それぞれの生き方

「さあ、腕章没収戦とやらを始めようか。」

「先に言っておく雲雀恭弥。貴様と武器を交えるつもりはない。」

「なんだいそれ?もう降参するの?」

「いいや、勝利宣言だ。」

「面白い。」

アーデルは委員長の攻撃を避けて、自ら滝へと入った。そしてアーデルを中心に氷が生まれ、それはやがて城のような形となった。それは氷河の氷によって硬化コーティングされて、物理攻撃を受けつけない。さらには炎攻撃も効かないという。それが例え綱吉君のX BURNERであっても。

「へえ、咬みごたえがありそうだね。でも君、氷の中に閉じこもっていてどうやって僕の腕章を奪うんだい?」

「奪うのは私ではない。」

「!?」

委員長の周りには多くの氷の人形が生まれた。それは全てアーデルを写したような姿だった。500体ものブリザードロイド。それは1体1体がアーデルと同じ戦闘力を持っているという。

「はじめから貴様に勝ち目など与えない。貴様は出会った頃より気にくわない。か弱い花莉を野蛮な委員会に無理矢理引き入れ、挙げ句の果てには涙を流させた。花莉は私の妹同然。守るのは私だ。」

「………。」

『アーデル…。』

アーデルは私を親友のように接してくれていたが、同時に妹のように可愛がってくれた。同じ歳だから妹というのも変だが、世話を焼いてくれたのだ。

ブリザードロイドが委員長に攻撃を仕掛ける。委員長はトンファーからチェーンを出し、7体のブリザードロイドを一気に切り刻んだ。

「この程度でのぼせ上がるな。たかが7体だ。ブリザードロイドはあと493体。たとえ貴様といえど体力と兵器が必ず底をつく。私に辿り着くことなど絶対に不可能だ。」

「不可能…?君は相手にしてしまったものの大きさにまだ気付いていないね。僕の腕章を懸けてしまったことにもっと覚悟をもった方がいい。」

「何?」

「"風紀"の2文字は何があっても譲らないよ。でも誇りだから譲らないわじゃない。譲れないから誇りなのさ。」

胸のあたりに何かが刺さったような感覚だった。彼の言葉はいつも真っ直ぐで迷っていた私を導いてくれる。

「待ってなよ、すぐに咬み殺してあげる。」

「できるものならやってみろ!」

彼は襲いかかるブリザードロイドの攻撃をはねのけ、着実に数を減らしていく。彼の戦闘スキルは私が想像しているよりもずっと高くて安定感があった。相手をしているのが人間ではない分、加減はしなくてもいいしのびのびと戦っているようだった。そしてついに全てのブリザードロイドを全滅させる。

「あとは君とそれを覆う氷の贅肉を噛み砕くだけさ。」

「それは不可能だ。ダイヤモンドキャッスルは絶対に砕けない。それだけではない!!」

アーデルは再びブリザードロイドを出現させる。しかし彼は眼中にないようだ。

「…なぜだ?なぜ貴様ほどの男が沢田綱吉などにつく。」

「ついてなんていないさ。君こそもう一匹の小動物につく意味あるの?」

「炎真は軟弱な小動物などではない。シモンの悲しみを背負う強い男だ!」

「いいや小動物さ。背負うなんて不釣り合いなことしてるから悲鳴をあげている。」

そんな言葉にアーデルはさらに攻撃を仕掛けた。私は自然と炎真の手を握る力が強くなる。炎真が無理をしているのはきっとシモンの全員がわかっている。それでも戦うのはシモンとシモンの誇りのためなのだ。

「フッ、いくよ。」

委員長はついにダイヤモンドキャッスルに手をかけた。しかし委員長の攻撃でもダイヤモンドキャッスルには傷がつかない。ブリザードロイドを倒しながらダイヤモンドキャッスルを砕こうとする彼の体力は限界を迎えようとしていた。

「一つ君は勘違いをしているよ。小動物は時として弱いばかりの生き物ではない。でなくちゃ地球上の小動物はとっくに絶滅しているよ。小動物には小動物の生き延び方があるのさ。」

『小動物には小動物の生き延び方…。』

委員長はダイヤモンドキャッスルを壊すのは自分ではなくロールちゃんだと言った。するとダイヤモンドキャッスルの内側から何かが大きくなっていく。

「球針態。」

ダイヤモンドキャッスルに打ち込まれたロールちゃんの破片は大きくなり内側から氷を砕いていった。やがてそれはダイヤモンドキャッスルを破壊する。球針態から逃れるため地上へ降り立ったアーデルは、委員長のトンファーを顔にあてがわれ敗北せざるを得なかった。

「終わりだよ。」

「…そんな…。くっ、だが炎真が必ずやシモンを再興し、花莉を守ってくれる。ボンゴレについたことを後悔するだろう。」

「僕はどちらにもついていない。僕のやりたいようにやるし、星影花莉は守られるばかりじゃない。あの子は自分で考えて進んでいける。あれでもずいぶん強くなったんだから。」

『!!…っ、』

「まさに何ものにもとらわれることのない浮雲だな…、結局ボンゴレ大空の雲の守護者というわけか…、」

「その言われ方嫌いだな…。まあ…たしかに空があると雲は自由に浮いてられるけどね。…でも、いずれ大空でさえ咬み殺す。」

彼はアーデルの腕章を奪い取った。

「とったよ。」

『………っく、…ぅ、……っ、』

今までにないくらい奥歯を噛み締めた。じわじわと出てくる涙をどうにかしてせき止めて、溢れないように上を向いた。

胸の辺りが温かいのに、切なくて苦しい。温かさを失った心があの人への気持ちで温度を取り戻していく。ずっと一緒にいる保証なんてないって言ったけど、一緒にいる保証が欲しい。欲張りだと思う。それでも私は、

『委員長の隣にいたい…っ、』