だから君が好きなんだ

*炎真side*

信じていた。信じかけていたんだ。それでもやっぱり裏切られた。きっと初代シモンボスはこんな気持ちだったんだ。だったら僕がシモンの誇りを、取り戻してみせる。

最後までツナ君を信じて、あと手紙を置いてきた。助けてと綴って。それでもツナ君は来てくれなかった。どれだけ待っても来なかった。信じていたのに。工場跡地には静寂だけが流れていく。悲しい、辛い、憎い憎い憎い−−−、

『炎真!』

花莉はどうだろうか。花莉も僕を裏切るのかな。興味本位だ、今は授業中の時間だし、すぐに来るとは限らない。それでも僕は花莉に助けてとメールを一通送った。学校からここまで15分程か。花莉…。

『ちょっと!!何やってるの!!』

「うわ、化け物女だ!」

「逃げろ!!」

幼い僕達を守るように彼女は現れた。僕達と変わらないその小さな背中は心強くて優しさに溢れていた。

『大丈夫?』

「だい…じょう、ぶ…、」

その煌めく星空と笑顔に、僕は見惚れていた。勇気を出して僕を助けてくれたその女の子は花莉と名乗った。

『炎真はどの辺に住んでるの?』

「今は小さなアパート。家族が居なくなって、仲間と暮らしてる。」

『そっか…、ねぇ、うちに来ない…?』

「え…?」

『兄弟がいなくて1人で寂しかったんだ。炎真とそのお友達も連れてうちにおいでよ…!』

正直勢いに押された。ぐいぐいと心の中に入ろうとしてくる花莉を自然と受け入れていた。花莉も本当の両親はいないようで、親戚の家にいるという。それでも花莉の親戚の人も僕達を温かく受け入れてくれた。幸せな日々だった。仲間もいて、花莉もいて。それでもその幸せは長くは続かなかった。

『炎真…本当に遠くに行っちゃうの?』

「うん…やらなきゃいけないことがあるんだ。」

『そっか、ねぇ炎真。また誰かにいじめられたら私に言ってね。何処にいても、何をしてても、すぐに飛んでいくから。私はずっと炎真達の味方だよ。』

「!!ありがとう花莉。」


それからしばらく花莉に会うことはなかった。それでもメールのやり取りを続けて、彼女と繋がり続けた。そして今、目的のために再びこの地へ戻ってきた。

「もうすぐ15分…、来るわけないか。」

『炎真っ!!』

心臓がどきりと跳ねた。俯いていた顔を上げると、汗をかいて、息を切らしてボロボロになった彼女の姿が見えた。なんで、どうして、

「なんで…、」

『はぁっ…はぁっ…前にっ…言ったじゃん…っ、』

汗が彼女の頬を伝って落ちていく。こんなにもボロボロになっているのに、キラキラ光って誰よりも綺麗だ。

『何処にいたって、何をしてたって、すぐ飛んでいく!!私は炎真達の味方だって!!』

ああ、やっぱり君はずっとずっと僕の−−−、

『てっ、敵はっ!!何処にいる!?炎真は怪我してない!?』

「大丈夫…、帰ったみたい。花莉はどうしてそんなにボロボロなの…?」

『えっ、いや、あの、何も考えずに学校飛び出してきて…なんか武器になりそうなものを道端で拾ってきたらこんなになっちゃいました…。』

えへへ、と気まずそうに笑う花莉に胸がぎゅっと締め付けられた。愛おしい、というのはきっとこういう気持ちなのだろう。

「花莉、」

『うわぁっ、炎真、あの、ほんとに今汗臭いし、汚いから!!』

彼女の柔らかい体をぎゅっと抱き締めた。汚いとか汗臭いとか全然感じない。むしろいい匂いだし、綺麗だ。ああ、花莉が欲しい。渡したくない。絶対ボンゴレになんか渡さない。

「花莉、大好きだよ。」

『えええ照れちゃうな。』

「ふふ、」

もうすぐだ。君を守るのはボンゴレじゃない。シモンだよ。だから待ってて、ボンゴレが終わるその時まで。