貴方のそばに帰りたい
「レヴィ隊長!正体不明の侵入者は真っ直ぐにここに向かっています!」
「おのれ!何者だ!」
「どんなハエがくるのか楽しみだね。」
止まらない冷や汗。私の嫌な予感はよく当たる。今怒涛の勢いでここに向かっているのは、まさかあの人ではなかろうか。
「花莉先輩大丈夫っすか?顔真っ青っすけど、」
『だ、大丈夫だよ武君…。』
「ぐあぁっ!」
どしゃりとレヴィさんの部下がやられた。そして、横から出てきたのはやはりあの人だった。
「ヒバリさん!」
私は今までにない速さで膝を折り、地面に頭をつけて土下座をした。やばい、やばすぎる。こんなボロボロの校舎を彼は見てしまった。
「う"ぉぉい!!!なんでお前は土下座してんだぁ!!」
「校内への不法侵入、及び校舎の破損。連帯責任でここにいる全員咬み殺すから。」
「なっ、俺達もかよ!」
「星影花莉。これは一体どういうこと?君がいながらこの有様は何。」
『ひいっ!違うんです委員長!!私はやめてと言ったんです!!!でも綱吉君達が勝手に!!』
「容赦なく俺達を見捨てたー!!」
「むむ…むこうの守護者ではないのか?それに委員長って、花莉がレヴィにボコボコにされた時に言ってたやつのことかい?」
「むっ!?」
『ぎゃっ!マーモン君それは今言うのやめてー!』
私は恐ろしくて委員長の顔を見ることができなかった。校内を好き放題させてしまい、この間はレヴィさんに委員長の足元にも及ばないと言った。
「なんで君はそんなに怪我だらけなの?なに僕の許可なしに怪我してるの?」
『こ、これには深いわけが…、』
「あなたは沢田氏側のリング保持者ですか?でしたらこのような行為をされては…、」
「どけチェルベッロ!奴はただの不法侵入者だ!!」
レヴィさんは委員長に向かって走ってくる。その手には武器を構えているが、委員長はレヴィの足を引っ掛けた。簡単そうに見えるが、きっと素人には出来ないのだろう。レヴィさんには悪いが少しスッキリした気持ちになった。ありがとうございます委員長。
「できる…!何者なんですか?」
「奴はうちの雲のリングの守護者にして並中風紀委員長、雲雀恭弥だ。花莉の上司みてーなもんだな。」
「花莉様の…!」
「う"お"ぉい!!!貴様、何枚におろしてほしい!!」
「ふうん、次は君?」
ああ、委員長スイッチが入ってしまっている。これだから戦闘狂は…!しかも校舎が壊れて苛立ってるから余計好戦的だ。
委員長とスクアーロさんは審判に止められていたが、委員長はやる気満々だ。それに対し、武君が止めに入るが、委員長はトンファーを振り下ろす。しかし武君は委員長のトンファーを避け、握って止めた。
「そのロン毛は俺の相手なんだ。我慢してくれって。」
『あぁあ…火に油…、』
「邪魔する者は何人たりとも咬み殺す。」
委員長の目の前に立ちふさがった武君に対し、委員長は相当お怒りだった。もうだめだ、奥の手を使うしかない。私は委員長のそばに走り寄り、ベストの裾を掴んだ。
『い、委員長。』
「君も邪魔するつもり?」
『今度、校歌歌いますから。今はやめてください。校舎もちゃんと直ります。』
彼の耳に手を当て、委員長にしか聞こえない声で耳打ちした。委員長は私が校歌を歌うことをとても気に入っていた。自意識過剰のようだが、実際そうなのだ。何度か怒らせたことがあった時にはこの方法で許してもらったことがある。今これが効くかは不安だが。
「今がいい。」
『今は他の人がいるので、委員長と2人になった時に歌いますから。…ね?』
「…、」
まずい、悩んでるな。この方法を何回か使ってるため効果が薄れてきたようだ。あと一押しあればいいのだが。
「ちゃおっスヒバリ!」
「赤ん坊かい?悪いけど今取り込み中なんだ。」
「ここで暴れちまってもいいが、でっけえお楽しみがなくなるぞ。」
「!楽しみ…?」
「今すぐってわけじゃねーが、ここで我慢して争奪戦で戦えば、遠くない未来、六道骸とまた戦えるかもしんねーぞ。」
「…ふうん、本当かな。」
リボーン君の言葉に委員長はトンファーをおろした。ひとまず脅威が去ったことに安心する。リボーン君の言葉がなければ武君が咬み殺されるところだった。
「校舎の破損は完全に直るの。」
「はい、我々チェルベッロが責任をもって。」
「そう…気が変わったよ。…僕とやる前にあそこの彼に負けないでね。」
「え…、」
委員長は武君に背を向け、私を見た。
「帰るよ星影花莉。」
その言葉にハイと答えたいのに、それが出来ない。私は今委員長といられない。
『ごめんなさい、今日は委員長と帰れないんです。あと、しばらく学校に行けないと思います。』
うまく笑えているだろうか。せっかく久しぶりに委員長に会えたのに、私は今日もヴァリアーの元へ行かなければならない。いや、綱吉君達が負けてしまえば、永遠にXANXUSさんの傍にいなければならないんだ。そうしたら委員長にもう会えなくなってしまうかもしれない。
「…、」
「ヒバリさん、あのっ、」
「…わかったよ。…花莉、」
『!』
「僕が言った言葉、忘れないでよ。」
「君が誰であろうと、なんであろうと、誰にも渡さない。君は僕だけを見ていればいい。」
『っ、はい!』
委員長は私の頭をポンと撫でて、去っていった。少し寂しいけれど、私の心は十分満たされた。
「う"お"ぉい刀小僧!!貴様その動きどこで身につけたぁ!?気に入ったぞぉ!!これで貴様らの勝つ可能性は0%から…やはり0%だぁ!!明日が貴様らの最後!首を洗って待つがいい!花莉!」
『……はい。』
「花莉先輩…!」
『武君、明日頼んだよ…!』
「!…うっス!!」
私は綱吉君達の側を離れ、スクアーロさんの元へ戻った。スクアーロさんは私を担ぎ上げ、この場を後にした。またあの場所に戻らなければならないのかと思うと不安な気持ちになった。今日は委員長に会ったため余計に寂しくなってしまう。
『委員長…、』
私がぽそりと呟いたその言葉が、スクアーロさんの耳に届いたのかは分からなかった。