救いたい君に

それは懐かしい夢だった。大切な幼馴染との思い出。優しい記憶。

「花莉、泣かないで。」

『うっ…ひっく、こんな目っ、いらないのに…っ、私だって、望んだわけじゃないのに…っ、』

「…花莉、大丈夫だよ。僕が君を守るから。もう君が泣かなくてもいいように、強くなるから。」

『炎真………っ、』


幼い頃、涙を拭ってくれたのは炎真やシモンの皆だった。この瞳に苦しめられていた私に手を差し出してくれた。初めて私は受け入れられたような気がしてた。でも、違った。私は彼を縛り付けてしまっただけだ。私は結局、優しい炎真達を利用しただけだった。私の弱さのせいで、彼を追い詰めてしまったんだ。

「花莉先輩!!!」

名前を呼ばれて、弾かれるように意識が戻る。声のした方を見れば、綱吉君と隼人君、武君、リボーン君、ランボ君、ナッツちゃんが扉の前に立っていた。

『私…、なんで、』

「今助けますから!!」

私はいつの間にか球体のようなものの中に閉じ込められていた。球体は天井近くで浮いており、皆を見下ろしている状態になっている。脱出を試みようとしたが、まだステラリングは封じられていて外に出ることができない。私の下には椅子に座った炎真がいた。彼の顔は見えないが、すでにシモンリングの覚醒が終わっているようだ。

『炎真!!』

「花莉…、マモル……。ワタサナイ………、」

もう私の声など届かない。彼の心は完全に憎しみに囚われてしまった。もし彼を救うことが出来る人がいるとしたら、きっと綱吉君なのだろう。

『綱吉君…っ、炎真を助けて…っ、』

「勿論です。絶対に助けてみせます。」

「こうなっちまったら話し合いは通じねえ。」

「いちかばちか力ずくでわからせるしかねーな。」

「待って、俺に任せてほしい。」

綱吉君の言葉に武君や隼人君は動揺したが、綱吉君の目には強い意志を感じた。そんな綱吉君を見て、きっとこの子なら炎真を救ってくれると確信した。

「エンマのことは大丈夫。」

「ああっ、それなら頼んだぜツナ!」

「お気をつけて10代目!」

「ありがとう!」

「何言ってんの?あの小動物は僕のエモノだよ。」

『!!』

「ヒ、ヒバリさん!!」

綱吉君達のいる扉の向こうから、私がずっと待ち望んだ彼が現れた。実際に目の当たりにすると、安堵で涙が出そうになった。

「まあ、だけど、君が殺されるの待っててあげるよ。僕にもやることがあるしね。その後で僕が咬み殺す。」

「んなーー!?俺…殺されるの前提ですか?それにやることって………、あ、」

綱吉君はバッと私の方を見たが、すぐに委員長の方へと向き直った。

「…ヒバリさん…すいません。お願いします。」

「君にお願いされる筋合いはない。」

綱吉君は苦笑いしつつも、覚悟を決めて死ぬ気モードになる。そして炎真と綱吉君の戦いが始まった。私はその様子を見守ることしかできなかった。

「さあ、ロール行くよ。」

委員長はロールちゃんの球針態を道標に私の元へと辿り着く。彼はそっと球体に触れて私を真っ直ぐ見据えた。どんな顔をしたらいいのかわからない。彼とこうして会うのは何日ぶりなんだろう。

「…。」

委員長は思い切りトンファーを振るう。しかし私を閉じ込める球体が壊れることはなかった。彼は何度も何度もトンファーを振るう。どうして何も言わないの。いっそ私を責めてくれればいいのに。私はたまらなくなって彼に問う。

『なんで…、なんで何も言わないんですか…!!』

「君に何を言っても無駄だからね。」

『っ、』

わかっていた。これは自分が招いたことだから自業自得なんだ。傷つくなんて間違ってる。それでも委員長の目を見ていられなくなって、俯いてしまった。

「君が大切にしたいものを大切にしたらいい。君と話すのはいつだってできるからね。今君が為すべきことはあれを救うことなんだろう。だったらそうしたらいいさ。」

『……委員長、』

球体は徐々にひび割れていき、彼が追い討ちをかけるように渾身の力で球体にトンファーを振り下ろす。

「君は譲れないもののために前に進めばいい。」

『!!』

ガラスが割れるように、球体はついに壊れた。臆病な私が隔てた壁を貴方はいとも簡単に壊してしまう。俯く私に何度も手を差し伸べてくれる。泣く私の涙を何度も拭ってくれる。貴方は譲れないものが誇りだと言ったけど、だったら私の誇りは大切な人達と、きっとーーー、

「行くんでしょ。」

『はい…っ!』

花莉は差し出された手をそっと握り、球体の外へと出た。そして雲雀は花莉の体を抱きかかえて地上へと降り立つ。

『ありがとうございます。』

私がお礼を言って炎真と綱吉君の方へと向かった。彼等の戦いは激化している。炎真の力によって瓦礫が綱吉君へと向かっていく。

「誰もいない。」

「僕は一人だ…。」

「さみしい…。」

「助けて…!!」


悲痛な声が聞こえた。助けを求めているのは紛れもなく炎真。炎真はずっとずっと苦しかったんだ。どうして気付いてあげられなかったのだろうか。私の弱さが貴方の重荷になっていたのに。

『炎真…!!!』

炎真を救いたい。苦しみから、孤独から、貴方を傷つける全てのものから。