内に秘めた力

沢田君の言葉にリボーン君の相棒、レオンは羽化をした。どうやらレオンは沢田君のためにアイテムを吐き出してくれると言う。レオンは骸さんに寄って真っ二つに切り裂かれてしまったが、無事らしい。そして、アイテムがぽふんと沢田君の顔に落ちてくる。

「毛糸の手袋〜〜!!?こんなんでどーやって戦うんだよ!?エンツィオとか武器出るんじゃないのかよ!?手の血行良くしてどーすんだよ!!」

沢田君の的確なツッコミに思わず笑いそうになった。あの手袋にどんな効果があるのか未知数だ。そして沢田君は手袋の中に弾があることに気づく。リボーン君はそれを受け取り、撃とうとしたが、その瞬間沢田君はダイナマイトの爆発に巻き込まれてしまう。

『沢田君!!』

「万事休す−−−、あっけない幕切れでした。さあ、虫の息のその体を引き取りましょう。」

『っ、』

私は痛む体に鞭を打ち、沢田君の前に立ちはだかった。体が震えているのが自分でもわかる。でも、年下の子がこんな思いをしているのに何もしないなんて出来ない。

『もう、やめてください。』

「貴女には関係のないことだ。そこを退いてください。」

『退きません…っ!!並中の生徒が傷ついているのを黙って見ているわけにはいきません!!』

恐怖がキャパシティを超えて涙が溢れてきた。そりゃそうだ。こんな命に関わることに巻き込まれてしまったんだから。逃げてしまいたい。皆を見捨てていっそ逃げてしまいたいのに、それが出来ないのは、あの腕章を彼から受け取ってしまったから−−−、

「………またそれですか。やむを得ませんね、全てが終わったら治療してあげます。」

『っ、』

骸さんが剣を私に振り下ろす。これからくるであろう痛みを覚悟し、ギュッと目を瞑った。しかしいくら待っても痛みが訪れることはない。そっと目を開ければ、ある男の子が私の前に立っていた。

『沢田君…?』

「骸…お前を倒さなければ……死んでも死に切れねぇ。」

沢田君の毛糸の手袋は、グローブへと変化していた。それに良く見えないが、彼から炎が灯っている。

「ありがとう花莉。リボーン、花莉を頼む。」

「お前に言われなくてもわかってるぞ。花莉、離れとけ。」

『あれは沢田君なの…?』

「ああ、さっき撃った小言弾はツナの静なる闘志を引き出すんだ。死ぬ気弾とはまるでちがうまったく新しい力を秘めた弾だからな。」

「フッ、僕には戦意喪失し、意気消沈しているようにしか見えませんがね。どのみち僕の能力の前では君は敵ではない。」

骸さんは沢田君に攻撃を仕掛けるが、沢田君はそれを受け止め、反撃をする。気弱な彼からは想像できない戦い方だった。幻を見抜き、見えないはずの敵に一撃を落とす。

「バカな…奴は地獄道の幻覚を見破れなかったはず…。」

「これこそ小言弾の効果だぞ。ツナの内に眠る"ボンゴレの血<ブラッド・オブ・ボンゴレ>"が目覚めたんだ。」

『"ボンゴレの血"…、』

よくわからなかったが、とにかく沢田君の内に秘めていた力が目覚めたようだ。彼は仲間である獄寺君とビアンキさんの攻撃をいなしながら、2人の体を守って戦っていた。そして、ついに2人の体を取り戻すことが出来た。

「出てこい骸。生きてるんだろ?」

「クフフ…、」

骸さんは自らの体に戻り、妖しげに笑っていた。彼にはどうやらまだ発動してきない危険な能力があるようだ。彼自身が最も嫌う能力と言った。骸さんは自らの右目に指を入れ、ぐちゅりと抉った。そして、その右目に刻まれていたのは五の文字。彼からどす黒い何かが溢れ出ている。

とうとう、この戦いも終わりを迎えようとしていた。