長い長い旅の果て
「ヌフフフ、とうとう見せる時が来たようだ。私のとっておきを!!」
「情けないなD。逃げることがとっておきとは。」
「!」
Dは逃走を図ろうとしていた。第8の属性の炎と彼は言っている。大空や大地の7属性とは異なる炎だろう。復讐者が関与しているらしいがDは多くを語ることはなかった。逃走を図ろうとするDを綱吉君は大地の重力で押さえつける。綱吉君は動けなくなったDを倒すのではなく捕まえて罪を償わせようとした。綱吉君らしいと思った。しかしDは逃走用に溜めていた力を全て肉体に回し、綱吉君と真っ向勝負するつもりらしい。
「加減はしないぞ。」
「調子に乗るな。」
「行くぞ!」
「死ね!!」
2人は目にも止まらぬ速さでぶつかった、はずだった。しかしDは骸君の肉体を捨て、精神となって逃げようとした。第8の属性の炎を使用し、逃走しようとしていたがそれは復讐者によって阻まれた。第8の属性の炎は肉体を持たないものには使うことができないようだ。
「今だぞツナ!」
「ツナ君!」
「ボス!」
『綱吉君!!』
「さあ撃つのです!!」
「終わりだD!!」
綱吉君は腕を構え、Dに炎を放つ。それはDを倒す最後の一撃だった。倒れゆくDから何かが落ちた。それは懐中時計のようだった。綱吉君が言うにはその懐中時計にはT世ファミリーとDが一緒に写った写真があるらしい。
「Dの横に女の人も…、綺麗な人だ…。」
「ネブローサじゃねーな。見たことのねー顔だな。」
「フフ…美しいでしょう…エレナです。」
「D!…まだ生きてる!」
「心配ない。もう戦えるだけの炎を感じません。」
「エレナ…我が生涯を照らす永遠の光…。」
Dは何故今に至ったか過去をぽつりぽつりと話し始めた。Dは貴族だったが、優秀な人間が社会の中心にいるべきだと考えていたそうだ。その考えに共感したのが公爵の娘、エレナさんだったらしい。エレナさんの薦めでボンゴレファミリーに入ったDはボンゴレに愛着を持っていった。しかしT世が平和路線に切り替えて戦力を減らした。そんな時に敵の襲撃を受け、エレナさんを失ったようだ。エレナさんは最期に弱き者のため、ボンゴレと共に。そう言い残して亡くなった。そうして決意した、名を聞いただけで震えあがるほどのボンゴレを創ることを。
「エレナの望み通り。ボンゴレは弱き者達に平和をもたらしたのだ。」
「でも…エレナさんは本当に…そんなボンゴレが好きなの…かな?」
「なっ、」
「人を怖がらせたり力やお金を使って支配することに弱い人の気持ちなんて少しも入ってないじゃないか。」
「なっ、沢田綱吉!貴様にエレナの気持ちがわかるというのか!」
「え!?エレナさんの気持ち…?…わかるよ。」
「な…何だと?」
エレナさんはずっと自分のことを忘れないでいてくれたこと、自分のために生き続けてくれたことを感謝していると綱吉君は続けた。私はずるずると体を引きずり、綱吉君とDの傍に座った。
『気になることがあって…。少し…貸してくれる…?』
「は、はい…!」
私は綱吉君から懐中時計を受け取った。懐中時計に触れた瞬間、頭に懐中時計に刻まれた過去が流れ込んでくる。
「D…!!エレナ…!!」
「!!…ネブローサ…?ネブローサ!!頼む、エレナを助けてくれ!!!」
「!!エレナ…っ、嘘…、」
「貴女の力なら生き返らせることができるだろう!!!エレナを救ってくれ…!!」
「D………っ、出来ないわ………、」
「何故!!貴女は神の使者なのでしょう!?」
「どんな力があっても………、失った命を取り戻すことはできないのよ………っ、」
「そんな………っ、」
「ごめん、ごめんなさいD…っ、ごめんなさい…っ!!エレナを―――、」
『エレナを………救ってあげられなくて………ごめんなさい……、』
「!?」
綱吉とDは驚いた。ポロポロと涙を流し、別人のように謝ったからだ。しかしDはその理由にすぐ気付いた。
「八つ当たりだったんですよ。彼女のように何も救えないと言ったのは…。救えなかったのは私だった…、星影花莉、貴女はネブローサじゃない。ネブローサも、貴女も謝る必要はありません………、」
『!!…わ、たし…、』
「お前は生き過ぎたんだD。安心してエレナの下へ帰ってやれ。」
Dは前よりずっと穏やかで安心した表情となっていた。さらさらと霧になって少しずつ彼が消えていく…。
「お前のやり方を見せてもらいましょう沢田綱吉。ただし名を汚すようなことがあれば許しませんよ。エレナの愛したボンゴレなのだから。」
こうして何年もボンゴレの為に生きたDは、エレナさんの下へと旅立っていった。長く苦しい旅だったのかもしれない。どうか、彼が安らかに眠れますように。そして、エレナさんと再び会うことができますように。
「ツナ!!」
「10代目!!」
「あ!!Dの幻覚空間が解けたんだ!!」
「炎真!!」
「炎真!!」
「アーデル!みんな!復讐者の牢獄から解放されたんだね!!」
そうか、皆帰ってきたんだ。やっとこれで、シモンもボンゴレも本当の意味で友達になれるんだね。
緊張が解け、安心したのかだんだん眠くなってきてしまった。ゆらりと視界が揺れる。瞼を開けていられない。まだ、皆におかえりって、言ってないのに―――、
ゆっくりと瞼を閉じた花莉。彼女の上半身は力が抜け重力に逆らうことなく倒れそうになった。そんな彼女の体をそっと支えたのは、雲雀だった。
「君にしてはよく頑張ったんじゃない。」
安心した表情で眠る花莉を雲雀はそっと抱き上げたのだった。