その覚悟に誓って
*綱吉side*
夜明けと共に始まる戦いで全てが終わる。平和な未来へ帰ることができるんだ。そう思ったら緊張と不安で目が冴えてしまっていた。少し離れた湖へと足を運ぶと、湖のほとりには空を見上げた花莉先輩の姿があった。その姿は驚くくらい儚く、今にも消えてしまいそうだ。
「花莉先輩…?」
『!…綱吉君。』
振り向いた花莉先輩の目元が赤くなっている。泣いたのだろうか。花莉先輩はしっかりした人だけど、人一倍他者の感情に敏感で、泣き虫なイメージがあった。痛みや恐怖に弱いけれど、他者のためならその身を犠牲にしてしまう。指輪争奪戦では獄寺君のことを怒っていたけど、花莉先輩も人のことを怒れる立場ではないだろう。
「大丈夫ですか?」
『大丈夫、眠れなくて…、』
「はは…、俺もなんです。」
湖のもっと奥、ずっと遠くを見る花莉先輩は、左腕に付けている腕章に大事そうに触れていた。
『綱吉君はさ、突然ボンゴレの次期ボスだって言われて驚かなかった?』
「えっ!?そりゃあ驚きましたよ!というか今でも別になるつもりないですし!」
『ふふ、私もね…そうだったよ。』
花莉先輩と俺は似ていた。普通の家庭で育ち、マフィアの世界とは無縁。そしてその日常は突然奪われた。理不尽だと思った。普通に生きていたいと何度も思った。だけど自身のまわりでは普通ではないことばかりで、いつのまにかそれが当たり前になっていた。
『私ね、覚醒の時に今までの星空の娘だった人達の記憶を見たの。』
「!」
『悲しくて、痛くて、辛くて、色んな感情がぐちゃぐちゃになって…、星空が憎くてたまらなかった。この瞳さえなければって何度も思った。』
「そんな…!」
『…でも、気づいたの。私は1人じゃないし、今まで沢山皆に助けられたこと。支えられたこと。最初は怖くてどうして私がって思ってばかりだった。…だけど、今は違う。だって私はこんなにも友達や仲間がいるんだもん。皆がいてくれるから、私は私でいられるんだよ。』
「花莉先輩…、」
『綱吉君、私を守ってくれてありがとう。並中襲撃事件の時も、指輪争奪戦の時も、今この瞬間も。』
星空を背負う花莉先輩の笑顔はあまりにも綺麗で、何か込み上げてくるものがあった。目頭がじんと熱くなって、思わず下を向く。
「俺なんて何も…!」
『そんなことないよ。』
花莉先輩は俺の両手を握ったまま祈るように目を瞑る。その姿はまるで神に祈りを捧げる修道女のように清らかな姿だ。
『どうか、綱吉君に星空の力のご加護がありますように。』
「!!」
『私も、もう逃げたりしない。』
僅かに震えるその手の温かさが触れた先から伝わってくる。怖くないわけがないんだ。それでも花莉先輩は覚悟を決めた。
「絶対、一緒に帰りましょうね。」
『うん…!』
星空の下、少年と少女は誓い合った。その覚悟を持って、必ず平和な未来を掴むことを。
そして、最後の戦いの幕が上がる。