繰り広げられる死闘

記憶が流れ込んでくる。これはなんの記憶だろうか。ああ、これは9代目とXANXUSさんの記憶だ。哀しく寂しい物語。

『はっ……!』

ばちん、と弾けるように目が覚めた。鮮明に覚えていたのは、9代目の記憶だけ。伝えなきゃ、彼に、XANXUSさんに。

「お目覚めでしょうか花莉様。」

『貴女は…!なんで私はここに!?』

周りを見渡せば、私は鉄格子に囲まれていた。その外には審判の1人が立っていた。そして、どこからか沢山の爆発音が聞こえる。昨日の雲の対決から記憶が曖昧だった。

「すでに大空戦は始まっております。」

『え…っ!?』

「花莉様に大空戦のルールを説明させていただきます。フィールド内は大空戦の勝利の条件2つ。1つ目は、全てのリングを手に入れることとなっております。そしてこの対決には守護者全員が参加していますので、チーム戦で戦っていただいております。そして2つ目は星空の娘<フィリア・デッレ・シエロステッラート>である花莉様を手に入れること。」

『っ、』

「この鉄格子は大空のリング以外の全てのリングを同時にこちらの凹みに差し込まなければ開かない仕組みとなっております。この鉄格子は特別な作りになっており、安全性は保証いたしますのでご安心ください。戦いの模様は中にあるモニターで見ることが出来ます。それでは。」

説明をするだけして、審判はこの場を去っていった。私は今大混乱している。目を覚ましたらすでに大空戦は始まっていて、勝利条件がボンゴレリングを全て揃えることと、私を手に入れること。そしてヴァリアーか、隼人君達のどちらかが大空のリング以外のリングを持ってくるんだ。

『私はここで見ていることがお役目ってことね。』

ぎゅっと拳を握りしめた。戦えなんて言われなくてよかった。よかったけど、ただ見ているだけっていうのもきついものがあった。モニターを見れば、綱吉君が額に炎を灯して戦っている。

「花莉、聞こえるか?」

『リボーン君?』

「そうだ。観覧席とそっちは繋がってるみたいだな。」

モニターにはリボーン君、バジル君、シャマル先生、コロネロ君、そして端の方には城島君と柿本君の姿があった。良かった、せめてこうして誰かと話せるなら心細い気持ちも減る。リボーン君にこの戦いの説明の補足をしてもらい、なんとなくこの戦いの意味も理解できた。守護者がつけているリストバンドからデスヒーターと呼ばれる猛毒が注入され、30分後までに解毒しなければ絶命してしまうようだ。しかしデスヒーターは象すら立てない猛毒、皆動くことすらできない状態となっている。

綱吉君とXANXUSさんは死闘を繰り広げている。XANXUSさんは嵐と雷のポールに銃を撃ち、その衝撃でリングがヴァリアー側の手に渡ってしまう。ベル様は校内から外に出て、レヴィさんは一直線にランボ君の元へと向かっていく。

「こっからだと雨が近いか。」

ベル様が動き出そうとした瞬間、何者かがベル様に攻撃をする。

「お前は…、」

「ふぅん。よくかわしたね。君…天才なんだって?」

『委員長…!』

「雲雀の奴、自分で倒して解毒したな。」

「あ…ありえない…、デスヒーターは野生の象ですら歩行不可能となる猛毒…。」

「束縛を嫌う奴の意地の力だ。だからこそあいつは何者にも捕らわれることなく、独自の立場からファミリーを守る孤高の浮き雲。」

猛毒すら委員長に勝つことができないのか。私はあんな人の下で働いて生意気言っているのだと思ったらゾッとした。

委員長は嵐のリングを隼人君の元へ弾き、解毒をした隼人君がランボ君の元へと行き、レヴィさんを倒した。ランボ君の解毒も無事に済み、ホッとする。

委員長はベル様と対峙していた。ベル様はナイフを投げるが、委員長はトンファーで弾いた。しかしナイフにはワイヤーが付いており、委員長が動けば動くほど、委員長の体を切り刻んでいった。そしてついに委員長は尻もちをついてしまう。

