紅に身を焦がす

「えーと、ホハハッ!今度こそ説明は終わりです。」

最後までなんとも言えない空気感で説明をした尾道さんだったが、とりあえず虹の代理戦争がどういったものになるのかは理解できた。

「ハハッ!!あと一つ忘れておりましたフヒッ!!星空の娘、花莉様ですが…。」

『は、はい。』

「虹の代理戦争での戦闘は一切禁止となりますヒヒッ!」

『どうしてですか。』

「フフ、あくまで中立の立場ですので誰か特定のチームに味方することはフェアではないと。」

『…わかりました。』

「では私は帰らせていただきます、フフ。」

「ボスさんよぉ。行かせていいのか。」

スクアーロさんの言葉にXANXUSさんが何か答えることはなかった。尾道さんはこの場を去り、リボーン君達は同盟について考えていた。しかしマーモンちゃんとリボーン君の交渉は決裂。ディーノさんはやっぱりか、という顔で苦笑いしていた。

「とりあえず行くか。ツナ、花莉。」

「待て、そいつを置いていけ。」

『そいつ…?』

綱吉君?なんて思ってXANXUSさんの方を見るとばちりと合う視線。瞬時に私のことだと理解した。

「置いていくわけないだろ!」

「…、」

『ディーノさん、たぶん大丈夫です。』

「大丈夫ってお前…膝すげー笑ってるぞ。」

『きっ気のせいです!!』

本当はすごく怖い。彼に平手打ちをした前科があるため恨みを買っていてもおかしくない。だがここでゴチャゴチャと揉めるのも面倒なのだ。私はXANXUSさんの元へ残り、出ていく他の人の背中を見送った。

「来い。」

『は、い…。』

畳に散らばる天井の破片を避けて、XANXUSさんの側にしゃがんだ。すると彼は私の腕を引き寄せ、私の顎を掴んだ。思ったよりも近い距離に顔に熱が集中する。鋭い赤い瞳から目が離せなくて、体がぶるりと震えた。

「見ねー間に色々あったようだな。」

『そ、そうですね。あ、あの、まず離してくださると…、』

「何の為にその力を使う。」

『………変わらないですよ。ずっと。』

「…、」

『私は守りたいから使うんです。誰かが傷つくところなんて見たくない、所詮エゴでしかないんですよ。』

「フン、悪かねえ。」

腰を抱かれて先程よりも強く引き寄せられる。もう唇が触れてしまうのではないかとヒヤヒヤする距離だ。私は片手で彼の肩を押すが、何の意味もなかった。

「俺の傍にいろ、花莉。」

『それはどういう…、』

「わからねーか?」

耳元で囁かれてぞくりと背中が震える。ダメ、XANXUSさんのペースに流されてしまう。獰猛なこの紅の瞳に捕われて逃げられなくなっていく。

『あのっ、XANXUSさん!私には好きな人がいてですね…!!』

「だからなんだ。」

『え、あ、だからこういうことは困る…んですけど……、』

「関係ねえ。奪うだけだ。」

『えええ!?』

私の勇気あるカミングアウトは特に意味をなさなかった。それどころか彼の中の何かに火をつけてしまったようで、彼は楽しげに口角を上げている。

『困りますよおおお。』

「黙って俺だけ見てりゃあいい。」

その後しばらくXANXUSさんに捕まり、スクアーロさんが来るまで離してはもらえなかった。あの情熱的な赤い瞳を思い出す度、体が熱くなってしまい本当に困った。結局ディーノさん達と合流後もヴァリアーと食事を共にすることになり、いつもよりも賑やかな時間を過ごすこととなったのだった。