衣装と大道具

雄三さんの言葉や専用メニューの甲斐もあり、皆の演技はグッと良くなった。一番は皆の努力のおかげだ。

「はい、それじゃあ1時間休憩−−−、」

「監督!見つかりましたよ!」

唐突に稽古場の扉が開いたかと思えば、支配人がキラキラとした瞳で稽古場に入ってきた。支配人の後ろから可愛らしい女の子と体つきのいい男の人も入ってくる。

「失礼しまーす。」

「ご紹介します!新しく衣装係として応募してきてくれた瑠璃川幸君です!」

「どーもー。」

「女の子?」

「は?」

『えっ、男の子!?』

目から鱗、とはこの事だろうか。こんな可愛い子が男の子なんて思いもしなかった。でも確かに顔は中性的な顔立ちをしているし、男の子と言われれば男の子にも見えてくる。話によれば彼は中学三年生で、ネットで服を売った経験もあり、腕は確かだという。受験も心配されたが、幸いエスカレーター式の学校に通っているみたいで何も心配いらないそうだ。

「公演まで時間がないって聞いたから、ざっと役者を確認しておきたくて。主役は誰?」

「あ!俺、ロミオ役の佐久間咲也!よろしくね!」

「元気100%、濃縮還元って感じ。4:1くらいで薄めよ。」

「え!?」

『よ、良かったね咲也君!元気いっぱいってことだよ!』

「フォロー下手っすかかえでさん!」

「はい、次は?」

「…。」

『真澄君、挨拶しよ…?』

「あんた以外の女に興味ない。」

「今までの会話、全部スルーしてたね!?…この子はジュリアス役、碓氷真澄君。」

「サイコストーカー………と、」

真澄君でさえとんでもないあだ名をつけられてしまった。綴君は村人C、至さんはインチキエリート、シトロン君はインチキ外国人と、とてもじゃないが褒められたあだ名はつけられなかった。

「監督兼主宰の立花いづみです。」

「ふーん、そっちは?」

『ふ、副監督にょっ、立花かえでです!』

「噛んだね。」

「噛みましたね。」

「噛ませ犬ダヨ〜!」

「それ全然意味違うから!」

「可愛い…噛んだあんたも好き…。」

今日こそはスムーズに自己紹介するはずが、噛んでしまい失敗に終わった。うう、恥ずかしすぎる。

「なるほどね…、じゃあザッとデザイン画のラフ書いてくるからまた打ち合わせってことで。」

「う、うん、よろしく。」

『よろしくお願いします。』

瑠璃川君はメモとペンを鞄の中に入れて、早々に帰ってしまった。中学三年生の割には大人びてるし、しっかりしてるなぁ。最近の子は皆そうなのかな。

「それで、さっきからずっと黙ってるこの人は?」

「!?」

『お姉ちゃん、さっきからいたからね。』

支配人さんの隣でずっと黙っている人は、大工をお願いする鉄郎さん。先代の頃からお世話になっているらしい。さすがに私も覚えてないなぁ。鉄郎さんの言葉は支配人さん以外誰も聞き取ることが出来ないので、鉄郎さんとの打ち合わせは支配人さんにお願いすることにした。

「衣装に大道具って、色々進んできた感じがしてワクワクしますね!」

「そうだなー。」

これで衣装と大道具はきっと心配いらない。あとは芝居の完成度をあげるだけ。このまま駆け抜けたい。皆この舞台を最後まで作り上げたい。

『お姉ちゃん、頑張ろうね。』

「うん、頑張ろう。」