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「あら苗字さんおはよう」
「おはようございまつ・・・朝ちゃん」
「先生とお呼びなさい副委員長」

医務室の常連がクラスの副委員長なんてものに任命されてしまったことはもう聞き及んでいるらしい。完全な健康体じゃないのにいいんだろうか、こんなんが副委員長で。うちのクラスのひとたちめんどくさがりだから、適当に誰かに押し付けたかったんだろうけど。

今日はあのくらくらする感じも酷い。生理中のせいもあるだろう。思わずベッドに倒れこんだ。氷帝のベッドスプリングいいなあ。高いんだろうけどうちにもほしい。
流石の朝ちゃんも心配そうに顔をのぞきこんでくる。

「ねえ、もしかして生理?」
「...ふぁい...」
「痛め止めあげるから、飲みなさい。別にどこのでも大丈夫だったわよね?副作用とか出たことないでしょう?」

冷蔵庫から備え付けの水をコップにそそいで手渡してくれる朝ちゃん。なんだかんだ優しいんだからなあもう。でも保険医だしこれが普通で、いつもの私への対応が雑すぎるのか、その辺は慣れきってしまってよく分からなかった。
錠剤も一緒に受け取ると、医務室のドアがおもむろに開いた。

「失礼します...すみません、朝から。絆創膏いただけますか?」

ドアに立つ男子生徒を見遣って度肝を抜かれた。こんなイケメンいたのか、うちの学校に。
身長も180センチ以上ありそうな長身で髪の毛も短髪さらさら。髪色が真っ白なのは気になるけども。優しそうな切れ長の目に色白...と優しげなイケメンの要素を全て詰め込んだイケメンがいた。
いやいたんじゃない。おわした。あまりの眩しさに目がチカチカする。イケメンってこわい...。
まだ夏服のせいで、半袖から見える細マッチョな筋肉が実によい。

すごい、トータルですべてがイケメンだ。...うん、イケメンだ...。声も素敵....。

朝ちゃんが「あら、怪我?」と不思議そうな声音で聞いて、その入り口で立ちすくむイケメンに入室を促した。

「お忙しいところすみません」
「いいのよ。どこか怪我したの?」

イケメンが朝ちゃんに差し出した左腕の一部には擦り傷ができていて、結構な量の血が滲んでいて痛々しい。

「転んだの?運動神経イイのに」

朝ちゃんが彼にスツールに座るよう指示しながらてきぱきと消毒液の準備をしている間も、私は不躾に、されどそんなにわからないようにベッドからそわそわとイケメンを眺めていた。
私も女子力低めとはいえ女だ。イケメンが同じ空間にいたら見慣れた朝ちゃんではなくイケメンを拝んでしまう。それは自然の摂理だ。仕方ない。

そのときイケメンがすっと顔をあげ、私と視線があった。思わず慌てて顔を逸らせば、ふ、と少し笑ったような音がして顔が赤くなる。
ありゃ見てたのばれたな...絶対。なに大人みたいな雰囲気で笑わないでよちょっと。やだもう...なんなの。心の中でおばちゃんのような文句をつける。
バツが悪くなりもそもそ極力音を立てないようにベッドに潜り込んだ。恥ずかしい。死んだ。

「ありがとうございました」

ああ...ありがとうイケメン。痛み止めはまださすがに効かず痛む下腹を押さえながらイケメンに朝から目の保養を提供してくれたことに感謝した。
そしてさようならイケメン...。怪我、はやく治るといいですね....。




「ああ、あのひと?鳳君だよ。鳳...何だっけな」

朝のイケメンはなんと隣の隣の隣の...つまりE組の副委員長様であったらしい。あんなイケメンと同じ役職についていることが非常に恥ずかしいね。死ねますよ本当に。

「....ああ、思い出した。鳳長太郎君だよ」

わざわざご丁寧にフルネームを思い出してくださった我がクラスの委員長高梨君。やっぱり君の眼鏡は好きだよ。
それで思い出した。さすがに女子の中にいればあのひとがイケメンだのどうの...という情報は耳に入る。
今まで私の視野が狭かったからなのかお姿は拝見したことはなかったけれど、鳳長太郎というイケメンがテニス部にいることは聞いたことがある。
確か中学の時から目立っていた生徒だったはずだ。
イケメンは名前までもイケメンなんですね。鳳て。かっこいいわ。あの跡部様のテニス部ね...。

放課後、空き教室で1年生全クラスの新クラス委員の集まりがあり、白髪の目立つ後姿を見かけた。そして思わず高梨君に聞いてしまった。
あのひとなんていうの、と。

イケメンを眺められる幸せをありがとう、拝んで何かのお力をいただこう。どんな力かは知りませんが。
ちょっと副委員長になってよかったかもしれない....と現金なことを考えながら高梨君と一緒に、視聴覚室の後ろのほうの席に座る。
大体の人数が揃ったところで先生が入ってきて出欠をとりだした。
もちろん高梨君と私の名前も呼ばれたところで、前の方の席に座っていた例のイケメンがゆっくり振り返ったのを視界の端に捉えた。
そしてイケメンは優しく小さく...微笑んだように見えた。

クラスもまばらに座っていた上、彼の背後に座っている生徒は私達以外にいない。
高梨君と思わず目を見合わせて、どっちも、あの人と知り合い?あれ、知り合いじゃない?と目で会話してしまった。


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