誇りを胸に

片手で炎真の手を握りながら、もう片方の手で鏡に映る綱吉君達の様子を見ていた。私が見た頃にはすでに綱吉君達がアーデルの元へと辿り着いていた。

「復讐者の掟に従い、互いの誇りを懸けて勝敗を決する。沢田綱吉、貴様の誇りを言え!」

「…え…?誇り…!」

「迷うことなどないはずだ。貴様の体に流れる残虐な血こそが貴様の誇りだろう!!」

綱吉君の表情はまだ暗く、自分の誇りが何なのか見出していないようだった。それでも、彼の誇りがアーデルの言う残虐な血ではないことを私は信じている。

隼人君が言い返そうとしたその直後、ヘリコプターのプロペラの音が鳴り響いた。綱吉君達の背後からヘリコプターが現れ、彼らの頭上を飛ぶ。

「ではご武運を祈ります。」

『く、くくく草壁君!?』

「うん。」

『!!!』

思わず鏡から顔を背けた。心臓がうるさいほど高鳴っている。驚き、嬉しさ、悲しさ、色んな感情がぐちゃぐちゃになって涙が出そうになった。私はもう一度鏡を見た。彼はヘリから飛び降り綱吉君達の前に着地する。

「やぁ、小動物。どこだい?継承式で暴れたもう一匹の小動物は。」

「な?もう一匹…?」

「エンマのことだな。」

「言っておくがボンゴレの卑劣なボスと我らのシモンのボス、炎真は似ても似つかん!一緒にしてくれるな!」

「何が違うの?生態的に。」

『ぶっ、』

真面目に聞く委員長に思わず笑いそうになってしまった。ダメだ、こんな真剣な場で笑うなんて。いつも通りの委員長で安心してしまった。でも、やっぱり私を助けに来てくれたわけじゃないんだ。何自惚れてるんだろう。彼が私のために助けに来てくれるわけないのに。

「炎真はここにはいない。だが貴様が来た以上私が倒してやる。勝負しろ、雲雀恭弥。」

「いい。以前の屋上での戦いで君という獣の牙の大きさは見切った。君じゃ僕を咬み殺せない。」

「何!!」

「まぁだけど、僕の欲求不満のはけ口には丁度いい、肉の塊だ。」

「貴様…!!未だシモンの恐ろしさをわかっていないようだな。」

『よ、よ…欲求不満………、』

いやいや、待って欲求不満ってそういうことじゃないよね。うん、絶対違う…違うはず…。でもアーデルスタイル良いし…そういう可能性も…。なんてくだらないことを考えているうちに話はどんどん進んでいく。アーデルの誇りは炎真率いるシモンファミリーと粛清の志。委員長の誇りは考えなくても何となくわかる。

「誇りでルールを決めるのかい?変わってるね。誇りなんて考えたことないけど…答えるのは難しくない。並盛中学の風紀とそれを乱す者への鉄槌。」

なんとなく生き生きとしている委員長。彼の並盛中への愛には誰も勝てない。そして彼がそれを誇りにしているのだから、そう簡単に譲らないのだろう。戦いは腕章没収戦となった。相手の腕章を先に取った方が勝利というシンプルなルールだ。

「僕は今イラついてるんだ。それを紛らわせられるなら何でもいいよ。」

「では始める!!我が大地の属性は氷河!!」

委員長の雲の属性に対し、アーデルは氷河の属性。彼女は滝を凍らせて崖の下へと降り立った。

「早くもう一匹の小動物を見つけて取り返さなきゃならないものがあるんだよ。手っ取り早く終わらせよう。」

『…!!』

「……小動物、今の君の顔つまらないな。見てて、僕の戦い。」

「!?」

委員長は崖から飛び降りる。いくらなんでも先程ヘリから飛び降りた高さの比にならないくらいの高さから飛び降りるかんて自殺行為だ。しかし彼はうまくロールちゃんの力を使って、下へと降りた。

そして委員長はロールちゃんを形態変化させる。委員長の服装は普通の学ランから改造学ランへ変化する。背には大きく風紀の文字を背負い、裏地には美しい鳥が描かれていた。雲雀…だろうか。わからないけれど、いつもと違う姿に思わず見惚れてしまう。しかしすぐに我に返り、頭をぶんぶんと振って雑念を抑え込んだ。

「それが貴様の…VGか!」

「そうだよ。」

「ゆくぞ!」

こうして委員長とアーデルの腕章没収戦の幕が上がった。