眠り姫
次は霧の守護者の勝負だと発表された後、武君の指にリングをはめた。武君は全然嬉しそうじゃなかった。悔しくてたまらない、そんな顔だった。私は帰りもXANXUSさんに担がれてホテルへと戻った。お風呂を済ませると、またXANXUSさんの部屋へと通される。ベッドを使えと言われたので、私はベッドの端の方で小さくなり眠りについた。それは深い深い眠りだった。
***
目を開けると空には真っ暗な闇と、赤い月が登っていた。よかった、忌々しい星空ではないんだ。安心した。なんだかここは心地良くて、全てを受け入れてくれるような場所だと感じた。怖いものはない。私を傷つけるものもいない。失うものもない。ここは、私だけの居場所。
四肢を投げ出して寝転んだ。ああ、気持ちがいい。なんだか眠くなってきてしまった。これでやっと、
安心して眠れるんだ。
***
「あいつ、今日起きてくんの遅くね?」
「疲れてるんじゃない。…まぁ、今までお昼を過ぎることはなかったけど。」
「気が弛んでるんだ!!あの女!」
「様子見に行きなよベル。」
「は?なんで俺なんだし。足痛ぇから無理。」
「言い出しっぺだろ。別にレヴィに行かせてもいいけど。」
「…それはうぜーわ。でもボスの部屋だろ?ボス入っていー?」
「好きにしろ。」
「マジか。ししっ、今度はどんな悪戯してやろーかな。」
「ほどほどにね。」
鼻歌を歌いながら、ベルはXANXUSの自室へと向かった。普段XANXUSのプライベートで使う部屋に入らないため、ベルは心を躍らせていた。そっと部屋のドアを開けて中を覗くと、奥にあるベッドで布団がわずかに動いていることに気づいた。ベッドにそろりと近くベル。ベッドで寝る花莉は小さな寝息を立てて寝ている。悪戯してやろうと思い出てきたが、花莉の寝顔を見てその気も失せた。彼は普通に花莉を起こすことにした。
「おい、いつまで寝てんだよ。」
ゆさゆさと花莉の体を揺らすが、反応がなかったため、彼はぺちぺちと頬を叩いた。しかしそれでも反応はない。
「ちっ、おい、起きろって!」
あまりにも起きない彼女に苛立ち、ベルはつい強く彼女の頬をひっぱたいてしまった。やばい、と思ったが彼女は寝息を立てたまま。おかしい、どんなに揺らしても叩いても起きない。こんなことがあるのだろうか、とベルは思った。
「ししっ、やべーじゃんこいつ。」
ベルは彼女を片手で担ぎ上げ、松葉杖をつきながら大広間へと向かった。ドアを開けると、XANXUS、マーモン、レヴィは一斉にベルを見た。そして、その手に抱かれている花莉も。
「え…?ベル、殺っちゃったのかい?」
「なわけねーだろ。ちょっと見てて。」
ベルはそう言うと、担ぎ上げていた花莉を落とした。ドッと落ちた花莉はそのまま動かない。マーモンはやはり殺ってしまったのかと思っていた。
「よくやったぞベル。目障りな女だったからな。」
「だからちげーよ。こいつ何しても起きねーんだよ。」
何を言ってるんだこいつは、という目でベルを見るレヴィとマーモン。マーモンは小さな足で花莉に近づき、彼女の様子を見る。
「息はしてるね。普通に寝てるように見える。」
「でも起きねーんだよ。揺らしても、叩いても。」
「まさかこの頬が腫れてるのベルが叩いたせいかい?ずいぶん強く叩いたね。」
「んなことはどーでもいいんだよ。何こいつ、どーなってんの?」
「知らないよ。」
明らかに様子がおかしいのはマーモンにも理解できていた。だからといって解決の糸口が見つかったわけではない。
「これ起きなかったらどうなんの?」
「それはヤバイね。ボスが正式にボンゴレのボスになる権利が奪われ…、」
「バカっ!!」
ベルが止めた時にはもう遅かった。凄まじい圧をかけるXANXUSがベルとマーモンを睨んでいる。流石のベルとマーモンも死を覚悟した。
「どんな方法でもいい。起こせ。」
XANXUSはそう言って大広間を出て行った。ベルとマーモン、そしてレヴィもとにかくなんでもした。水をかけてみたり、レヴィもわずかな電流を流してみたり、ちょっと強めに叩いてみたり。だが彼女は起きない。いよいよ本当にまずいと3人は思った。
「起きたらマジ覚えてろよ。」
「起きるといいけどね。」
その頃XANXUSは自室で1人酒を嗜んでいた。すると、メイドが1人訪れ、花莉の制服を持ってきた。何故かその制服のポケットは光っている。ポケットの中身を確認すると、何かのカケラが入っていて、小さく光っていた。XANXUSは今回の件で何か関係していると判断し、面倒だが大広間へと向かった。バンッと大広間へ入るとベル、マーモン、レヴィは青ざめる。
「やべー。まだ起こせてねーよ。」
「ぼ、ボス!できることはやってるんだよ!」
「最前はつくしてます!!」
XANXUSは3人を無視し、花莉に近づいた。そして持ってきたカケラを彼女に握らせる。するとそのカケラは輝きを増した。4人はその様子をジッと見ていたのであった。