仕組まれた前哨戦

沢田綱吉率いるボンゴレファミリーは入江正一と対面し、これまでの経緯や、過去から導かれた理由を彼の口から聞いていた。イタリアの主力戦も勝利を収め、全てがうまくいった…はずだった。

「ただの小休止だよ。イタリアの主力戦も、日本のメローネ基地も、すんごい楽しかった。」

誰が予想しただろうか。今までの作戦が全て白蘭にわかっていたことを。白蘭は73をかけて正式な力比べを提案した。しかし、白蘭はすでにマーレリングを5つ失っていることを正一が指摘すると、唐突に正一が持っていたマーレリングが壊れた。そう、偽物だったのだ。そして、本当の6弔花は別にいたのだった。真6弔花と紹介された6人の1人は白蘭への忠誠を表すため、故郷を捨て、消した。また、Aランク兵士の部下を100名持っていると伝え、その力の差を見せつけた。

「白蘭サン!力比べって…一体何を企んでいるんですか!!」

「昔、正チャンとよくやった"チョイス"って遊び覚えてるかい?」

「!!」

「あれを現実的にやるつもりだよ♪細かいことは10日後に発表するから楽しみにしててね。それまで一切手は出さないからのんびり休むといい。あ、そうだ。花莉ちゃんは僕のところにいるから安心してね。」

白蘭は眠った花莉を横抱きにした。それは立体映像としてしっかりと写っている。花莉は一足先に未来は言っていたため、過去では行方不明になっていた。

「花莉先輩!!」

「それに、触るな。」

「あー!君が委員長クンね!ふふ、花莉ちゃんがずいぶん君のことを言っててさ。健気だよね。でも、ごめんね。もう僕のものだし、壊れちゃった。」

雲雀以外の全員がその言葉を聞いて青ざめた。そんな様子を見て、白蘭はただ楽しそうに笑った。

「大丈夫、花莉ちゃんはちゃあんと僕が可愛がってあげるから。」

「てめぇ…!!」

「落ち着け獄寺!」

「ふふ、もっと話したいなー。でも君達はもう逃げないとね。君達のいるメローネ基地はもうすぐ消えるからさ。」

綱吉達のいるメローネ基地は超炎リング転送システムによって移動をすると白蘭は言う。そして、白蘭が消えた直後、辺りは光に包まれた。しかし、過去からボンゴレリングを持った了平が来て、巻き込まれずに済んだのだった。

そして、ボンゴレの7人の守護者達はボンゴレの匣を受け取り、新たな力を授かった。全員が戦いに前向きだったが、一つ拭いきれない不安があった。それは花莉のことだ。

「花莉先輩…、真っ白で…まるで、」

「花莉さんは本来、未来に連れてくるつもりじゃなかったんだ。だけど何かの間違いでこの時代に来てしまった。」

「じゃあ、花莉先輩はずっと一人でいたってことだよな。きっと…寂しかったよな…、」

「くそっ、」

「ヒバリさん大丈夫かな…。」

「腸が煮えくりかえる思いだろーな。そっとしておいてやれ。」

「リボーン…、」

一人外れて、壁にもたれかかる雲雀が何を考えているのか綱吉達には分からなかった。

「……………………花莉、」

彼女の名が紡がれたその声は誰の元へと届くこともなく空へと消えた。