勝利を貴方に
大きな鉄球が、ヴァリアー隊をなぎ倒されていく。私達のピンチを救うように現れたのは右頬に2つ傷のついた男だった。
「取り違えるなよボンゴレ。俺はお前を助けにきたのではない。礼を言いにきた。」
「ランチアさん!!」
どうやら綱吉君の知り合いのようだ。50人のヴァリアー隊は彼のおかげで倒された。そして、ベル様やマーモン君も、武君達に寄って制される。もう脅威はない。ヴァリアーはもう為すすべはないのだ。
「ダメだこりゃ。」
「ウム…ボス…ここまでのようだ…、」
「……役立たずのカス共が…、くそ!ちくしょう!てめーら全員!!呪い殺してやる!!…ぐはっ、」
彼の怒りは収まらない。それでも、彼はもう動けなかった。審判がXANXUSさんのそばに行き、役目を終えたのだと彼に伝えた。それがどういうことなのかはわからない。XANXUSはゆっくりと目を閉じ、眠るように気を失った。
「お疲れ様でした。それではリング争奪戦を終了し、全ての結果を発表します。XANXUS様の失格により、大空戦の勝者は沢田綱吉氏。」
「よってボンゴレの次期後継者となるのは沢田綱吉氏とその守護者6名です。」
「よくやったな。これで帰れるぞ。」
「……みんな………、」
「10代目!」
「ツナ!」
こうして、一週間に渡るリング争奪戦は幕を閉じた。綱吉君はふらりと倒れ、気を失ってしまった。
『…、』
私は、眠るXANXUSさんの手にそっと触れた。どうか夢の中では、穏やかに休めますように。そう願った。
「花莉、まだ涙とまらねーか?」
『悲しい気持ちが、消えないの。勝って嬉しいはずなのに。どうしてなんだろ。変だね。』
「お前が人一倍、誰かの想いに敏感で、優しいからだ。その気持ち、忘れんなよ。」
『……………うん、』
「お前もよく頑張ったな。」
『うん…………っ、』
リボーン君の言葉に緊張の糸がほぐれて、体が震えてきてしまった。私は腕で自分の体を抱きしめた。こんなに震えるほど怖かったんだと、初めて理解した。
その後、ボンゴレの救護班が訪れて全員の手当てをしてくれた。委員長は必要ないよ、と言っていたが私がその意見を断固拒否した。すると、私が触るならいいと言ってくれたので、私は救急セットを救護班の方からお借りした。
『私素人ですからね?』
「構わないよ。知らない奴に触れられる方が嫌だ。」
委員長はベストとワイシャツを豪快に脱ぎ始め、思わず目をそらす。たしかに脱いでもらわないと手当ては出来ないがそんなに堂々と脱がなくてもいいのに。
「何照れてるの?」
『照れてません…!』
私は速やかに傷口を消毒し、小さな傷には絆創膏を貼り、大きな傷にはガーゼを当てて包帯を巻いた。
『ああ…委員長の顔に傷が…、』
「だからなに?」
『委員長、顔は綺麗なんですからあんまり傷作らないでくださいよ。』
「なんで君に指図されなきゃいけないわけ?だいたい君に言われたくない。」
委員長は私の頬をピンっと弾いた。絆創膏を貼っているが痛かった。委員長の顔の傷残らないといいな。
「また僕の許可なしに傷作ってるし、サル山のボス猿のこと殴ってるし。」
『殴ってません!叩いただけです!』
「同じでしょ。」
『う"…、すみません…、』
今思えば本当に命知らずなことをしたと思う。自分でも信じられない行動だった。でも、怒ってたんだと思う。なんで他人の私に伝わって、XANXUSさんには伝わってないんだって。私の言葉は、XANXUSさんに届いたのだろうか。届いているといいな。
「もうあれのことは考えなくていいよ。」
『あれって…、はい、終わりです。』
「わりと早かったんじゃない。」
『委員長の後始末で鍛えられてますからね。』
委員長は素早く制服を着て立ち上がった。私も立ち上がり、救急セットを返した。もう他の皆も手当てが終わったみたいだ。
「恭弥、これお前のボンゴレリング。」
「いらない。」
「なぁ!持っとけよ!!」
『あ、ディーノさん、それ貸してもらってもいいですか?』
「ん?ああ、ほらよ。」
私は雲のボンゴレリングをディーノさんから受け取る。
『委員長が雲の対決で勝った時、リングをはめることができなかったので…だめ…ですか?』
「…………、ん。」
『!ありがとうございます!』
だいぶ悩んだが、私がリングをはめることを許可してくれた。少し嬉しかった。委員長にはめることが出来なかったのが唯一の心残りだったのだ。
『なんか結婚式みたいですね。あ、深い意味はなく。』
「…深い意味はないわけ?」
『えっ、な、ないですよ…!お茶目な冗談です!』
「ふぅん。」
「お前ら青春だなー!」
「まだいたの。早く消えないと咬み殺すよ。」
「わぁーったよ!ったく、血の気が多いんだからよ。…花莉!お前も頑張ったな、またな!」
『はい!ありがとうございました!』
ディーノさんは私達に手を振って、部下の人達と一緒にこの場を去っていった。委員長はため息をつき、私を見る。
「帰るよ、花莉。」
『!…はいっ!』
またこうして、彼と一緒に帰ることができる。そのことが、私の何よりの幸せでした。