劇団を守るため
『と言うことで、碓氷真澄君が劇団に入ってくれました。』
「あれ?真澄君?碓氷真澄君?」
「咲也君、知り合い?」
「話したことはないですけど、うちの学校の後輩です。」
「お前、誰?」
「あ…やっぱり俺のことなんて、知らないよね。」
なんだかしょぼんとしている咲也君を見ていられない。って今はそんなこと言っている場合じゃない。
「じゃあ、早速で悪いけど、ストリートACTに参加してもらえるかな?」
「あんた誰?この人に似てるけど…、」
「私は立花いづみ。この子の姉だよ。」
「姉…てことは俺の未来の義姉さん。よろしくお願いします。」
「かえで…貴女高校生に何を…、」
『何もしてないよ!?』
人聞きが悪いよ!!私にも何が何だかわからないのに!!真澄君はたぶんいい子なんだろうけど、とっても変な子だと思う。
『お姉ちゃんさっきはごめん、私…ストリートACT見ててもいい?』
「うん…無理しないで。皆のこと見ててあげて。」
『ありがとう…。』
「あんたやらないの?」
『うん、ごめんね。』
「なら俺もあんたと見てる。」
『真澄君が演じてるところ見てみたいな。』
「…行ってくる。ちゃんと見てて。」
『うん。ちゃんと見てるよ。』
こうして、今度は真澄君が参加したストリートACTが再開された。真澄君は演劇経験があるのだろうか。初めてにしては上手い。たまにちらちら私を見てしまうのが傷だが。
ストリートACTを行う中、新団員は増えずにどんどん時間だけが過ぎていく。ついに日が暮れ始めてしまった。
「時間切れ、ですかね。」
そんな支配人さんの言葉に、胸が痛んだ。やっぱり私は守れないのだろうか。せっかく真澄君も入ってくれたのに。
「ふう、なかなか条件に合うところってないんだな。」
「ねえ!団員寮を備えてる劇団に興味ない!?」
「え?」
『お姉ちゃん!?』
お姉ちゃんは唐突に通りすがりの青年に声をかけ始めた。ついに見境なく話しかけ始めたのだろうか。
「あれ?昼間の…、」
「あの時劇団探してるって言ってたよね?もう見つかった?」
なんだかこれは話が良い方向に進んでいるみたいだ。見境なく話しかけたのかと思ったがそうではないらしい。昼間に偶然出会った青年は自分の条件に見合う劇団を探しているそうだ。そして、その青年は脚本家兼役者として入団してくれた。青年の名前は皆木綴君。
『お姉ちゃん!!』
「うん!急いで劇場に戻らないと!」
「え?走るんですか?」
「事情は走りながら説明するから!今はとにかく走って!」
『皆ごめんね!』
私達は状況を説明しながら、劇場へと走った。走っている途中真澄君が、大丈夫?抱っこするけど。と私に何度も言ってきたが、丁重にお断りした。
「ほう、逃げはしなかったか。」
「はぁ…はぁ…なんとか間に合いました、よね!?」
全力疾走したものだからもう皆バテバテだ。真澄君だけは涼しい顔をしているけど。
「はぁ…はぁ…新入団員連れてきました!」
「首の皮が一枚繋がったか…運のいい奴らだ。」
「じゃ、じゃあ、取り壊しはこれで!?」
「『よかった…。』」
「何を安心している。俺は団員を集められたら、今日のところは引き上げると言っただけだ。昼間説明した通り、新入団員が2人増えたところで、この劇団が存続できるはずがない。」
悔しいけど左京さんの言っていることは間違ってない。もっともっと団員を集めて、ユニットを組んで春夏秋冬この劇団を回さなければならないのだ。
支配人さんは新生春組が発足出来そうだと左京さんに伝える。すると、彼は旗揚げ公演を来月中に行うよう私達に言いつけた。正直、練習時間が圧倒的に足りない。
「今からいう三つの条件を満たせたら、借金の完済はしばらく待ってやらんこともない。」
「『条件…?』」
きっと私達はこの先色んな困難にぶつかるのでしょう。それでもこのMANKAIカンパニーを守ることが出来るのなら、この身に代えても守ってみせる。