心臓を刺されたような

『炎真大丈夫かな…。』

授業中に突然炎真からメールが来たと思ったら、敵に襲われているから助けてという内容で、すぐに教室を飛び出した。誰かを頼るべきだったのかもしれないけど、そんな余裕も時間もなくてとにかく急いで工場跡地に向かった。着いた頃にはすでに敵は帰ってたみたいで炎真がぽつんと取り残されていたのだ。怪我はなかったようで安心した。全力疾走をして汗もかいて息もあがってみっともなかっただろうに、彼は私を抱き締めてきた。本当に勘弁して欲しかったが、なんだか彼は危うくてすぐ壊れてしまいそうな気がして本気で拒めなかった。もう大丈夫だから学校戻って、と言われて学校に戻ったはいいが心配だ。もやもやしたまま放課後を迎えることになってしまった。

『はぁ、』

私は応接室のドアをノックし、応接室へと入る。いつもは委員長がすでに座っているのに今日は姿がない。もう校内の取り締まりに行ってるのかな。私は特に気にせず自分の業務を開始する。その一時間後に事件は起きた。

勢いよくドアは開かれ、その音に驚いた私はドアの方を見た。入ってきたのはもちろん委員長だ。だけど、なんだか様子がおかしい。すでに何人か殺ってきたようで返り血が服や顔についている。いつもみたいにスッキリした顔をしてないし、何か怒っているようで、その冷たい表情にぞくりと体が震え、体温が下がったような気がした。なんとなく危険を感じソファーから立ち上がって彼と距離を取る。

『い、委員長…?もう、取り締まりしてきたんですか…?』

「そんなことどうでもいい。君、今日何処へ行ってたの?授業中に。」

『っ、』

なんで、そのことを知ってるの。もしかして屋上から見られてたのか。わからないけど、嘘をついても本当のことを言ってもまずいことになる気がした。

『あ、の…、』

ジリジリと近づいてくる委員長に対して私は一歩、また一歩と後ずさる。そのうち後ろに逃げ道はなくなって追い込まれてしまった。

『炎真から、助けてってメールが来て…っ、それで…っ、』

「何も考えず飛び出したわけ?君この間襲われたってもう忘れたの?」

『すみません…。でも、炎真のこと、助けたくて…、』

ダメだ、何を言っても言い訳にしかならない。委員長が怒るのも当たり前だ。この間襲われそうになったばかりなのに1人で飛び出して、マフィアがいる場所へと向かった。大馬鹿だ。

「たかが小動物一匹のためになんてくだらない。」

『っ、なんでそんなこと、』

「君の気を引きたかっただけでしょ。愚かで弱い奴のすることだ。」

冷たく吐き捨てられたその言葉を、私は聞き流すことは出来なかった。心のどこかで彼なら理解してくれると思っていた。炎真が私にとって大切な幼馴染だと知っているはずなのにどうして、

『炎真を侮辱しないでください!!委員長でも言っていいことと悪いことがあります!!』

「僕に逆らうんだ…?」

『う"あっ…!!』

それは一瞬だった。片手を壁に押し付けられ、トンファーを首元にあてがわれた。トンファーのせいでうまく呼吸ができない。苦しい。怖い。なんで、こんな、

「君は僕のものでしょ。僕だけを見てればいい。」

『っずっと貴方のものだと思ってるんですか!?…この先もずっと一緒にいる保証なんてない……っ!』

「…、」

『んぅっ…!?』

何が起こったのかわからなかった。乱暴に噛みつかれたと言ってもいい。舌を無理矢理ねじ込まれ、呼吸の隙も与えないようなキスに頭が真っ白になる。いやこれをキスと言っていいのかわからない。怖い、このまま食べられてしまうのではないかと錯覚するくらい、怖くてたまらない。

『ン…っ、や、……んんっ、』

苦しくて力が抜けていく。そのうち体が震え始めてしまって頭もボーッとしてきてしまった。苦しいよ。酸素が欲しい。やだ、委員長とこんな形でキスなんてしたくない。

「はっ…、」

やっと唇が離されたその瞬間に私は思い切り左手を振りかぶって、彼の頬を引っ叩いた。

「っ!!」

『はぁっ…はぁっ…、』

涙がボロボロと出てきて、止まらなくなった。どうしてこんなことになってしまったんだろう。何が始まりだったんだっけ。もう何もわからなくなっちゃったよ。

「…………もういい。」

冷たくてナイフのようなその言葉は私の心臓を貫くには充分過ぎた。彼は私に背を向けて応接室を出て行ってしまう。取り残された私は壁にズルズルと背中を預けてその場に座り込んだ。

『…ふっ、ぅ、うっ…うぅ…うああああああああ!!』

心が痛い。何度も何度も刺されて、抉られているような痛みだった。こんな風になりたかったわけじゃない。私は何を間違えてしまったの。

私はどうしたら良かったの。