夕焼けに君を想う

*雲雀side*

夕日の眩しさに目が覚めた。外はもう日が暮れかけていて、空を橙色に染めている。ベッドのリクライニングを起こし、掛け布団を少し剥いだ。

先ほど食べた林檎は綺麗に片付けられていた。彼女が片付けていったのだろう。何を為すのも彼女の仕事ぶりは丁寧で、的確かつ迅速だ。その点に関しては評価している。実際に風紀委員の業務も卒なくこなし、事務作業を安心して任せることが出来るので、僕も業務を滞りなく行うことができる。

彼女に会ったのは偶然だった。校則違反をしていた彼女に話しかけたのがきっかけだ。よく見なければわからない色付きのコンタクトを指摘すれば彼女は流れるように土下座をした。どうやら彼女がそれをつけるのは理由があったようだった。それは瞳の色だった。黒いコンタクトを外せばそこから覗くのは星空。息を飲んだ、何故彼女はこの美しい星空を隠すのだろうか。だが、これを他の者に知られるのは惜しい。そう思った僕は彼女を無理矢理風紀委員に引き込み、その星空を手にした。

「ヒバリ!ヒバリ!」

一羽の小鳥が僕の肩に乗った。黒曜に行った時に懐いた鳥だった。そっと頭を撫でてやれば、その鳥はすりすりと頬に寄ってくる。

「君のせいで音痴だと思われたよ。」

そう言ってもわからないだろうけど。
彼女は普通すぎる。勉学も並、運動も並。どこにでもいる生徒だ。話していると呆れるくらい阿呆だと感じることもある。群れるのは嫌いだ。ずっと1人でいい。だけど彼女といると心地よかった。彼女の方も一定の距離感を持って接してくる。僕の意見に逆らうこともある数少ない人種だ。弱いくせに機転が利く。賢い生き方をしているんだろう。そんな彼女を傍に置いておくのは悪くないと思った。腕章を渡した日からあれは僕のものだ。誰にも渡さないし、逃がしもしない。

「ヒバリ!」

「君は早くちゃんと校歌覚えて。また教えてあげるから。」

いや、彼女が歌っているのがいいな。歌声が透き通って、鈴のようだった。子守唄のように優しく歌うものだから、すぐに眠りに誘われた。また聴きたいと思うのは当然だろう。

『委員長に傍にいてほしくて…、』

頬を赤く染めて、気まずそうな姿を見せる彼女をいじらしいと感じた。正直、彼女からそんな言葉が出るとは思わなかった。最初はうさぎのようにびくびくと震えていたのに、随分と懐いたものだ。これだから彼女には飽きない。

『委員長!』

もうあの声が聞きたくなってしまったなんて、相当彼女に毒されているようだ。