立ち上がる日輪
『行きたくない…。』
時間は午後23時前。重い足取りで闇夜を歩き、並盛中へと向かう。ついにこの時が来てしまった。私はこれから戦いを見届けなければならない。戦いのことを考えれば考えるほど足が重たくなっていく。普段徒歩10分で並盛中に着くはずがかれこれ20分以上かけて歩いている。それほど嫌なのだ。
『着いちゃった…、』
「あっ、花莉先輩!」
「おせーぞバカ女!」
「まぁまぁ。いいじゃねーか!」
並盛中に着くと、綱吉君、リボーン君、ランボ君、隼人君、武君、笹川君の6人の姿があった。1人ではないのだと少し安心してしまう。それでも、これから起こることを想像するのため息が止まらない。
『遅れてごめんね。私が最後かな?』
「うーん、ヒバリさんは来なさそうだからね。霧の人もいないし。」
『委員長が来たら咬み殺されるよ。』
「ハハッ、だなっ!」
「し…静かだね…本当に並中でよかったのかな…、」
「やつら、まだ来てねーのかな。」
「とっくにスタンバイしてますよ。」
「!…上だ!」
私達しかいないと思ったら渡り廊下の柱の上に審判の2人とヴァリアーの人達がすでに揃っていた。
「厳正なる協議の結果、」
「今宵のリング争奪戦の対戦カードが決まりました。」
「第1戦は、晴れの守護者同士の対決です。」
審判とヴァリアーは下に降りてくる。ついに始まるのか。指輪を賭けた戦いが。
第1戦は笹川君が戦うようだ。そしてヴァリアー側からはオカマのような人。戦う場所は並盛中の一角に用意された特設リングだという。
『あの!』
「どうしましたか花莉様。何かご不明点でも?」
『こっ、このリング、ちゃんと撤去してくれますか!?』
「もちろんです。我々が責任を持って撤去させていただきます。」
『良かった…、委員長に咬み殺されるところだった…。』
「こんな時まで咬み殺される心配!?」
綱吉君が若干引いていたがこの確認だけは怠ってはいけないのだ。どんなことがあろうと私は並盛中の風紀委員なのだから。
「なあツナ、円陣とか組まねーの?」
「そいつは燃えるな!一度やってみたかったんだ!」
武君の言葉に嫌な予感がし、私は一歩後ずさったが、時すでに遅し。武君に腕を引かれ、円陣に巻き込まれた。隼人君も綱吉君も私と同じで恥ずかしそうだ。
「了平ーーーーッ、ファイッ!!」
「オー!!」
「『おーー…、』」
「…、」
ああ、恥ずかしすぎる。この歳になってこんな青春みたいなことするなんて。円陣を組み終わると笹川君はリングへと上がっていった。
「では晴れのリング、ルッスーリアVS.笹川了平。試合開始!」
開始の合図の直後、リングのライトが点灯し、目を開けてられないほどの眩しさに襲われた。
「花莉、サングラス貸してやる。」
『つけなきゃダメ、だよね?』
「花莉、お前はここに来た以上この戦いを見届けなきゃなんねーんだ。わかるな?」
『…うん。』
私はリボーン君からサングラスを受け取り、目の前で繰り広げられる戦いから目を背けようとするのはやめた。
ルッスーリアさんはサングラスをつけているため、サングラスをつけていない笹川君よりも優位な立場にいた。笹川君の鳩尾に入るキックや容赦ない左ストレートのパンチ。リングを囲うロープは何百度の電熱の鉄線。そこに当たってしまう笹川君は苦しそうに叫んだ。
『…っ、』
怖い、見たくない。冗談抜きの殺し合いだ。骸君の時とはまた違う状況で、私は友達が傷つくのを見ていなければならない。追い込まれていく笹川君は、ルッスーリアさんのひざに埋め込まれた鋼鉄によって腕を負傷してしまう。挙げ句の果てにはライトの熱による脱水症状が始まってしまった。
「立てコラ!!」
「コロネロ!!」
『赤ちゃん…?』
「京子に捕まって遅れたぜ。」
鷲に運ばれてきた赤ちゃんはサングラスをつけて登場した。そういえば最近京子ちゃんが、赤ちゃんが家にいると言っていたような。そんなことを思い出した。
