バラバラでちぐはぐ
脚本が完成し、今日から本格的に"ロミオとジュリアス"の練習が始まった。昨日体調がすこぶる悪かった至さんも練習に参加している。まずは通し練習が行われた。真澄君は全て頭に入ってるみたいで、台本は持っていなかった。あの量の台詞が全て頭の中に入っているなんて…、
「"家も名もーーええと、捨ててくれ、ジュリアス。俺たちにはーー、"」
「やりづらい。」
「え?」
「いちいちつっかかるから、やりづらい。」
「あ、ごめん。」
「最初なんだから、そんなこと言ってもしょうがないだろ。」
少しまずいかな。メンバー内で不穏な空気が流れている。真澄君は演技に対する執着はないが、他のメンバーよりも上手いのは確かだ。しかし協調性がまるでない。まるで、ひとりぼっちで演技をしているようだった。真澄君の言葉に綴君も少し苛立っていて、これから先が不安だ。
『真澄君、言い過ぎだよ。』
「本当のことだし。」
「…すみません、俺が下手くそだから。」
「真澄、和を乱すなよ。」
「アンタらと同じように下手になれってこと?」
「そういうことじゃねぇだろ。」
「頭に血がついてるヨ、2人とも。」
『頭に血がついてる?』
「それをいうなら血が上ってる。でも、シトロン君の言う通りだよ。2人とも落ち着いて。」
「俺は落ち着いてるつもりっす。」
「…。」
『お姉ちゃん、一旦休憩した方がいいかも。』
「そうだね、ちょっと休憩にしよう。」
「はい。すみません…。」
「はー。」
「疲れた。」
口々に出る言葉は良い方向へと向かうものではなかった。最初からうまくいかないことはわかってる。それでも、メンバーが支え合っていかないと演劇は成り立たない。
「ごめん、まだ本調子じゃないから、俺はこれで早退させてもらってもいいかな。」
「え?」
「ごめんね。」
「いえ、お大事に。」
至さんが背を向けて歩き始めた直後、体が勝手に動いていた。何も考えず至さんの腕を掴むと、彼は驚いた表情をした。
『あれ…、私、何を…ごめんなさい至さん。お大事にしてください…。』
「ごめんねかえでさん。」
なんだか皆バラバラで、このままじゃいけないって思うのに、どうしたらいいかわからなくて、去りゆく至さんの背中をただ見ていることしか出来なかった。