苦手なタイプ

旗揚げ公演まで残り五週間となった。そして私達は今、一つの問題に直面しているのだった。

『これは…、』

スマホに映し出されたレトロな雰囲気を出す劇団の公式サイト。支配人さん以外は絶句した。そう、旗揚げ公演五週間前なのでそろそろチケット販売を始めなければならなかった。支配人さんに相談したところ、劇団の公式サイトに告知しているというのでどんなものかと見てみたはいいが、少し昔を彷彿させる作りとなっていた。

「誰かこういうサイトとかフライヤー作れる人っている?」

「……すみません、パソコンとか全然使えなくて…、」

「んー、スクリプトなら多少わかるけど、デザインは無理かな。」

「ワタシもフライは食べる専門ネー。」

「そっちのフライじゃないからね。」

『私も機械は全然扱えないの…、』

正直機械は本当に扱えない。スマホですら危うい状態だ。この間も摂津万里君に既読してから打つの遅いってLIMEで言われたばかりだった。

「あの、俺、一応WEBとかチラシのデザイン出来る知り合いいますけど…、」

「本当に!?頼めるかな!?」

「高校の先輩なんで、連絡は取れますし、頼めるとは思います。」

「歯切れが悪いね。」

「まぁ、そんなに仲がいいわけじゃないんで。でも、連絡してみます!」

「『ありがとう!』」

「ただ一つ心配なことがあるんだよなぁ…、」

綴君はそう言って私の方をチラッと見た。彼の表情は正直心配、という表情で、思わず首を傾げた。

「もしかしたらかえでさんが苦手なタイプかもしれないっす。」

『わ、私……?』

***

綴君の言っていた意味がようやくわかった。

「すげー!何これ。マジ、舞台とか初めて立った。広えー!テンアゲすぎ!」

「誰、あれ…?」

「あー、デザイン出来るっていう先輩っす。三好一成さん。」

「え!?」

「三好さん、どもっす。」

「おー、つづるん、久しぶり!すげーな、ほんとに劇団やったんだ。」

私、こういう人なんていうか知ってる。ぱーりーぴーぽーって言うんでしょ。何処かで聞いたことがある。滲み出るリア充感とコミュ力。綴君の言う通りだ。私が一番相容れない存在、そして最も苦手とする存在−−−。

「監督兼主宰の立花です。サイトとフライヤーのデザインをお願いしたいと思ってるんだけど、大丈夫かな?」

「あ、りょっす。」

「は?」

「つづるんに聞いたんで、おけっす。とりまソッコーでラフあげちゃいます。」

「あ、そ、そう。」

「マジ友達とかガンガン呼ぶんで、頑張ってください!」

「ありがとう。」

「それで、さっきから気になってたんすけど、あそこにいる子って、劇団の子?」

ばちぃっ、と三好さんと目があってしまった。く、存在がバレてしまった。

「かえでさんいつの間にあんなところに!」

「オ〜、かえでジャパニーズ忍者ネ。」

「へ〜!かえでちゃんって言うんだ!かわいっすね!ねぇねぇ、俺とLIME交換しよ?」

軽い足取りで私には近寄る三好さん。そうだ、サイトやフライヤーのデザインを頼むんだから失礼はいけない。そうわかってはいるが上手く言葉が出てこない。

「かえでに触るな。」

「え〜!?二人ってそういう感じ!?」

「さすがかえでのセコムネ。素早い動きダヨー。」

「三好さん、その人ちょっと人見知りなんで、ほどほどにお願いします。」

「あっ、そうなんだ。ごめんねかえでちゃん。」

少し眉毛を下げて笑う三好さんを見て、心がズキリと痛んだ気がした。やっぱりダメだよ。お世話になるんだから。

『わ、私…っ、立花かえでって、言います。副監督、です。サイトとフライヤーの、デザイン、よろしく、お願いします…。』

「かえでさんすごいです!初対面なのに!!」

「しかも三好さん相手にここまで!」

咲也君と綴君に拍手されたけど、これ本来普通なんだよね!?ダメだな私…年下の子達にも甘やかされてる…。

「うん、よろ〜!今回は残念だけどLIMEは諦めるね!次は交換しよ!」

「許さない。かえでは俺の。」

「え〜!そこを何とか!」

『私はいつから真澄君のものに…?』

「かえでさん…そこはスルーで。」

結局三好さんは綴君に背中を押され帰っていった。まるで嵐のような人だった。しかし聞けば、彼は美大に通っているらしい。出来上がるサイトやフライヤーが楽しみだ。

『どんなのができるんだろうね。』

「楽しみですね!」

『うん…!私達は稽古頑張ろう!』

「はい!」