大空に舞う
大きな爆発の中、立っていたのはXANXUSさんだった。しかし、彼の両手は凍っている。凍らせた本人は、両手を見て驚いていた。凍らせることが、初代があみだした零地点突破だとリボーン君は言った。XANXUSさんは今までに見たことないくらいの動揺を見せた。
「そのキズ、お前が前にも全身に零地点突破を受けた証拠。もうおまえの拳に炎が灯されることはない…お前の負けだ、XANXUS。」
もうこれで戦いは終わるのだろうか。そうだったらいいのに。もう、終われば誰もこれ以上傷つかないのに。しかしこの願いはすぐに打ち砕かれた。
「しししっ、花莉はーっけん。」
「さぁ、仕上げだよ。」
『そんな…っ、ベル様、マーモン君、』
私の元へと辿り着いたのは隼人君達ではなかった。6つのボンゴレリングを持っているのはベル様とマーモン君だった。彼等は鉄格子にある凹みにリングを同時に差し込む。すると鉄格子の扉は開き、外に出られるようになった。
「来いよ花莉。ボスんとこ行くぜ。」
『…、』
いいのか、やすやすと彼等について行ってしまって。ここで少しでも抵抗すれば、隼人君達が来てくれるのではないか。
鉄格子から出ることを躊躇していると、ナイフが私の頬を掠めた。
『…っ!!』
「お前さ、立場わかってんの?」
頬が切れて血が伝っていることがわかる。このまま私が出なければ全身を切り刻まれて無理矢理連れて行かれるのだろう。私は震える足で鉄格子を出た。するとベル様は私を担いで走り始める。向かうのはグラウンド、綱吉君とXANXUSさんが戦っている場所。マーモン君は先に行ったみたいだ。
「とーちゃく♪返してもらうぜ。」
「花莉…!?」
「これは正統後継者のリングだし。」
私はどさりとその場に捨てられた。ベル様の持つナイフの先には炎を灯すボンゴレリングがあった。そして、XANXUSさんの全身を包む氷は全てのボンゴレリングによって溶けていった。
「おかえりボス!」
「いよいよだよ。」
「リングを…よこせ…。」
「もっちろん。これはあんな亜流のニセモノじゃなくて9代目直系のボスにこそふさわしいからね。花莉、」
『うあっ、』
服を掴まれ、XANXUSさんのそばに引きずられる。私のすぐそばには傷だらけのXANXUSさんが横たわっていた。
「ほら、ボスにリングはめろよ。」
『だ、ダメ…、ダメなんです…っ、』
「は?また切られたいわけ?」
『違う…!そうじゃなくて、』
「ちっ、うぜーな。早くしろよ。」
『あっ、』
ベル様は私にリングを握らせて、XANXUSさんの指に無理矢理はめようとする。違う、本当に彼にリングをはめてはいけない気がするんだ。
「ツナ!」
「10代目!」
「星影ーー!!」
隼人君達がこの場に来た。でも、手遅れだった。私の手はベル様に強く握られていて、XANXUSさんの指にリングをはめざるを得ない。
「どいつもこいつも新ボス誕生のために立会いごくろーさん。」
「受け継がれしボンゴレの至宝よ。若きブラッド・オブ・ボンゴレに大いなる力を!」
『ダメっ!!!』
チェーンに全ての守護者のリングがはめられ、XANXUSさんの指にも大空のリングがはめられた。
「こ…これは…!!力だ!!とめどなく力があふれやがる!!これがボンゴレ後継者の証!!ついに!!ついに叶ったぞ!!これで俺はボンゴレ10代目に…、」
『XANXUSさん…!!』
「!!…がっ!!」
XANXUSさんの体中から出血する。まるで内部で何かが暴れているような、そんな様子だった。倒れるXANXUSさんを見て、ベル様やマーモン君は動揺していた。
「リングが…、XANXUSの…血を…拒んだんだ……、」
「ムム!おまえ何か知っているな!リングが血を拒んだとはどういうことだ!?」
「ぐふっ…、さぞ…かし…いい気味だろうな!…そうだ、俺と老いぼれは血なんて繋がっちゃいねぇ!!」
『…、』
