流星よ、どうかこの願いを
「花莉姉。」
『フゥ太君…、』
作戦会議が終わり、各々で就寝し始めた頃、私は少し離れた場所で夜空を見上げていた。すると少し大人になったフゥ太君が私の隣へと座る。
「眠れないの?」
『うん…、フゥ太君は眠くない?』
「大丈夫だよ。もうそんなに子どもでもないしね。」
『そっか、10年後はもう19歳になるんだもんね。不思議だなあ。』
彼の頭を撫でると、彼は眉を下げて寂しそうに笑う。そして、私の手をそっと掴み、自身の胸の辺りへと持ってくる。
「あと10年早く生まれればよかったって思うんだ。」
『どうして…?』
「花莉姉を守ってあげられるから。ずっとずっと花莉姉を守りたかった。幼い僕は花莉姉に守られてばかりで、それは今も変わらない。この時代の花莉姉は僕を弟みたいに愛してくれて、僕を守ろうとしてくれた。」
『私はちゃんとフゥ太君を守れていたのかな…。』
「うん、充分過ぎるくらいね。だからこそ、あと10年早く生まれてれば僕が花莉姉を守れたのにって思う。花莉姉、前に星のお姫様の話したの覚えてる?」
『うん、星のお姫様が戦わなきゃいけなくなった時だよね。』
「そう、あのね、あれは花莉姉のことだったんだ。」
『え…?』
「僕は昔から星の力を借りることができたんだ。それでランキングの星と更新したりね。未来予知まではいかないけど、星との繋がりが深い花莉姉のことを知ることができたんだ。あの時は幼くてわからなかったんだけど…。」
悲しそうに目を伏せるフゥ太君。私はただまっすぐ彼の目を見て、話を聞いた。
「花莉姉を守りたかった。でも、花莉姉を本当に守れるのは僕じゃない。10年間、ずっと花莉姉を守ってきたのはあの人だ…。」
『あの人…?』
「うん。僕はいつもあの人に追いつきたかった。そしたら花莉姉はいつか僕を見てくれるんじゃないかって思ってたから。」
『フゥ太君…っ、それ以上は…!』
この先は聞いてはいけない気がする。この先を聞いていいのはこの時代の私であって過去の私じゃない。
「ううん、僕はもうこの時代の花莉姉に伝えることはできないから。卑怯でごめんね。」
フゥ太君は私の手をグッと引いた。私の体はフゥ太君の方は傾き、温もりに包まれた。9歳だった彼は10年の時を経てこんなにも成長して大きくなったのか。
「花莉さん。僕はずっと貴女のことが大好きだった。いや、今でも大好きだよ。だから、花莉さんには誰よりも幸せになってほしい。これが僕の一番の願いなんだ。」
『フゥ太君…っ、』
「運命に負けないで。星の力を信じてあげて。きっと力を貸してくれる。もうその瞳の星空を嫌わなくてもいいんだよ。」
『…っ、ありがとう、フゥ太君。』
さざ波のような、子守唄のような、そんな優しい言葉が心を包み込んでくれるようだった。私を星のお姫様と言ってくれるならば、フゥ太君はきっと星の王子様なのだろう。
フゥ太君は私からゆっくりと離れて、おやすみ花莉姉、と言って戻っていった。私は最後までお姉ちゃんでいられただろうか。
『っ、ふ、ぅ…うぅ…っ、ごめん、ごめん…っ、フゥ太君…っ、』
この時代の私が誰といるのかは知らない。でも、フゥ太君の気持ちに応えられないのは理解できた。胸が締め付けられるような思いに私は涙が止まらない。私なんかの幸せを願ってくれてありがとう。もし私に星の力があると言うならば、どうかフゥ太君を幸せにしてください。
「やっぱり…僕の前では泣かないんだね。花莉姉…。」
フゥ太が見上げた星空は、まるで花莉のように美しく、そして儚いものだった。