少年Aは前を向く

*入江正一side*

毎日毎日プレッシャーとの戦いで、胃が痛くなるばかりだった。でも、僕は立ち止まるわけにはいかないんだ。

「白蘭サン!!」

「ん。」

「ん、じゃないよ!!無事だったんですね!?」

「うん、元気。」

呑気にマシュマロを食べてにこにこしている白蘭サンに苛立ちを感じた。こっちは必死に色々しているというのに。

「あの伝達係!伝達係は今どこに!?」

「ああ、レオ君?明日の新聞に載るんじゃないかな。変死事件か何かで名前はちょっと変わるけどね。」

「え…じゃあ…、」

「そーそー、彼の中身ね。六道骸君だったよ。」

白蘭サンは近々ボンゴレが攻めてくるといった。それは白蘭サンの勘と諜報部の情報を合わせて出た結論らしい。今ボンゴレ10代目とそのファミリーの一部は過去と入れ替わり、子どもになっている。その彼等が日本のこの基地に攻めて来る可能性があるようだ。ああ、本当に胃が痛くなる。ボンゴレを一網打尽にするチャンスとか言って彼は増援を寄越そうとしてきたが、断った。

「僕が直接やりますよ。彼等の迎撃とボンゴレリングの奪取は。」

「…ついに来たね。最も信頼する部下がそう言うなら止める理由は何もないや。まかせたよ、正チャン。」

「ええ。そういえば彼女はどうしました?ちゃんと無事なんですか?」

「あー言ってなかったっけ?」

「?」

「ほら見て。」

白蘭サンはカメラの視野を少し下にずらした。すると彼の膝の上には小さな少女が頭を乗せて眠っていた。

「!?…まさか、彼女も入れ替わったんですか!?」

「そうみたい。まさか花莉ちゃんまで入れ替わるとはね。でもすごく可愛いんだよ。うさぎみたいに震えて、泣いて、ふふ、」

「待ってください、彼女は15歳ですよ!?本気ですか!?まさか手を出したりしてないでしょうね!?」

彼女も入れ替わったと言うことは今そこにいる彼女は15歳の少女だ。未成年だぞ。

「まだ最後までは出してないよ。気絶しちゃったんだもん。それに…もう壊れちゃったと思うし。」

「!!…まぁいいです。とにかく今はボンゴレリングを手に入れることが優先ですから。じゃあしばらくほっといてくださいね、白蘭サン。」

通信を切る間際、白蘭サンが何か言いかけてたが無視して切った。まさか彼女まで入れ替わってしまうなんて。いや、万が一のことを想定して準備はしていたから入れ替わっているならば彼女の体もあの中にある。彼が言った通りしていて良かった。焦りを見せるな、僕は今ミルフィオーレの6弔花、そしてここの基地の大将となるのだから。情は捨てろ。非情になれ。

「非常招集だ。ハンガーを全部上げてくれ。白いのも黒いのもだ。」

「はっ、」

初めてあの瞳を見た時は、まるで世界の時が止まってしまったのかと思うような衝撃を受けた。星が散りばめられたあの瞳に魅せられたんだ。守りたいと思った。でも、彼女は白蘭サンの手に落ちてしまう。白蘭サンが彼女を狙い始めたのは僕のせいだ。だから、僕はきっとこの最後の世界で、白蘭サンに勝って君を助けてみせる。

ごめん、花莉さん。
これが終わったら必ず君を−−−。