「イインチョー破れたり♪花莉は俺が貰っとくぜ。バイバイ。」

ベル様は倒れる委員長にナイフを投げる。しかし、委員長は指と指の間でナイフを受け止めた。そしてようやくナイフとワイヤーの仕組みを理解する。

「へえ、なるほど。ナイフに糸がついてたんだ。まるで弱い動物が生き延びるための知恵だね。そういうことなら、一本残らず、撃ち落せばいいね。」

ワイヤーはトンファーの鎖によって全て撃ち落とされる。

「跳ね馬にも言ったけど、あれは僕のものだからあげないよ。…覚悟はいいかい。」

委員長がベル様に攻撃を仕掛けるが、ベル様は避けてその場を去ってしまう。委員長の傷は深く、ふらふらとしていた。というか、僕のものって…、こんな大勢がモニターで見てるところで言わなくていいのに。

「花莉、赤くなってんじゃねーぞ。」

『なっ、なってない!!』

リボーン君に指摘され、背筋がピンと伸びる。私は綱吉君が映るモニターを見た。XANXUSさんの猛攻に綱吉君の体はボロボロになっている。しかし綱吉君は何かをしようとしていた。XANXUSさんはそれを何か知っているようだった。綱吉君が何もできないよう、攻撃を仕掛けるが、綱吉君も負けじと零地点突破、という技の準備をする。だが、XANXUSさんの撃った弾が綱吉君に直接当たり、彼は地面に倒れていた。

綱吉君の額の炎は消えていたが、再び炎が灯り、彼は立ち上がった。しかし、XANXUSさんはそれを零地点突破ではないと否定した。だが、綱吉君の目は諦めていない。彼は先ほどとは違う構えをして、まっすぐXANXUSさんを見た。

「零地点突破、改。」

それから、XANXUSさんの様子がおかしかった。何か焦っているような、怒っているような、そんな気がした。力任せに綱吉君に攻撃をする。しかし、綱吉君はXANXUSさんの炎を吸収し、自分の力に変えることが出来るようになった。そして綱吉君の力強い拳がモロにXANXUSさんに入った。校舎へ激突した彼は息を切らしながら綱吉君を睨む。

「この俺がまがいモノの零地点突破ごときに、あんなカスごときに…、くそが…くそが!!ド畜生がぁ!!!!」

『ひっ、』

XANXUSさんの怒りは頂点へと達していた。その証拠なのかわからないが、彼のに痣のようなものが出てきている。あまりの恐ろしさに思わず後ずさってしまった。XANXUSさんは禍々しいほどの炎を身に纏い、今すぐにでも綱吉君を殺しそうな勢いだ。

「あれは怒りだぁ……、」

『!!…スクアーロさん…?』

私は幻を見ているのだろうか。死んだと思っていたスクアーロさんが、車椅子に座っている。包帯だらけだけど、たしかに生きている。

「雨戦の日、部下をB棟に忍び込ませてたんだ…山本を救うためにな。だが水槽に落ちたのはスクアーロだった…。」

ディーノさんがスクアーロさんを助けてくれたんだ。安心して、膝から力が抜けてその場に座り込む。スクアーロさんとディーノさん達は観覧席へと入っていった。ここで泣いている場合ではない。死闘はまだ続いている。

「かっ消す!!!」

「…、」

「ツナ!!何をする気だ!?」

ディーノさんが焦るのもわかる。何故なら向かってくるXANXUSさんを避けるわけでもなく、彼の憤怒の炎と真っ向勝負をするつもりだからだ。お互いにがしりと両手を掴み合い、2人の間に炎が灯る。光に包まれた直後、爆音が鳴り響き、辺りは煙に巻き込まれる。

その煙の中に立っていたのは、XANXUSさんだった。