23.4度傾いて

『委員長…大丈夫ですか…!?』

私は委員長に駆け寄り、彼の怪我の具合を見た。そんなに大きな怪我はなく安心した。

「君こそ平気なの。」

『私は大丈夫です。とにかくここから出られる方法探しましょう。』

「そうだね。」

映像から外の戦いが激化していることがわかる。早くここから抜け出さなければ。

「君はこんな状況でも怖くないんだね。」

『…怖いですよ。でも今は委員長がいてくれますから。』

「そう…。」

少し口角を上げた彼はその直後、目を見開く。不思議に思った私は彼に触れようとしたが、彼の体は私の方へと徐々に倒れていく。

『!?委員長…!?』

彼の体重を支えきれず、私は彼と一緒に倒れてしまう。彼の背中に手を回せば何かがぬるりと触れた。恐る恐る自分の手を見ると、そこについていたのは赤色の液体。

『うそ………委員長!?』

委員長を仰向けに寝かせれば、真っ白なTシャツが真っ赤に染まっていた。

「ヌフフ…、」

『!!…D…っ、』

「言ったでしょう。本物を殺せば私が本物になると。」

血の気が引いていくのがわかった。私は委員長の体に手をかざし、治そうとした。しかし委員長の傷が塞がることはない。血はどんどん地面へと広がっていく。

『なんで治らないの……!!嫌…嫌です…っ、委員長…っ!!』

「花莉………、」

掠れた声で名前を呼ぶ彼に、手が震えた。どうしてこんな時に力が使えないの。ステラリングが使えなくても、傷は治せるはずなのに。

『委員長…っ!!しっかりしてください!』

「もう手遅れですよ。貴女は誰も救うことなど出来ない。」

『そんな、やだ…っ、委員長…っ、』

私の震える手を、委員長は血だらけの手でゆっくりと握る。その手は思ったよりも冷たい。

「花莉……逃げ、なよ……、」

『!!』

「早く………、」

「ヌフフ…、案外しぶといですね。さようなら、雲雀恭弥。」

目の前で血飛沫が飛ぶ。私の手を握っていた大きな手は力をなくし、だらりと落ちていった。ふつふつと腹が煮えたぎるような感覚が私の心を埋めていく。もうたくさんだ。

「おやおや、愛しい彼を失って声も出ませんか?」

『…だ……ひ……き…、』

「なんですか…?……!!」

Dは気づいた。大きな力によって幻覚世界が震えていることを。花莉はゆらりと立ち上がり、Dを睨む。

『どれだけ…人の気持ちを踏みにじれば………。』

「何のことでしょうね?」

『もうたくさんです…っ、人の誇りを汚し、皆の気持ちを弄び傷つけて…っ、挙げ句の果てにはこんな幻覚まで見せるなんて…っ!!』

Dの茶番に付き合わされたのだ。傷が治らないのも私が何もできないのだと絶望させる為。こんな手の込んだ幻覚まで見せるなんて相当私の精神を壊したいようだ。

「ほぉ…よく見破りましたね。何故幻覚だと…?」

『委員長は私に逃げろなんて言いません!!それに、簡単に貴方みたいな人に負けたりしない……っ、これは委員長に対しての侮辱っ…!!』

「だったらなんだと言うのです。ステラリングを封じられている貴女はここで終焉を見届けることしか出来ませんよ。」

もう我慢ならない。沢山の人を殺し、炎真達の誇りを汚し、皆の心を傷つけた彼を絶対許せない。

『終焉………?いいえ、終わらせません。絶対に終わらせたりしない……、人の命を軽んじる貴方に…………、』

『絶対負けたりしません!!!』

強い意志に応えるのは、星の輝きだった。