繋がった夢
*???side*
「取るに足らない世界だ。」
僕はそう吐き捨てた。諦め、という言葉が正解なのかはわからない。だが見限ったのは確かだった。己の都合で弱い者を虐げ、蹂躙し、捨て駒のように扱う醜悪の塊。あれを人間というのだから笑ってしまう。
ああ、ほら。僕が自ら屠った者の手が伸びてきた。報いを受けろと言うように。十分過ぎるほど苦しみを味わってきた。勝手な大人の都合で、体を弄られ普通ではなくなった。いや、これは復讐するための贈り物だったのか。それならば感謝しよう。この取るに足らない世界に復讐出来るのなら喜んで地獄へ行こう。
多くの血濡れた手に暗闇へと引きずりこまれる体。どうでもよかった。その先が地獄だろうが無だろうが。ただ、心に僅かに残った何かが、僕の手を動かす。まるで助けを求めるように天へと手を伸ばした。馬鹿馬鹿しい。誰も掴んではくれないのに。
伸ばした手すらも手首ほどまで沈んだその時だった。誰かが僕の手を掴み引っ張ったのだ。その瞬間暗闇は消え、視界に広がったのは美しい星空だった。何故、僕は抱き締められているのだろうか。柔らかく、か細い体から私を抱き締めているのは女性だと判断した。いつの間にか僕の夢と彼女の夢が繋がってしまったらしい。こんなことは今までになかった。
「これが貴女の世界なのですね。」
そう言うと、彼女は僕から体を離す。どんな表情をしているのだろうか。少しだけ興味が湧いた。風が吹き抜け、彼女の黒い髪を揺らした。その隙間から覗いた瞳は、まるでこの世界と同じ星空のようだった。こんな美しい瞳を持っているのだ。必然的にこの世界もそうなるだろあう。
「貴女の瞳のようだ。」
美しい世界だ。私とはまるでかけ離れた世界。彼女に触れたくて、頬に手を滑らせた。すると、彼女はそっと僕の手に自らの手を重ねた。温かい手だった。こんな気持ちになるのは初めてでどうしていいかわからなかった。彼女は少し目を伏せて、静かに涙を流す。何故、
「何故、泣くのですか。」
二つの星空から宝石のような雫が流れていく。美しいと思う反面、その雫を流さないでほしいと感じた。こんな気持ちになるなんて、まだこんな人間らしいところが残っていたのかと笑ってしまう。
「泣かないでください。」
指先が砂のように崩れていく。どうやら時間切れのようだ。これきり、なんてとんでもない。貴女のことをもっと知りたくなってしまったのに。
一歩彼女から離れ、この時間が終わることを惜しんだ。僕をこんな気持ちにさせたのだから、彼女には責任を取ってもらわなければ困る。
「貴女を必ず見つけてみせます。覚悟していてください。」
いつか必ず、その星空を手に入れてみせますよ。
***
「骸さん今日はなんれそんなにご機嫌なんれすか?」
「クフフ…、今朝いい夢を見たんですよ。とてもいい夢をね。」
「骸様、あと少しで日本です。」
「そうですか。楽しみですねぇ、早くボンゴレに会いたいです。」
一度繋がったものはそう簡単に断ち切れるものではない。
だからこそ、あの星空をもう一度見ることができる気がした。
いつか訪れるその日まで−−−、