忌々しい瞳
『ふんふんふーん♪』
ある日の夜、私はコンビニへとアイスを買いに行った。毎日頑張っている自分へのプチご褒美だった。最近は委員長がずっとディーノさんと戦ってるみたいで、委員長分の仕事が私に回ってくる。そんな自分への労いの意味も込めて少し高いアイスを買った。上機嫌で歩いていると、2人の女性が私の前に立ちはだかった。双子なのだろうか、目元は仮面をつけていて見えないが2人の容姿は瓜二つだった。
「星影花莉様ですね。」
「我々にご同行願います。」
『え、あの、宗教とかはちょっと…、』
こんな夜に一人で出歩いたのが良くなかった。相当厄介そうな宗教勧誘に捕まってしまった。ジリジリと寄ってくる2人組に背を向け逃げようとしたが、彼女達は私の前に素早く立ちふさがった。まるで瞬間移動したかのような速さだ。
「失礼致します。」
片方が私にグッと近づき、私を横抱きにした。一体この細い体のどこにそんな力があるんだろうか。暴れようとしたが、私を抱く腕が強すぎて全然抵抗出来なかった。
「行きましょう。」
『行くって、どこにいいいい!!』
彼女は私を抱いたまま、何処かへ向かった。屋根を跳んだり、林を抜けたり、もうめちゃくちゃだ。やっと林を抜けたかと思うと、彼女はバッと飛び、ある場所へと着地した。
「お待たせしました。」
「今回のリング争奪戦では、」
「我々が審判をつとめます。」
『はぁ、死ぬかと…、』
「花莉先輩!?なんでここに!?」
『うわ、また綱吉君関係!?もう巻き込まないでよ〜。』
女の人に降ろされて周りを見ればまた綱吉君達の姿が見えた。厄介なことに巻き込まれる時は必ず綱吉君がいる気がする。本当に勘弁してほしい。私をここに連れてきた2人は何かの説明をしているが何の話をしているのか全く分からなかった。何故私が連れてこられたんだ。
「そこで、真にリングにふさわしいのはどちらなのか、命をかけて証明してもらいます。」
「しししっ、それで?お前らが連れてきた女は何なんだよ。」
「彼女は、マフィア界を統べる神の使者。星空の娘<フィリア・デッレ・シエロステッラート>です。」
「「「!!?」」」
『な、何…?なんて言った?』
何語かわからない言葉が聞こえて何一つわからなかった。周りの反応を見れば、綱吉君達は何のことかわかっていないようだったけど、もう一つのグループの人達は驚いた表情でこちらを見ていた。
「あらぁ?その一族は滅んだって聞いたけど?」
「彼女はその生き残りです。」
「待てチェルベッロ!!それはボンゴレの機密情報だったはず!!何故お前達が知っている!!」
「貴方には関係のないことです。」
「くっ、」
綱吉君のお父さんも事情を知っているようだった。なんとも言えない空気が流れている。今冗談を言ったら確実に殺られる。
「証と瞳を持つはずだ。見せろ。」
「花莉様はまだ未覚醒のため、証は出ません。しかし瞳はお持ちのはず、見せていただけますか?」
『わ、私はそんなの知りません…私の瞳は黒色です…っ、』
ああそうか。この瞳のせいで巻き込まれているのか。いつだってこの瞳は私を不幸にする。忌々しい瞳だ。
私が頑なに知らないふりをすると、たぶん敵側の一番偉い人がズカズカとこちらに向かってきた。その威圧感に逃げ出したくなったが、あまりの恐ろしさに動けずにいた。
「二度は言わねぇ。」
『っ、』
「花莉先輩!」
私の名前を呼ぶ綱吉君の声が聞こえた。きっとこれ以上駄々をこねると目の前の彼に殺されるだろう。そう感じた私はゆっくりと両目のコンタクトを外す。
「ししっ、ただの青い目に10万。」
「いや、青ですらない目に10万だね。」
私はその瞳で、目の前の紅い瞳を捉えた。私の瞳を映すその紅い瞳はわずかに見開かれる。
「「「!!!!」」」」
「しししっ、まーじか!」
「へぇ、高く売れそうなものを持ってるじゃないか。」
「噂通りの星空ねぇ。」
『これで、満足ですか。』
「ハッ、てめぇを認めてやる。星空の娘だとな。」
別に認めてくれなくていいのに。コンタクトがまた無駄になってしまった。
私は全てを拒絶するように、誰とも目が合わないように俯いた。