守りたい居場所

ボンゴレの血<ブラッド・オブ・ボンゴレ>が目覚めた綱吉と骸は死闘を繰り広げていた。綱吉の勝利を花莉は祈ることしか出来なかった。

「ウォーミングアップはまだ終わらないのか?」

「くっ、………クフフ……クハハハハハハッ!!ここまでとは嬉しい誤算だ。君の肉体を手に入れれば知略を張り巡らさずとも直接ファミリーに殴り込み、マフィア間の抗争を起こせそうだ。」

「!」

「マフィア間の抗争がお前の目的か。」

「クフフ…まさか…僕はそんなちっぽけな男ではありませんよ。僕はこれから世界中の要人の体を乗っ取るつもりです。そして彼らを操り、この醜い俗界を純粋で美しい血の海に変える。世界大戦…なんてベタすぎますかねぇ。」

『せ、世界大戦…っ?』

どんどん大きくなっていくスケールに体がゾッとした。そんなことまで考えているなんて思わなかった。

「だが手始めはやはりマフィア−−−、マフィアの殲滅からだ。」

『!』

今のは、悲しみ…?それとも怒り…?今までのどの顔も当てはまらない。そんな表情をしていた。胸の辺りがギュッと締め付けられるような、そんな感覚になる。

骸さんの分身のようなものが沢田君に向かっていく。彼は幻だと確信し、動かなかったが、その幻にはつぶてが仕込まれており、それが顔に直撃した。顔を手で覆う沢田君に骸さんが迫っている。しかし、沢田君はグローブに灯した炎で見事に骸さんを倒した。

「殺せ。君達マフィアに捕まるぐらいなら死を選ぶ。」

「俺にそんなことはできない…。」

力を手に入れた沢田君の本質は変わらなかった。彼は優しい男の子だ。誰かの命を奪うような子ではない。

「その甘さが命取りだ。」

『沢田君!』

「骸、お前…!」

骸さんに腕を拘束された沢田君は、骸さんに蹴り飛ばされてしまう。飛ばされた先にあったのは壁に埋まった剣だった。あれに刺されば彼は乗っ取られてしまう。しかし沢田君は間一髪のところでグローブの炎を逆噴射し、空中でピタリと止まった。そしてその炎を使い、とてつもない速さで骸さんの元へと向かった。沢田君は炎の灯ったグローブで骸さんの顔を掴み、最後の力で壁へと叩きつけた。

倒れた骸さんからはもうどす黒いオーラは出ていなかった。そして、三叉槍も音を立てて壊れ、そのカケラが膝の上に落ちてきた。私はそれを強く握りしめ、リボーンと一緒に沢田君の元へと駆け寄る。

「終わったな。」

「うん……、」

ボンゴレの医療班も敷地内に到着し、すぐに来てくれるそうだ。やっと終わったのだとホッとしたけれど、倒れている骸さんが気がかりだった。

「近づくんじゃねぇびょん!!マフィアが骸さんに触んな!!」

城島君ともう1人の男の子がズルズルと這い蹲って、近づいてきていた。骸さんに散々体を好き放題使われていたため、彼等はもう歩く力すら残っていなかった。何故そこまで骸さんに拘るのかと沢田君は聞いた。すると城島君からはあまりにも酷く、凄惨な過去と六道骸という救世主の話が語られた。人体実験をされ、大人の勝手な都合に弄ばれ、いつ死ぬかわからない明日を怯えながら待っていたんだ。

「でも…俺だって…仲間が傷つくのを黙って見てられない。だって…そこが俺の居場所だから。」

「ぐっ!」

城島君も守りたい居場所があるから、沢田君の言った言葉に反論が出来なかった。どちらにも守りたい居場所があって、譲れないからぶつかり合ってしまったのだろうか。

「あ!」

「医療班が着いたな。」

人影が遠くから見え、医療班かと思ったが違った。それは禍々しく人の形をした"何か"だった。骸さん達3人に首輪を付け、ズルズルと闇は引きずり込み、消えていった。リボーン君によると、マフィア界の掟の番人らしい。法で裁くことの出来ないものを裁くと言った。彼等は一体どうなってしまうんだろう。

「おまたせしました!」

「ケガ人は!?」

医療班がやっと到着し、ケガをした皆を運び始める。委員長も無事運ばれていった。

『あっ!』

「どうしたんですか星影先輩。」

『腕章!失くしたら咬み殺される!』

私は腕章と制服を探しにいった。奥の部屋へと進むと制服と腕章を見つける。ワイシャツから腕章を外し、大事に持って沢田君の元へと戻った。すると沢田君は体をとても痛がっていて、半泣き状態になっていた。

『だ、大丈夫?』

そっと彼の腕に触れると、その瞬間触れた部分が少しだけ温かくなった。

「あれ?腕の痛みが消え…って他の場所がいでーーーー!!…がっ、」

「…!あまりの痛みに気を失いやがった。がっつり鍛えねーとな。…花莉。」

『ん?』

「巻き込んで悪かったな。」

『えっ、いや、私が考えなしに委員長追いかけてきちゃっただけだから…!足引っ張ってごめん…なさい……。』

「謝んな。…お前には色々話さなきゃいけねーな。」

『いやいや!大丈夫!何も見てない!』

「…、」

『何も見てないし!何も聞いてない!』

「それがお前の選択か?」

『う、うん…、もうこんな怖いのは嫌だから…!だから何も話さないでもらえると…助かります…。』

「そうだな。お前がそれでいいならいい。」

『ありがとうリボーンく、ん………。』

花莉は安心からか、事切れたように意識を失い、ゆっくりと倒れてそのまま眠りについた。そんな彼女の額をリボーンはそっと撫でる。

「花莉。悪いが、いつかお前を巻き込まなきゃいけねー時が来る。フィリア……デッレ……、」

そう呟いたリボーンも深い眠りについたのだった。こうして、並中生襲撃事件の幕は降りた。