その愛を嗜んで

目を開けると、そこは星空の世界だった。見覚えがある。ここは私の夢の世界。骸君がいるのだろうか。キョロキョロと周りを見てみるが、骸君の姿はなかった。

「ねえ、」

『っ、』

聞き覚えのある声に、すぐ振り向いた。けれど、私の予想は外れていた。風に靡いていたのは漆黒の髪ではない。色素の薄い髪、蒼い瞳。けれど彼によく似た人だった。

『貴方は………、』

「何の用?」

『えっ、』

何の用と言われても困ってしまう。私を真っ直ぐに射抜くその瞳に困惑した私が映っていた。

「これは君の夢。君が僕に用がなければ、僕がここに呼び出されることはない。」

『そ、そうなんですか…?』

「そう。早くして。」

『えええ、ちょっと待ってくださいね。…あ、』

一つだけ心当たりがあった。継承式の日に炎真が言っていた、ボンゴレT世が初代星空の娘と守護者を無理矢理婚姻させたという言葉。こんな些細なことで私は彼を呼び出してしまったの?なんてご迷惑をお掛けしてしまったんだろう。でも、聞かなきゃ。じゃないと私はきっと彼をここに留めてしまう。

『彼女を…愛してましたか……っ?』

「………………、」

『!ご、ごめんなさい!!私に言う筋合いないですよね!今のは忘れ、…!?』

なんだかいたたまれなくなって思わず下を向くと、顎を掴まれて上を向かされた。ばちりと目があって、彼の瞳から目が離せなくなった。

「分からないの?」

『っ、』

「本当に分からない?」

時が止まったような感覚に襲われた。吸い込まれそうな蒼い瞳が全てを物語っている。どうやら私の杞憂だったようだ。炎真のあの言葉もDが吹き込んだ嘘。それが分かれば十分だった。

『いいえ、ありがとうございます。呼び出してしまってごめんなさい。』

「いいよ、今回は特別だからね。」

ぷい、と顔をすぐにそらしてそっぽを向く彼に思わず笑みが溢れた。

『ふふ、』

「何?」

『いえ、私の知っている人によく似ているので。』

「ふぅん。君はあんまり似てないけどね。彼女はもっと騒々しかった。」

そう言った顔は驚くほど優しかった。本当に彼女を愛しているのだと実感する。

「君は星雲って何か知ってる?」

『星雲ですか…?確か…星が集まってできるものですよね。』

「正解。ご褒美に良い事を教えてあげるよ。一度しか言わないからよく聞いておくといい。」

『は、はい!』

「In un universo di avversità, i due astri rimasero uniti. Questa è la chiave per la vittoria.」

『えっ、えっ、待ってください!?今の何語ですか!?』

「さあね。あとは自力でどうにかして。」

『えええ!?』

さらさらと砂のように消えていく彼の体。彼の言った言葉が何語なのかもわからないしどんな意味を持っているのかもわからない。どうして彼はその言葉を私に教えてくれたのだろうか。

「あれに捕まらないでね。」

『あれ…?』

「…いや、何でもないよ。」

『あっ、アラウディさん…!』

「!」

『ありがとうございました!』

「………笑った顔は同じなんだね。」

『え…………?』

彼は最後にほんの少しだけ口角を上げていた。もうちょっと話していたかったけど、本当に聞きたいことを聞けたから十分だ。ありがとう、アラウディさん―――。

『委員長、』

早く貴方に会いたいです。