君を守りたい僕だった
悲しかった。こんなにも愛情に溢れているのに、XANXUSさんに届いていないことが。9代目とXANXUSさんの間に何があったかわからない。それでも9代目の想いは伝わってきた。どうしたらこの想いをXANXUSさんに届けることができるのだろうか。
『ん…、』
「花莉!目が覚めたか!?」
『でぃーの、さん…。』
重たい瞼を持ち上げると、私の顔を心配そうに覗き込むディーノさんの姿があった。
「大丈夫か?どこか痛くないか?」
『は、い………、ここは………、』
「病院だ。お前、9代目を助けた後に倒れちまったんだよ。」
『9…代目………、無事です、か?』
「ああ、一応設備のいい病院に移動はしたけどな。花莉のおかげだ。ありがとう。」
『よかった…………、』
ディーノさんの言葉に安心した。9代目が助かって本当に良かった。自分でもどうしたのかわからなかった。心がぽかぽかして、体の中から何かが溢れてくるような、そんな感覚だった。
「目が覚めたか花莉。」
『りぼーん、くん、』
「9代目を助けてくれてありがとな。」
『役に、たてて…よかった、』
「おいリボーン。花莉具合悪そうだけど大丈夫か?」
「初めて星空の娘として力を使ったんだ。体に負荷がかかって相当眠いはずだぞ。」
『うん……すごく、眠いの……、私、覚醒……したの………?』
「いや、まだ半覚醒だ。あれはお前の意図せず出来たことだったからな。覚醒すれば自分の意思であの力を使うことができる。」
『そっか…………、』
まだ聞きたいことはたくさんあるのに、意識が遠のいてしまう。目を瞑ったら寝てしまうとわかっているのに、私はその眠気に抗うことが出来なかった。私は再び、深い眠りについたのだった。
***
「お、恭弥。花莉の様子見にきたのか?」
「貴方に関係ないよ。」
雲雀は放課後、昨晩から眠る花莉の様子を見にきていた。するとそれに気がついたディーノが雲雀に話しかける。
「お前花莉に怒られたんだって?」
「別に、怒られたわけじゃない。これが勝手に怒っただけ。」
「お前なぁ。」
ぷい、とそっぽを向く雲雀にディーノは呆れた。これは花莉も苦労しているだろうと感じていた。
「だいたい、これも人のこと言えないしね。」
「あーーー、まぁ、そうだな。」
「行動が矛盾してるんだよ。厄介ごとを嫌うくせに自ら厄介ごとに巻き込まれにいってる。傷つくことを恐れてるのに、他人のためなら自己犠牲を厭わない。」
「…、」
ディーノ自身もそれは理解していた。花莉は厄介ごとに巻き込まれるのは嫌いだ。だが他人のためならどんなことでも出来てしまう。自分が傷ついても、当たり前のように他者を優先する。
「本人に自覚がないから厄介だよ。」
「よく見てんのな。花莉のこと。」
「風紀委員なんだから当たり前でしょ。」
雲雀は花莉の頬を撫でた。その目は風紀委員に向ける目ではない。彼女を愛おしく想う目だった。そんな雲雀を見てディーノは驚いた。
「お前花莉のこと好きか?」
「なんでそんなこと貴方に言わなきゃならないの。咬み殺すよ。」
「きっ、聞いてみただけだろ!怒るなよ!…俺は花莉のこと、気に入ってるぜ。」
「…、」
「花莉は特別な立場だからな。これからその立場を狙って色んなやつが花莉に近づいてくる。俺は花莉を守ってやりたいんだ。」
「ふぅん。」
「なっ、もっと興味持てよ!うかうかしてると取られるぜ。」
雲雀は花莉の頭を撫でて部屋から出ようとする。そして、振り返ってディーノに対し不敵な笑みを浮かべた。
「星影花莉は僕のものだよ。他の誰にも渡さない。貴方にもね。奪えるものなら奪ってみなよ、その前に咬み殺してあげるから。」
「!!」
雲雀はそのまま病院を後にした。ディーノは雲雀が出て行った後、思わずため息をこぼした。
「まずいな、怒らせた。」
ディーノは大人気ないことをしたと後悔した。だが、揶揄うために言ったわけではなかった。守りたいと言ったのはディーノのまぎれもない本心で、花莉を気に入っているのも事実だったのだ。
「お前厄介なのに好かれるなぁ。」
ディーノは静かに眠る花莉の額に唇を落とし、部屋を後にした。その様子をリボーンに見られ、揶揄われたのは言うまでもない。