コロネロ君は笹川君を叱咤し、それに応えるように彼は立ち上がった。そして先程までとは少し雰囲気が変わり、真っ直ぐに拳を構える。そして右手で撃った拳はルッスーリアさんの顎下から突き上げる。ルッスーリアさんにダメージは少なかったが、頭上のライトが割れた。どうやら汗が結晶化し、その塩をライトに当てたらしい。常人には出来ない技だ。これで彼は目を開けてられる。
だが同じことをルッスーリアさんはいとも簡単にやってのけた。ヴァリアーは殺しの天才集団。その能力の高さをヴァリアークオリティと言うようだ。笹川君はそれでも右拳を撃った。そのパンチはまたしても膝の鋼鉄によって阻まれてしまう。もう彼は限界を迎えようとしていた。
「お兄ちゃん…?」
『京子ちゃん!?花ちゃんも…!』
何故かこの場に京子ちゃんと花ちゃんがやってきた。彼女達はコロネロ君を探しに彷徨っていたらしい。リングの上でボロボロになる笹川君に、京子ちゃんは駆け寄った。
「お兄ちゃんやめて!喧嘩はしないって約束したのに!」
「…ああ、たしかに額を割られた時…もうケンカはしないと約束した…だがこうも言ったはずだ…、負けんと……!」
立ち上がる彼に涙が溢れた。もう体もボロボロで、痛みもあると言うのに何故そんなに強く立ち上がれるの。何故逃げないの。私には分からなかった。
「極限<マキシマム>!!」
彼の右拳が真っ直ぐに撃ち抜かれる。
「太陽<キャノン>!!!」
その拳は見事にルッスーリアさんの鋼鉄を打ち破り、彼を重症までに追い込んだ。それを見たコロネロ君は京子ちゃんの手を引いて、花ちゃんと共に帰っていった。ルッスーリアさんはまだ戦えるといって立ち上がる。その様子はどこか焦っていて、そして怯えているようだ。直後、ルッスーリアさんは背中に攻撃を受けて、倒れた。彼の背中は大量に出血している。
『あ………あぁっ………!!!』
彼を攻撃したのは笹川君じゃない。ヴァリアー側だ。何故仲間なのにそんなことが出来るの。
こんなに血が、まっかなちが−−−、
「花莉!」
『はっ…ぁ、り、ぼーん、くん、』
「しっかりしろ。大丈夫だ。」
ぺちぺちとリボーン君に頬を叩かれる。衝撃な光景に思わず意識を飛ばしかけてしまったようだ。私は自分の頬をぱちんと叩き、リングの方を見た。
「たった今、ルッスーリアは戦闘不能とみなされました。」
「よって晴のリング争奪戦は笹川了平の勝利です。」
勝って嬉しいはずなのに誰もが喜ばなかった。いや喜べるはずがないのだ。
「それでは花莉様。こちらへ。」
私は特設リングに上がり、笹川君のハーフボンゴレリングとルッスーリアさんのハーフボンゴレリングを受け取った。カチリと一つのリングにし、笹川君の指にはめようとしたが、手が震えてしまう。
「星影、」
『ご、ごめん…震えちゃって、』
「恐怖することは悪いことではない。だがいつか自分に打ち勝て。お前ならやれる。」
『!…うんっ。』
笹川君の言葉に少しだけ震えが収まった。彼に指輪をはめて、力強い目を見た。傷だらけでも、何度も立ち上がった貴方に勇気をもらった。ありがとう笹川君。
「今宵の勝負はこれで終わりますが、今回より決戦後に次回の対戦カードを発表します。」
「え…!もっ、もうわかっちゃうの〜〜!?」
「う"ぉぉい!次は俺にやらせろぉ![
「それでは発表します。明晩の対戦は…雷の守護者同士の対決です。」
「雷ってランボじゃん!こいつ戦えんの〜〜!!?」
「それでは明晩お会いしましょう。」
ヴァリアーはルッスーリアさんを回収し、この場を去っていった。リングを囲う鉄線はガラガラと崩れていき、ただの鉄くずへと変わった。本当に綺麗に撤去してくれるのだろうか。
こうして、晴の対決は終わりを告げた。明日は雷の対決、どうかランボ君が大怪我をしないように祈ることしかできなかった。