霧に包まれ、
今夜、この指輪争奪戦も折り返しを迎えようとしていた。4日目の戦いは霧の守護者同士の戦い。ヴァリアーからはマーモン君、しかし綱吉君側からは誰が出るのか、本人達もわかっていなかった。どうやらマーモン君も何度か粘写という方法で相手を探ったようだが、結局わからずじまいだったらしい。どんな人が来るのだろうか。
綱吉君側の守護者を待っていると、何者かが体育館の中へ入ってきた。2人の青年だ。よく見てみると顔を見知った青年だった。
『城島君と……確か柿本君…?』
その2人が来たということは、まさか霧の守護者は骸君なのだろうか。少し期待に胸を膨らませて、最後に入ってきた人物に視線を向けた。しかし、最後に入ってきたのは骸君ではなく、1人の少女だった。
「クフフフ、クフフフフフフ、」
「Lo nego.」
「Il mio nome e' Chrome.」
「Chrome 髑髏。」
『くろーむどくろ…ちゃん…?』
私も一度袖を通したことのある黒曜中の制服に身を包み、骸君と同じ髪型をする可憐な少女。三叉槍も持っているが、骸君が憑依しているわけでもないみたいだ。霧の守護者として訪れたみたいだが、隼人君がとても怪しがっている。少し揉めているみたいだ。だが綱吉君はクロームちゃんを骸君ではないと、隼人君に伝えた。その言葉にクロームちゃんは綱吉君に近づき頬にキスをする。思わず私は顔を逸らした。
「しししっ、お前何あれぐらいで顔赤くしてんの?王子がしてやろーか?」
『結構です…っ!』
XANXUSさんとレヴィさん越しにからかってくるベル様。キスで思い出すのはやはり一昨日されたXANXUSさんのキスだ。思い出さないようにしていたのに、今ので思い出してしまった。ちらりと隣で椅子に座るXANXUSさんを見たが、彼は退屈そうに欠伸をしていた。
「もっと仙人のじーさんみたいのが出てくると思ったな。女かよ。」
「よ…妖艶だ……、」
『レヴィさんのタイプはあんな感じなんですね。ミステリアスで可愛いですもんね。わかります。』
「きも。」
「ちっ、違う!!」
揉めていた綱吉君達だったが、結局クロームちゃんが霧の守護者として戦うことに決まった。赤ちゃんと女の子、どんな戦いになるのか想像すらつかなかった。綱吉君に認められてホッとしているクロームちゃんは私の方を見た。ばちりと目があったので、とりあえずにこりと微笑む。すると彼女は顔を赤らめてすぐに目を逸らしてしまう。少しショックだった。
「コロネロ!!」
扉の方からコロネロ君が入ってきた。頭をぶつけていたが大丈夫だろうか。
「フン、マヌケ面さげた奴がふえたか。この戦いでもっとマヌケ面をすることになるだろうがな。」
そういえば、リボーン君、コロネロ君、マーモン君は少し似ている気がする。皆赤ちゃんとは思えないんだ。普通に会話も出来るし、彼等は1人でなんでも出来る。一体何者なのだろうか。
「観覧席は同じ館内の指定スペース内とします。嵐戦と同じように赤外線感知式レーザーが設置されていますので気をつけてください。」
「それでは霧の対戦、マーモンVS.クローム髑髏。勝負開始!!」
始まりの合図と共にクロームちゃんは三叉槍を振り回し、床にトン、とついた。すると床は崩れ始める。
『わわっ、』
瓦礫は浮き、全員が巻き込まれていた。XANXUSさんは平然として座っている。しかしすぐに壊れた床は何事もなかったかのように元に戻った。気がつけばクロームちゃんがマーモン君から出ている触手のようなものに締め付けられている。
「弱すぎるね。見せ物にもなりゃしない。」
「誰に話してるの?」
「!?」
「こっち…、」
捕まっていたクロームちゃんはいつのまにかバスケットボールが沢山入るカゴに変わっていた。マーモン君の背後に平然として立っていたが何が起こったのだろう。次から次へと不可解なことが起こる。あの時とよく似ていた。骸君と綱吉君の戦いに。
マーモン君は触手のようなものをしまい、じゃらりと鎖を落とす。そして服の中から出てきたのは光り輝く藍色のおしゃぶりだった。それはリボーン君の黄色いおしゃぶりと、コロネロ君の青いおしゃぶりと同じものだった。
「あの巻きガエルと藍色のおしゃぶり…生きてやがったのか………コラ!」
「やはりな…奴の正体はアルコバレーノ、バイパー。」
マーモン君はホワホワと浮いている。リボーン君達に寄ると、マーモン君はサイキック能力に優れている術師らしい。つまり超能力者だ。だがそうならこの不思議な現象に納得がいく。
「誰だろうと…負けない。」
クロームちゃんは三叉槍をギュッと握り、マーモン君に攻撃をしかける。マーモン君は避けたが、その直後、突然現れた大蛇に締め付けられ、落下した。しかしすぐに大蛇を振り払う。
「僕もそろそろ力を解放するよ。君の正体はその後でゆっくり暴こう。」
マーモン君は焦る様子もない。むしろ余裕そうに戦っている。クロームちゃんは三叉槍を床につき、火柱を出した。私はあまりの熱さに思わず一歩後ずさる。
「確かに君の幻覚は一級品だ。一瞬でも火柱にリアリティを感じれば焼け焦げてしまうほどにね。ゆえに弱点もまた、幻覚!!!」
火柱が一瞬にして凍り、先ほどとは逆に寒くなる。クロームちゃんの顔には焦りが見えた。そして彼女は足元から凍っていってしまう。キッとマーモン君を睨み、何かを念じていたようだが、マーモン君にひっくり返され、床に倒れこんでしまう。彼女はすぐに起きて、三叉槍の大切そうに握った。
「ムム、どうやらその武器は大事なもののようだね。」
「!…ダメ、ダメーッ!!」
マーモン君がグッと拳を握ると、三叉槍が砕けてしまった。するとクロームちゃんは血を吐いて倒れてしまう。何故かクロームちゃんのお腹はべこりとへこみ、苦しそうに何かを言っていた。
「骸…様…、」
「にわかには信じがたいが、彼女は幻覚でできた内蔵で延命していたらしいね。」
『!!…そんな、』
つまり幻覚でできた内臓がなくなってしまえば彼女は死んでしまうということ。私は骸君からもらった三叉槍のカケラを握りしめ祈った。骸君、クロームちゃんを助けて…!
クロームちゃんは徐々に霧に包まれていく。女術師が体を隠そうとするのによく使われる方法とマーモン君は言うが、果たしてそうだろうか。
「クフフ、クフフフ。」
この独特の笑い声と、この感じはよく知っている。彼と夢であったのは今日だったのだから。
『むく、ろ…くん?』
霧の中から澄んだオッドアイが、こちらを見ていたような気がした。