私が夢で見た9代目の記憶と違わない事実。誰もが驚いていた。9代目の実子だと思っていたXANXUSさんが実の息子ではなかったということ。それはこの指輪争奪戦の行方を揺るがす事実なのだ。
「同情すんな!!カスが!!」
「お前の裏切られた悔しさと恨みが…俺にはわかる…、」
「生きてやがったのか…カスザメ……わかるだと…てめーに俺の何がわかる…知ったような口を聞くんじゃねぇ…、」
「いいやわかる!!知っているぞぉ!」
スクアーロさんから語られたのはXANXUSさん側の記憶。真実。彼は生まれながらして炎を宿し、それを見た彼の母親は9代目との子どもという妄想にとりつかれた。彼は9代目の息子として成長し、跡取りとして申し分なかった。しかし彼は知ってしまった。9代目との血の繋がりは無く、後継者として認められない掟を。彼は怒り、憎み、復讐心を持って揺りかごと呼ばれるクーデターを起こしたのだと言う。
やっと辻褄が合った。9代目の記憶とXANXUSさんの記憶。震える拳をギュッと握りしめた。
「9代目が、…裏切られてもお前を殺さなかったのは…最後までお前を受け入れようとしてたからじゃないのか…?」
「9代目は血も掟も関係なく誰よりお前を認めていたはずだよ。9代目はお前のことを本当の子どものように…、」
「っるせぇ!!気色の悪い無償の愛など!!クソの役にも立つか!!俺が欲しいのはボスの座だけだ!!カスは俺を崇めてりゃいい!!俺を讃えてりゃいいんだ!!!」
『っ!!!』
パァン!!と、乾いた音がグラウンドに鳴り響いた。目の前の赤い目が、動揺に揺れた。
『なんでっ…、貴方はこんなにも愛されているのに…っ、』
「!」
『どうでもいい人を…っ、ここまで育てるわけないじゃないですか…!血の繋がりを大切にしてるなら、初めて会った日に貴方を息子なんて呼びません…!』
「てめーに何がわかる!!!」
『っわかります!!』
「!!」
『9代目は本当に貴方を10代目にしようとしていました!!周りから反対されても、最後まで貴方を信じてたんです…!貴方にありったけの愛情を注いで過ごした時間を、9代目は何より大切にしてたことを知ってるはずなのに…っ!知らないフリをしないでください!!』
きっと私の顔は涙でぐしゃぐしゃでみっともないだろう。悲しいんだよ。なんで伝わらないの。なんで知らないフリをするの。9代目は貴方に愛情を注いで、大切に育ててきた。それを誰よりも知っているはずなのに、9代目を信じれなくなって、裏切って、こんなにも悲しいすれ違いが起こってしまった。
「っ、」
「花莉先輩…、」
「ぐあっ、ぐお…ぐっ、」
カランと音を立てて、大空のリングはXANXUSさんの指から落ちた。まるで、逃げるように。
「XANXUS様!!あなたにリングが適正か、協議する必要があります。」
「だ…黙れ!!叶わねーなら道連れだ!!どいつもぶっ殺してやる!!」
「XANXUS様!」
「大さんせーだボス。やろーぜ。」
「当初の予定通りだよ。」
「どこまで腐ってやがる!!やらせるかよ!」
隼人君達は武器を構えて応戦態勢だ。そして、委員長もよろりとしながらもトンファーを構えた。確実にこちらが有利のはずがベル様達は余裕の表情を見せた。その理由は、50名のヴァリアー隊がここに向かっているからだと言った。それは幹部クラスの次に戦闘力の高い精鋭らしく、今のボロボロの隼人君達には勝ち目はなかった。審判も流石に制止するが、ベル様が審判の1人を殺してしまう。観覧席にいるコロネロ君達も戦うつもりだったが、観覧席には細工が施されており、赤外線が解除されない。また、内部から攻撃をした場合爆発してしまうらしい。そして、ついにヴァリアー隊が到着してしまう。
「ナイスタイミーング。待ってたぜ。」
「報告します。我々以外のヴァリアー隊全滅!!!奴は強すぎます!!鬼神のごとき男がまもなく…!」
「げげ!!」
「暴蛇烈覇!!」
「「「『!!!』」」」
それは、私達の希望となった。