認め合うために

「花莉、泣くな。」

『らうじ…っ、』

どうして泣かずにいられるだろうか。大切な人を一度に2人も失ってしまった。らうじも大切な人を失って悲しいはずなのに、私のそばにいてくれる。私を包み込んでくれるような包容力に私はいつも助けられていた。

「花莉、大丈夫だ。おいら達が勝って紅葉を助けに行く。」

『紅葉を…?』

「そうだ。紅葉を迎えに行くんだ。きっとおいら達なら復讐者にも負けない。帰ってきた時に花莉が泣いていると紅葉は怒るからな。花莉には笑っていてほしい。」

『らうじ…、』

「花莉の涙は見たくないからな。笑ってる顔が一番良い。」

そう言って柔らかく笑うらうじに応えるように私はぎこちなく笑った。泣きたいのはきっと私だけじゃない。炎真やアーデル、らうじだって泣きたいはずだ。

「じゃあ行ってくる。おいらが帰ってきた時はちゃんと笑っていてくれよ。」

『うん…、』

また私は1人の背中を見送る。その大きな背中には一体どんな誇りを背負っているのだろうか。

***

2回目の戦いの幕が開けた。らうじの相手はランボ君。ランボ君は最後までらうじを遊び相手だと思っている。ランボ君はこの戦いの意図を理解していないのだ。そしてランボ君は10年バズーカで15歳のランボ君と入れ替わる。毎度のことながらグッドタイミングだ。

ランボ君の雷の属性に対して、らうじは山の属性。どのような戦いになるのか見当がつかない。勝負の掟はお相撲ごっこ。なんとも彼等らしい勝負だった。でもそれも命懸けなのだ。ランボ君は笹川君同様、新しくなったボンゴレギアを使用し、鎧のようなものを纏った。2人は激しくぶつかり合うが、ランボ君が押し負けてしまう。らうじは背に山を出現させ、ランボ君を追い詰めていく。ランボ君はそのアンフェアな戦いに涙を流していた。

「花莉さんに会いたい…。」

「もうお前達が花莉に会えることはない。花莉は渡さない。」

「!?何を言って…、」

「花莉は昔からあの瞳に苦しめられて泣いていた。もう花莉の涙は見たくない。お前達のように花莉の力を利用しようとする奴らから守るのがおいらの役目だ。」

「俺は花莉さんを利用するつもりなんてない。花莉さんは俺の…、」

「どうでもいい。ランボ、お前はここで負けるのだから。」

綱吉君はこの戦いにランボ君を連れてきてしまったことを後悔していた。まだ幼いランボ君を大切に想っているからだ。

「違います。若きボンゴレ。違うんです…それは違う。俺の幼き日の記憶の中には何を忘れても決して消えることのない光景がある。優しいママンに、チャーミングなイーピン。そして、若きボンゴレとそれを取り囲む個性豊かな年上の面々。最後に、いつも笑顔で俺を腕に抱いてくれる美しい花莉さん。俺はそこにいるのが何より嬉しくて楽しくて一日も早く追いつきたかった…。これからも幼い俺をどんどん連れ出してくれないと困ります。一緒にいたいのは俺の方なんですから。」

『ランボ君…。』

幼いランボ君がそんなことを思っていたなんて知らなかった。ランボ君にとって綱吉君達がいる場所は、目標で居場所で大切にしたい場所だったんだ。

ランボ君は強い意志を持った瞳でらうじの前に再び立つ。そして、ボンゴレギアの力を使い、らうじを山ごと弾き飛ばしてしまった。らうじはフィールドから落ちてしまい、敗北した。

『らうじ…!!』

「くそぅ…、おいらが負けようとシモンは負けない!必ず炎真達がお前達に雪辱を果たすぞ!」

「あの…さっきからエンマって誰だ?そんなにすごい奴なのか?」

「おいらのボスだ!そしておいら達は強い絆で結ばれている!!なぜなら共にボンゴレ傘下のマフィアに迫害され家族を奪われた仲間だからだ。おいら達は迫害の憎しみと悲しみを共有している!だからこそシモンの絆は強いのだ!」

彼等が家族を失ったのはボンゴレ傘下のマフィアのせいだったなんて知らなかった。皆身寄りがないことは知っていた。家族を失ったことも。でもそれがボンゴレ傘下のマフィアによって家族を奪われていたなんて。そんなこと、憎まずにはいられないじゃないか。私だってきっと許せない。

「勝負は決した。」

再び復讐者が現れて、敗北したらうじを鎖に繋いでしまう。二つ目の"鍵"は花。見せられた記憶には初代シモンがボンゴレT世に自警団を作るよう勧めている記憶。自警団のきっかけが初代シモンだったんだ。

らうじはランボ君に綱吉君がボスとしての資質があるのか問う。しかしランボ君は綱吉君をボスだと思ったことはないと答えた。そして、いい兄ちゃんだとも。

「あと、さっきは言いそびれたが花莉さんは俺の姉さんのような人なんだ。激しい雨の夜、幼い俺を身を挺して守ってくれた記憶が昨日のように思い出される。あの日から俺は守られるのではなく、守りたいと思ったんだ。」

『!!』

ランボ君が言っているのはきっと指輪争奪戦の雷戦の時のことだ。あの日のことを10年経った未来でも覚えていてくれてるなんて。

「!!…そうだったのか………。やはりボンゴレは許さない!どうあってもな!!だが、お前は認める。楽しかったぞ、ランボさん。」

らうじはそう言い残して復讐者に連れていかれてしまった。そして、ランボ君は5歳の姿は戻る。また私の幼馴染が連れていかれてしまった。シモンが勝ったってボンゴレが勝ったって嬉しくない。鏡を握りしめていると、部屋に誰かが入ってきた。こんな夜遅くに誰なのだろうか。

「花莉、起きてる?」

『炎真…、起きてるよ。』

「夜遅くにごめん…、」

炎真の表情は暗くて、泣きそうだった。当たり前だ。紅葉に引き続き、らうじが帰ってこないのだから。

「…………。」

『…炎真、このベッド1人じゃ寒いし寂しいよ。』

「え……?」

『1人じゃ広すぎなの。今日だけ一緒に寝てくれないかな?』

「!!…花莉…ありがとう。」

痛々しく笑う炎真の手を引き、2人でベッドに倒れこんだ。2人の仲間を失った炎真は少しやつれていて見ていられない。私はそっと炎真の頭を撫でる。すると、彼はすぐにうとうととして眠りについた。眠れない日々が続いていたのだろう。

『炎真には復讐なんて言葉似合わないよ…。』

優しい炎真だから仲間を思って傷つくことが出来るんだよ。せめて夢の中では穏やかな気持ちになってね。そう願って私も眠りについた。