不確かな感情
*XANXUS side*
興味などない。俺の踏み台になっていればいい。そう思っていた。だが、あいつはその瞳で、俺をまっすぐ見据えた。
『これで、満足ですか。』
『私は…誰かが傷つくところを黙って見ているだけの、名ばかりのお飾りなんていらない…!こんな地位、欲しけりゃくれてやりますよ!!』
笑いが溢れた。圧倒的な権力と力を失うことすら恐れず、たかが餓鬼1人のために自らを犠牲にして戦いに乱入した馬鹿な女。一般人として過ごしてきたこいつは、生ぬるい感情しか持ち合わせていない。この世界には不似合いな女だ。ベッドで小さくなって寝る女はどこか安心しきった表情をしていて、無防備そのもの。よくこんなところで眠りにつけるものだ。この女にとってここは敵の巣窟でしかないというのに。
「ボス。」
「入れ。」
「わかったよ、あいつがどこのファミリーか。」
「スクアーロとレヴィを連れて根絶やしにしてこい。」
「了解。花莉は?」
「ここだ。」
「なんでこんなアホ面晒して寝てるの?信じられないね。じゃ、行ってくるね、ボス。」
暗殺集団の中で眠ることの出来る一般人はこいつだけだろう。肝が座っているのか馬鹿なのかはわからない。俺達に怯えながらも、負けじと接するその姿はなかなか度胸があると感じた。ただ守られようとする弱い女よりよっぽど価値があると判断した。その判断は今でも間違っていない。
『ん…ぅ、』
女は身じろぎ、眉間にしわを寄せたと思ったら、固く閉じられた瞳から涙を流した。先ほどの出来事が余程恐ろしかったのだろう。女に跨る男を見て一瞬だが感情が高ぶった。それは所有物に手を出された時の感覚。カス以下の分際で俺のものに触るなど分不相応。
「カスが…、」
胸に渦巻くこの感情は必要のないものだ。俺は頂点に立つ。あの老いぼれに復讐を、カスどもに絶望を。この女はその踏み台、必要なものだ。誰にも渡さねぇ。
「…………………花莉。」
この女の涙を拭ってやるのは、ほんの気まぐれに過ぎない。