束の間の安息

「花莉、」

『あ、あれ!?並盛神社…!』

委員長に名前を呼ばれ、目を開けるとそこはビル街ではなく、並盛神社だった。並盛町に帰ってきたようだ。未来へいるのだと忘れそうになるくらい見慣れた景色だ。

『戻ってきたんだ…、…っ、』

「…………。」

委員長は私の頭を自身の胸の方に寄せてくれる。泣いてもいいということだろうか。私は彼のワイシャツを掴み、声を殺して泣いた。安心感なのだろうか。今、目の前に彼がいるのが何よりも嬉しくて涙が溢れた。

少しの間だけ、泣いたらすっきりとした。少し力任せに目をこすると、委員長に止められた。こんな時にいつもより優しいなんてずるい。

「無事に帰ったということは勝ったのですね!!」

『!?草壁君!?』

「!?…お嬢!?ご、ご無事で!」

『お嬢!?お嬢ってなんですか!?』

「知らない。」

たぶん10年後の草壁君であろう人にお嬢と呼ばれた。未来の私は草壁君になんて呼ばせ方をしているんだ。それになんだか明るいな草壁君。なんて悠長なことを思っている暇はないようだ。転送システムが戻ってきてしまい、そこから何かが四方八方にとんだ。転送システムは壊れたが、確実に敵が私達を探しに来る。委員長は空を見上げると、すぐに私から離れて何処かへ行こうとする。

『委員長…!』

「1つ並中の方に落ちた。見てくる。君は草食動物といて。」

『っ、』

「大丈夫だから。」

そう言って委員長は並中へと向かった。ああ言われたら何も言えない。草壁君とディーノさんも委員長の方へとついていった。

「お、俺達も急いでユニと花莉先輩を地下のボンゴレアジトへつれていこうか…。」

「了解っス。」

「オッケ。花莉先輩、行きましょ。」

『う、うん…!』

私は皆に地下のボンゴレのアジトへと案内された。やっと安心できる時間が少し出来た。久しぶりにハルちゃんや京子ちゃん達に会うことが出来、とても嬉しくなった。もちろん初めて会った人もいる。元ミルフィオーレだという入江正一さんとスパナさん、そしてボンゴレのメカニックであるジャンニーニさんだ。挨拶を済ませた後、皆は着替えに部屋へと行った。私は腕章さえあればいいし、並中の制服をあの場所で着てきたので私服に着替えるのをやめた。少しアジトの中を探検していると、聞き覚えのある声が聞こえてくる。この声はスクアーロさんだ。何年経っても声が大きいんだなあと感心してしまう。ひょっこりと部屋を覗くと、スクアーロさんはすぐに私に気がついた。

「あらぁ!花莉ちゃんじゃなーい!」

「なんだぁ!どうしたぁあ!」

『あ、えと、』

ルッスーリアさんはモニター越しに私を見てパッと表情を明るくした。ルッスーリアさんとはあまり話したことがないので少し緊張してしまった。

「ん…、あら?」

大きなモニターは映像が乱れ、プツンと途切れてしまう。一体どうしたんだろうか。

「うお"ぉい!!ルッスどおしたぁ!?ちっ、どいつもこいつも…、」

スクアーロさんは舌打ちをしてドカドカと大股でこちらへと歩いてきて私の目の前で止まった。10年も経つとこんなに大人っぽくなるのか人間は。

「花莉、」

彼は私に手を伸ばしたが、大人の男の人だと思うと白蘭さんが浮かんでしまい体が強張ってしまう。

「安心しろぉ、何もしねぇ。」

私の頭をわしゃわしゃと撫でる大きな手は私を傷つけることはない。そのことを体がちゃんと理解すると、自然と力が抜けた。

『ごめん…なさい…。』

「ヤツに何かされたのかぁ。」

『…っ、何、も…、』

「!!」

大丈夫、あんなの何かされたうちに入らない。思い出さなくていい。一度大きく深呼吸をして、スクアーロさんに笑顔を見せる。大丈夫だから心配しないで、というように。

その直後、アジト内ではけたたましく警報音のようなものが鳴り響いた。スクアーロさんと部屋の外へ出て、皆がいる方へ行くと、後ろから大きな爆発音が聞こえた。

「バーロー、みっけたぜ。ユニ様、花莉様。」

私はスクアーロさんにグッと引き寄せられる。敵の恐ろしい圧に私は動かずにいた。

「マグマ野郎!」

「た…たしかザクロって奴だ!」

ザクロと呼ばれた人は、欠伸をして余裕そうな姿を見せる。するとスクアーロさんが戦おうとした武君と隼人君を止め、ここを去るように言った。

「すでにお前らは攻撃されたんだぞぉ!!」

「目に見えない嵐の炎!スクアーロが雨属性の鎮静の炎で相殺している!」

「スクアーロがいなきゃ俺達はとっくに灰だったな。さすがヴァリアークオリティだ。」

私はスクアーロさんに背中を押され、武君に受け止められた。スクアーロさんは1人で戦うつもりだ。武君が自分も残ると言ったが、スクアーロさんは1人でゆっくり静かにひっそり暴れたいのだとキレた。結局、スクアーロさんだけがアジトに残り、ザクロさんを食い止めてくれるようだ。

『スクアーロさん!待ってます!!』

「…さっさと行けぇ。」

私達はアジトを出て走り出す。身を隠すためにハルちゃんの知り合いの不動産屋へと向かうことになった。皆の自宅や黒曜ランドとなると、もうすでに場所がバレているらしい。何グループかに分かれるか否かを話していると近くで大きな爆発が起こる。内部で大きな爆発が起こっているらしい。

私達はハルちゃんの案内で不動産屋へと必死に走った。川平不動産と言うらしい。

「ここです!」

川平不動産へと到着し、ハルちゃんが扉を叩いても中から応答はなかった。ドンドンとハルちゃんが懸命に叩くと、突然その扉は開く。中から出てきたのは眼鏡の男性だった。

「早く入んなさい。追われてるんでしょう?」

「え?」

「なぜそのことを?」

「真6弔花はおじさんが何とかするから。」

「なっ!?」

「ささ早く。」

眼鏡の男性は私達が追われていることをなぜか知っていた。ぽかんと彼を見ているとばちりと目が合う。私はその目をどこかで見たことがあるような気がしてならなかった。

「さぁ、貴女も。花莉さん。」

ユニちゃん同様、懐かしい感じがしたのだ。ずっと前に会っているような。そんな感覚だった。