みんな違って当たり前

『ふーんふんふんふふふふーん♪』

今日は素晴らしい休日だ。委員長からの呼び出しはないし、欲しいものは手に入ったし、あとは家でゴロゴロしよう。

『ふんふー…んぎゃっ!?』

バイーンっと柔らかい何かが後頭部に直撃して地面に叩きつけられた。額を思い切り地面にぶつけて本当に痛い。涙目で後ろを振り向くとしとぴっちゃんが風船の中で私をジッと見ていた。

『しとぴっちゃん…痛いよ…。』

「ゴメン花莉。ワザとじゃないの。」

『こんなところでどうしたの?』

「ン〜〜散歩!」

風船の中から出てきたしとぴっちゃんは私にピースを出してくる。私も同じようにピースを出して彼女のピースと合わせた。

「花莉は何してたの?」

『お買い物だよ。あ、たい焼きあるんだけど食べる?』

「食べル!」

私はしとぴっちゃんと近くの公園に行き、たい焼きを2人で食べた。しとぴっちゃんはもぐもぐと美味しそうに食べていたので少しホッとした。

「なんだあいつ変なのー!」

「変な格好ー!!」

公園で遊んでいた小学生の男の子2人は、しとぴっちゃんを指差して馬鹿にし始める。石を投げようとしていたので私はベンチから立ち上がり、その腕をそっと掴んだ。

『ねえ、どうしてそんなこと言うの?』

「だ、だってあいつ変だし!」

「俺達となんかちげーもん!」

『違うと何がいけないの?』

「え…、だって、だってさぁ、おかしいじゃん…。」

『おかしくないよ。私も貴方も、貴方も同じ形はしてないよ。髪型も、髪色も、背も、服も。皆違うでしょ?』

「う、うん…。」

『皆違って当たり前なんだよ。皆同じだったらつまらないよ。どうする?皆同じ顔だったら。お母さんもお父さんも友達もみーんな貴方達と同じ顔。』

「や、やだ!!」

「気持ち悪い!!」

『でしょ?同じが良いなんてことはないんだよ。貴方達も自分の色を持ってるから素敵なんだよ。』

「うん…、」

「そうだよな…、」

『あそこのお姉さんは変?』

「変じゃない!!」

「「ごめんなさい…。」」

しょぼんと落ち込んでしとぴっちゃんに謝る男の子2人。なんだか説教じみてしまったな。私は2人に飴をあげてお別れをした。

「花莉はいつも助けてくれるネ。」

『それはこっちの台詞だよ。しとぴっちゃんや、シモンの皆が私を受け入れてくれたから幼い私は笑っていられたんだから。』

「まだキラキラの目は嫌い?」

『だんだん好きになってきたかな…?星空も前ほど嫌いじゃないよ。』

「そっか。花莉が笑ってると嬉しいナ。」

『私もしとぴっちゃんが笑ってると嬉しいよ。ふふ、相思相愛だ。』

2人で笑いあってると何処からか隼人君の声が聞こえた。その声を聞いたしとぴっちゃんは立ち上がって再び風船の中へ戻っていく。もしかして隼人君から逃げてたのかな。

「花莉、ワタシ花莉のこと愛してる。だから花莉が悲しむことはしたくない。でも…、」

『しとぴっちゃん…?』

「!なんでもない!バイバイ!」

しとぴっちゃんはバインバインと風船で何処かへ行ってしまった。一体どうしたというのだろうか。その後なんだか彼女の曇った表情が頭から離れなくて、とても不安な気持ちになった。

継承式まであと3日だ。