心配に焦りを少々

「家具のうしろに適当に隠れてください。静かにしていてくれればこっちで何とかするんで。」

「どなたか存じませんが、ありがとうございます。」

「はいはい、どうぞどうぞ。」

私達は川平さんの言葉に甘えて、建物の中に入り、家具のうしろに隠れた。隼人君は私の腕を掴み、テーブルの下へと引き込む。

『大丈夫かな、』

「とにかく今は奴に任せるしかねえだろ。いざとなったら守ってやるから。」

『!…うん、』

小さく縮こまりただ脅威が去るのを待った。すると勢いよく扉を開ける音がした。きっとザクロさんだ。見つかったらどうしようという不安が頭をいっぱいにしてしまう。

「まさかあたしが隠していると?」

「………ったく、やりにくいったらねえぜ。一軒ずつ燃やしてあぶり出すしかねーか。」

『!!』

「なんですって!?燃やすってあーた!…わたたっ、たっ、セーフ!」

「バーロー!!気をつけやがれ!」

「すっ、すいません!」

「許さねーよ。家と一緒に燃やしてやる。」

隠れているため状況が確認出来ないが、ザクロさんは外に出たようだった。そして、まちやがれ!バーロー!という声が聞こえたと思ったらもうザクロさんの気配はなくなっていた。

「真6弔花は言ってしまったよう。これでしばらくは大丈夫でしょう。」

川平さんの一言に全員がホッとし、隠れていた場所から出てきた。

「しかし白蘭ってのもひどい男だ。こんないたいけな娘と可憐な娘を殺人集団をつかって追い回すとはねぇ。」

「あ…あの…なんでそんなに俺達のことを知って…、」

「ああそーだ。並中へ向かう学ランの子を見たなあ。お仲間?」

『!!』

「ヒバリさんのことだ!ディーノさんと並中に落ちた真6弔花を倒しに行ったんです!」

「大丈夫かねぇ?彼らの力をあなどっていないといいんだが。」

『い…行かなきゃ…委員長が…、』

「バカか!てめぇが狙われてんだぞ!」

『だから私が行かないと…!また私のせいで…!』

「花莉、落ち着け。いつものお前じゃねーぞ。焦ったって仕方ねえんだ。それに雲雀はすぐやられる弱い奴か?」

『!!…ごめんリボーン君…全然冷静じゃなかった…、』

考えれば考えるほど焦ってしまう。白蘭さんが怖くて怖くてたまらない。あの人は平気で人を殺すことができる。また私のせいで誰かを失ってしまったらと思うと、頭が真っ白になる。

「花莉先輩、今ディーノさんに連絡してみます。」

『ごめん綱吉君…、ありがとう…。』

綱吉君は無線をディーノさんに繋ぎ、こちらの状況を説明した。しかし、ディーノさんのところも戦闘中のようで無線が切られてしまう。

『委員長…、』

「大丈夫っすよ花莉先輩!」

「山本の言う通りだぞ星影!あいつは極限に強いからな!」

『うん…!』

しばらくすると、綱吉君の元に無線が入る。戦いが終わったのだろうか。心配しながら綱吉君を見ると、彼はパッと顔を明るくした。

「雲雀さんが真6弔花のデイジーをやっつけたって!!」

「わーすごいー!!」

「やったな!!」

『よ、良かった…。』

湧き上がる歓声に、私も顔が綻んだ。真6弔花の1人を倒してしまうなんて、本当にすごい人だ。

こうして私達の当面の危機は去った。川平さんはこの場所を自由に使ってもいいと言って、店を出て行ってしまった。とても不思議な人だったけれど、また会うような気がしたんだ。そして、武君とビアンキさん、スパナさんとジャンニーニさんがアジトへと戻るらしい。スクアーロさんは無事だろうか。彼等が店を出ようとするとランボ君が扉を開けて外に出ようとした。

『…、ランボ君……?』

しかし隼人君に捕まり、そのままお店の中へと放り投げられる。こうしてアジトへ戻る4人を見送り、これからのことを話し合うことになった。

***

すごく嫌な何かを感じていた。危機が去ったと言うのに、不安を拭うことができない。私はユニちゃんの隣に座っているが、彼女も具合が悪そうだ。そして目の前にいるクロームちゃんも具合が悪そうだった。

「近くに…何か…います。」

「え!?」

「敵か!!」

隼人君、笹川君、バジル君が戦闘配置につく。リボーン君も銃を構えて戦闘に備えている。

「ボス!牛の子…!」

「ん!?ランボがどーかした…?」

ランボ君に視線を向けると、ランボ君の頭はさらさらと崩れて行った。そして、ランボ君らしからぬ顔で笑い、やがてランボ君は消えていった。その直後、私とユニちゃんは何かに捕まってしまう。

「お前は!!」

「ラン…ボ!ソファ…の…下!!」

イーピンちゃんがたどたどしい日本語でランボ君の居場所を教えてくれる。どうやら敵が内部に侵入し、ランボ君に化けていたらしい。敵は皆を蹴散らし、私達ごと連れて外へと出た。外には他の2人も控えている。

「さあ、ここは我々に任せてユニ様と花莉様をお連れしなさいトリカブト。」

『っ、離して!!』

「花莉様、白蘭様はとてもお怒りです。お早く白蘭様の元にお戻りください。」

『嫌っ…!』

ジタバタと暴れるが、ビクともしなかった。どんどん不動産屋が遠くなってしまう。綱吉君達は敵の猛攻に手を出さずにいた。このままでは本当に連れていかれてしまう。

「みなさん!おじさま!」

もうダメだ、そう思った瞬間、何かが飛んできてトリカブトさんを貫く。その瞬間、私達は彼の手から離され、落ちていく。ユニちゃんはスーツの男の人に抱きかかえられていた。

『えええ、私はああああ!!』

助けてくれたはいいけど、中途半端過ぎませんか!!どうか私も助けてほしい!!どうしようどんどん地面が近くなっていく。視界の端で桔梗さんがこちらへと向かってくるのが見えたけど絶対に間に合わない。やだ、落ちたくない!!そう強く願うと、頭に言葉が浮かんできた。ぎゅっと目を瞑り、浮かんできた言葉を叫ぶ。

『っ、星の翼アラ・ディ・ステッレ!!』

「!!?」

叫んだ後に衝撃が来ないため、恐る恐る目を開けた。すると、足元は地面から離れて宙を浮いている。横を見ると星空を映したような羽が目に入った。なんだ、羽が生えたのか。

『羽!?』

あまりの衝撃に二度見した。なんだこれは。一体どうなっているんだ。背中から生えているのかはわからないが、今私は自分の羽で飛んでいる。

「ハハン、驚きました。まさか天使のような羽が生えるとは。美しい星空の羽ですね。」

『っ、』

「飛べるのならこのままエスコート致しますよ。白蘭様の元へね。」

私の前にいる男は、不敵な笑みを浮かべて私に手を差し出した。大丈夫、委員長だって戦ったんだ。私だっていつまでも逃げていられない。だって、

『私は…白蘭さんのところへは行きません…!!』

「それは残念です。ならば力ずくでも貴女を連れていくことにしましょう。」

私は星空の娘<フィリア・デッレ・シエロステッラート>なのだから。