージのデニムパンツ。口元のいやらしそうな黒子。
彼はにやけた顔でテーブルにミックスグリルを置くと、おまえさん、と少しかすれた色っぽい声でわたしを呼んで、顔を眺めてきた。

「お、や。おや?にお、う、さん?」
「俺は仁王じゃが」
「におうざんんんんんんん!!?ファンでずぅ」
「こっわ」

さすがはテニス部のファンを自称していたユカさんであった。唐突に滂沱の涙を流し始めたユカを仁王とやらはその一言だけでガン無視である。いっそ清々しい。

「なんだよクソ店員。ナンパしてくんじゃねえぞ」
「ナンパじゃと?おまえどんだけ自分の顔に自信あるんじゃ。鏡見てきんしゃい」
「その冷ややかな目やめろや。自分の顔の悪さくらい自覚してるわ」

小奇麗だが退廃的な雰囲気のある美人に屑を見るような目で見られると少しだけ心にダメージを負う。

「なあ、後で俺とカラオケいこ」
「ナンパじゃねーか!!まごうことなきナンパじゃねーか!!」
「ツッコミこっわ」

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